土地の用途を表す「地目(ちもく)」は、土地を購入するときの目安になります。
また、地目によっては住宅を建てられなかったり、建てるのが難しい場合があります。
地目が山林の場合は、地域によっては住宅を建てる際に制限が掛けられているケースがあるので、注意が必要です。
それでは、地目が山林の土地について詳しく見ていきましょう。
地目が山林の土地はどんなところ?
山林とは、読んで字のごとく、山と林のことで、山が雑木林のようになっていれば山林とみなされます。
地目では、「耕作の方法によらないで竹木の生育する土地」としています。
山林を他の目的に使う場合は、次のような法律などが関わってくるので注意が必要です。
【森林法】
森林に関する基本的な法律で、昭和26年に施行されました。
先を見通した森林計画、測量などのための土地の使用、保安林や保安施設の管理など、森林の生産力向上と国土の保全を目的としたものです。
【都市計画法】
都市の健全な発展などを目的とした、都市の計画的な整備に関する法律で昭和43年に施行されました。
市街地が無秩序に広がらないようにし、都市環境の悪化を防ぎ、都市が健全な発展をするためのものです。
【建築基準法】
国民の健康や生命、財産を守るため、建築物に関する最低基準を定めたもので、昭和25年に施行されました。
【土砂災害警戒区域】
国民の生命を土砂災害から守るため、国土交通省が土砂災害に注意しなければならない区域への対策を打ち出したものです。
危険地域だと周知させる、警戒避難態勢を整備する、既存住宅の移転を促進するなどの対策を進めています。
このように山林は、さまざまな制約を受ける土地です。
山林に住宅を建てる場合の地盤は大丈夫?
地目が山林の土地に住宅を建てる場合には、木を伐り、山を崩して、宅地造成してから住宅を建てることになります。
木を伐採し、山を崩すとなると地盤の強さはどうなるのでしょうか。
山林の地盤は、宅地の造り方によって強さが変わってきます。
造り方は2種類で、山を切り崩して宅地を造る「切土(きりど)」と、新たに土砂を入れて固めて造る「盛土(もりど)」があります。
このふたつを比べると、もともとあった地盤を活用している切土の方が、地盤が強くなります。
また、山林を切り崩して住宅を建てる場合には、次の指定を受けているかどうかも確認してください。
【急傾斜地崩壊危険区域】
急傾斜地とは、30度以上の傾きがある「がけ」を指します。
つまり、がけ崩れが起きやすい区域に指定されているということですので、がけ崩れを誘発するような行為を制限されたり、がけ崩れを防止するための工事を行う必要があります。
また、がけ崩れを予防するために必要な排水施設や擁壁などを造らなければなりません。
【土砂災害警戒区域】
いわゆる「イエローゾーン」と言われるもので、急傾斜地崩壊、土石流、地滑りが起こる危険性があると指定された地域のことです。
これには、上記の急傾斜地崩壊危険区域も含まれます。
さらに注意が必要な土砂災害特別警戒区域は、「レッドゾーン」と言われています。
このような地域に指定されている場合は、住宅を建てるのには向いていません。
山林に住宅を建てるときの注意点
これまでお話ししてきたように、地目が山林の土地は法令上の制限が多く、災害の危険性も高いというデメリットがあります。
山林の場合は、市街化調整区域に指定されているなど、都市開発ができない場合が多く、住宅を建てるにはさまざまな許可を得なければなりません。
そして、それぞれの許可をすべて得なければ、住宅建築をはじめることはできないのです。
また、注意点のひとつとして忘れがちなのは、その費用面です。
住宅を建てるためには、山を崩し、切土や盛土をして平らにしなければなりません。
さらに地盤が崩れたり、がけ崩れが起きないように擁壁の工事も必要です。
このように、山林に住宅を建てる場合には、地盤改良工事や宅地開発工事などの大規模な土木工事を行わなくてはならないため、個人では賄いきれないほどの費用が掛かる場合があるので注意が必要です。
また、住宅を建てたあとも、擁壁などのメンテナンスに費用が掛かることも頭に入れておきましょう。
地目が山林の土地はデメリットばかり?
「都会を離れて山奥に移住したい」「山奥にログハウスを建てて、のんびり過ごしたい」と考える方もいると思います。
確かに木々に囲まれて、自然のなかで暮らすのは悪くなさそうですし、実際に山林で暮らしている方々もいます。
地目が山林の土地を購入して住宅を建てることは、さまざまな制約はありますが、できます。
ただし、新たに山林に手を加えて、住宅を建てるというのは、お話ししてきたようにたくさんのデメリットがありますし、注意も必要です。
また、法令上の制限があることで、住宅の設計が自由にできない可能性もでてきます。
では、法令上の規制や災害などの危険性も考慮し、予算面もクリアできるとしたら、どのような手続きをすれば、地目が山林の土地に住宅を建てることができるのでしょうか。
地目が山林の土地に住宅を建てるには?
それでは、地目が山林の土地に住宅を建てる場合の流れをご紹介しましょう。
まずは、それぞれの許可を各市町村から得なければなりません。
【建築指導課との協議】
住宅を建てるために、建築基準法に沿っているかを確認します。
この場合、問題となるのは道路との接地面です。
建築基準法では、「建物の敷地が道路に2m以上接していなければならない」としています。
もし、道路に設置していない場合は、道路を引き込むことも必要となります。
【都市計画課との協議】
都市計画課では、「市街化調整区域」「都市計画公園」「開発行為」などについて協議します。
地目が山林の場合、市街化調整区域に指定されていることがほとんどです。
その場合、「駐車場」「太陽光発電所」「特定産業施設」以外は、許可を得るのは難しいとされています。
また、都市計画公園に指定されている場合も住宅を建てることは認められていません。
開発行為については、大規模な建物でない限り、制限されませんが、地域によって許可をする広さが300m²~1,000m²と大きく違います。
許可を得て住宅を建てたら地目変更
さらに許可が必要なものを見ていきましょう。
【開発審査課との協議】
住宅を建てる際、山林から宅地に変更する宅地造成工事を行うことになるので、「宅地造成等規制法」の許可を得なくてはなりません。
ただし、「都市計画法」で開発許可を得ていれば、宅地造成等規制法の許可はいりません。
【林業振興課との協議】
住宅を建てるときに、木を伐採する必要があるときには、「地域森林計画」に従って伐採届を出さなくてはなりません。
これらすべての許可を得られて、はじめて住宅を建てることができます。
住宅工事が完了したら、地目を山林から「宅地」へ変更をしましょう。
地目はその土地の用途を表すものなので、実際に許可を得て、住宅が建った時点で変更することになります。
地目は、土地の変更があった日から1か月以内に行うことと、不動産登記法で定められています。
手続きは、その地域の法務局に行き、地目変更登記の申請をすれば、通常1~2週間で処理が完了します。
地目が山林のところに住宅を建てるには課題が多い
地目が山林の場合、住宅を建てるにはさまざまな手続きや注意すべき点があります。
特に災害については、命に関わることなので、注意が必要です。
今回は、個人で地目が山林の土地に住宅を建てることについて見てきました。
しかし、すでに造成工事が終わっている土地であっても、地盤の造られ方や擁壁などがけ崩れ予防策をしっかりチェックすることが大切です。