築年数の経っているマンションや、古いマンションにお住まいの方は、「あとどれほど住めるのだろうか」と不安になったことはないでしょうか。
マンションの築年数が経ち老朽化が目立ってきた場合、建て替えをするか、修繕をして維持していくかのどちらかで対策を行います。
しかし実際には、建て替えが難しく、行われないケースが多いです。
その理由と、マンションを選ぶ際に考慮するべきポイントについてもご紹介していきます。
マンションの耐用年数は寿命ではない?
一般的に、マンションの建築方法はほとんどが鉄筋コンクリート造か、鉄骨鉄筋コンクリート造です。
そして、それぞれの耐用年数は47年と定められています。
ただ、ここでお伝えしておきたいことは、耐用年数=寿命ではないことです。
耐用年数は、毎年の減価償却で最終的に償却がゼロの価値になる年数のことを意味しています。
つまり、鉄筋コンクリート造や鉄骨鉄筋コンクリート造は、47年経つと価値がゼロになるという考えです。
また、マンションに限られたことではありませんが、建築された年代やメンテナンスによっても建物の寿命が大きく変わってくると言われています。
現在はどこにでもあるマンションですが、マンションが普及しだしたのは、1970年代の高度成長期です。
この時期に建てられたマンションは、修繕が適正に行われていなかったり、品質に問題があったりして、老朽化が早く進み、30~40年で建て替えられたというケースもあります。
ただ、これはあくまでも一例であり、築30~40年経ったマンションが、今もたくさん存在しているのも事実です。
とはいえ、現在築35年以上もの築年数が経過しているマンションは、旧耐震基準で建築されたものですから、最近建築されたマンションに比べてしまうと耐久性が低いことは明らかです。
安全面を考慮しても、恐らく10~20年後には建て替えの可能性が出てくると考えられるでしょう。
築年数の経ったマンションが増え続けている!建て替えが進まない現状
先ほどもお伝えしたように、日本が高度成長期を迎えた1970年頃に、たくさんのマンションが建設されましたが、その当時のマンションにはいつかの問題点があり、老朽化が進みやすい傾向にあると考えられます。
そして、現時点マンション全体で約30%の物件が築30年を超えていると言います。
このまま新しいマンションが増え続ければ、10年後には築30年を超えたマンションが全体の約40%以上を占めることになると予想されます。
そして、築年数が経ったマンションは、基本的に建て替えが難しいため、修繕を繰り返しながら寿命を先延ばししていきます。
日本のマンションの実情では、この流れを変えることはなかなか難しく、今後も築年数が古いマンションは増え続ける可能性があるでしょう。
実際に、建て替えを行ったマンションは全国でわずか0.3%未満と言われています(2018年4月時点)。
この数字がいかに、マンションの建て替えが難しいのかを物語っています。
築年数が古いマンションの建て替えが進まない理由【多額の負担金】
ではなぜ、築年数の古いマンションの建て替えが進まないのでしょうか。
理由の1つに、マンション建て替えにかかる負担金が大きいことが挙げられます。
マンションの建て替えには、建設費などの費用を住民が負担しなければなりません。
そして、マンションを建て替える際は、建設費だけでなく解体作業や引っ越し費用などもかかることが予想されます。
その費用は、物件によっても幅がありますが1000万~2000万ほどかかると考えておきましょう。
ただまれに、マンションの建て替え費用がかからない、または小額で済むといったケースもあるようです。
このようなマンションは、建て替えもスムーズに進みやすいと考えられます。
ではなぜ、建て替え費用の負担がないのでしょうか。
その理由に、容積率に余裕があることが考えられます。
容積率に余裕があるとマンションの戸数を増やすことができ、新たに入る入居者から利益を得ることができるのです。
そのため、住民の負担金がかからず建て替えるには、いかに戸数を増やせるのかということが大変重要となります。
ただ、こういったケースは非常に少なく、多くの場合は建て替えに数千万かかることが予想されます。
築年数が古いマンションの建て替えが進まない理由【5分の4以上の賛成】
また、マンションを建て替える際は住民から「5分の4以上の賛成」が必要となることも、建て替えが進まない理由です。
先ほども述べたように、マンションの建て替えには多額の負担金が必要となることが多いです。
そのため、建て替えに反対する人も少なくありません。
また、「現状に満足している」「引っ越しが面倒だ」という考えの方もいるかもしれません。
そのような方からは、やはり賛成を得るのは難しいでしょう。
さらに、築年数の経っているマンションですと、所得者の高齢化が進んでいることも考えられます。
高齢者の方は、「今の生活を変えたくない」「静かに暮らしたい」と考える人が多く、このような理由から5分の4以上の賛成を得るのは難しいのが現状なのです。
建て替えられないマンションの今後は?
ここまでお伝えしたように、築年数の古いマンションでも建て替えは難しいのが現状です。
では、入居者の賛成を得ることができなかったなどの理由で、建て替えができないマンションは今後どうなっていくのでしょうか。
日本では、高齢化社会が問題視されていますよね。
この問題は、マンションの入居率にも関係してくると言います。
今後、多くの高齢者が施設などに入居し始めることが予想されるため、マンションの空室が増えていく可能性が考えられます。
ある説によると、2050年にはマンションの空室率が40%にもなると言われています。
マンションの空室の割合が大きくなればなるほど、マンションの経営が困難になるでしょう。
マンションは、入居者がいるからこそ経営が成り立つものであり、空室ばかりが目立ってしまうと管理費や修繕積立金の滞納が増えてしまうため、管理組合が機能しなくなるのです。
やがて管理会社が撤退してしまうと、マンションの管理ができなくなってしまいます。
管理がされないマンションは、老朽化をたどる一方です。
マンションは安い買い物ではありません。
そのためにも、なるべく寿命が長く安心して住むことができるマンションを選びたいですよね。
次では、マンションを選ぶ際のポイントをお伝えしていきます。
マンションを購入する際に考慮しておきたいこと
では、築年数の古い中古マンションを購入すると考えたとき、どこに注意すればよいのでしょうか。
まず、築30年以上もの築年数が経っている物件は、数十年後建て替えの可能性があることを想定しておきましょう。
それを見越した上で、購入する前に建て替えの負担額が少ないマンションを選ぶことがポイントです。
負担額が少ないマンションの特徴は、「建物の大きさに対して敷地が広い(容積率に余裕がある)」「立地条件がよい」ということです。
そして、適切なメンテナンスや管理が行き届いているかをしっかりと確認することも大切です。
そのためにも、修繕積立金が積み立てられているか、長期修繕計画がしっかりと立てられ、大規模修繕が適切に行われているかを確認しておきましょう。
マンションの大規模修繕は、通常ですと10年~15年に一度行われています。
しっかりと適切な修繕を行うことで、マンションの強度を保ち、寿命を延ばすことに繋がるのです。
他にも、実際に物件を見に行く際は、清掃が行き届きゴミが散乱していないか、駐輪場が整えられているかなどの共有部分の管理状態をチェックすることも大切と言えるでしょう。
しっかりと管理が行き届いているマンションは資産価値が高い
一口に中古マンションと言っても、その立地条件や管理状況によって値段は大きく異なります。
もし、中古マンションを購入する予定があるのなら、しっかりと修繕が行われ、管理状況が良好であるかを確認することが大切です。
管理が行き届いているマンションは、寿命も長く資産価値も高くなります。
また、立地がよく、管理状況が行き届いているマンションであれば、築50年でも売却できるとも言われています。
売却しやすいということは、将来どうやって暮らしていくか選択肢の幅を広げることにも繋がるでしょう。