固定資産税通知書には納税額だけでなく、現況地目も記載されているため、自身がどのような土地を所有しているか、ほとんどの方が把握していることと思います。
しかし、地方などに目を向けると、山林や畑だと思っていた土地が原野であるとわかったケースもあります。
原野とは、いったいどのような土地になるのでしょうか。
また、原野を所有している方は、売買に関して気を付けなければいけない事項もあります。
この記事では、原野を中心にご説明しますので参考にしてください。
地目はどのように調べるの?何に使われるの?
地目は固定資産税の評価や土地の売買の際の価格に影響するものなので、どのような土地にも何かしらの地目がついています。
地目は23種類に分かれており、原野はこのうちの一区分です。
地目を調べる方法として、一番早いのは、手元にあるその土地の登記済み証や権利証を見ることです。
ただし、地目の変更登記を行っていない場合に限ります。
その他には、先に述べたように固定資産税通知書に記載されているのを参考にするか、その土地を管轄する法務局に行き、登記事項証明書を取得する方法があります。
また、この登記事項証明書ですが、こちらはその土地の所有者でなくても、土地の地番さえわかれば取得することができます。
その場合、一筆の土地につき約500円~1,000円前後の手数料がかかります。
地目が原野というのはどのような土地を示すのか
地目が原野というのは、耕作の方法によらないで、雑草や灌木の生息する土地のことをさします。
したがって、休耕田のように農地に適している土地は、長年放置していても原野としては扱われません。
しかしながら、農地と山林と原野の区別は非常に難しいといえます。
また、原野にもいくつか種類があるので覚えておきましょう。
【純原野】
・市街化調整区域内にあり、隣接したところに主要な公道がない
・周辺が開発されておらず、土地を開発することが難しい
【中間原野】
・都市計画上の市街化調整区域にあり、少しずつ開発が進み地価が高くなっている土地にある原野
【市街地原野】
・市街化区域内にある原野
このように、原野には種類がありますが、固定資産税の評価額についてはどこでも同じなのでしょうか。
たとえば相続となった時に、実は被相続人が原野を所有していたというケースは地方ではよくある話です。
そのため、いずれ売買できることがわかっていれば安心ですよね。
また、それ以前に、原野を相続することになれば固定資産税の負担も増えてきます。
何も生み出さない土地に税金を払い続けるというのは、できれば避けたいところです。
そのためにも、実際に固定資産税はどれくらいであるのか、また売買に関する注意点についても知っておきましょう。
地目が原野の固定資産税額とは
前章でお伝えした通り、原野にもいくつかの種類があることがわかりました。
それによって、土地の評価方法が変わってきます。
・純原野の場合
固定資産税評価額に、状況の類似する地域によっての国税庁が定める倍率を掛けて計算します。
・中間原野の場合
純原野と同じ倍率方式をとりますが、「時価事情」の類似する地域ごとに国税省が定める倍率を掛けて計算します。
・市街地原野
宅地比準方式、もしくは倍率方式により決定します。
なかには、所持している地目が原野の土地に固定資産税がかかっておらず、「原野は非課税なのでは」と思う方もいるようですが、その場合は、土地の課税標準額が30万円未満の土地の場合です。
つまり、節税対策として、地目を原野にするのはおすすめできません。
また、どうしても利用価値のない原野などは、所有者が放棄したいと申し出ることがありますが、土地の所有権放棄は法律上できません。
そのため、売買することができれば肩の荷がおりるでしょう。
しかしながら、そのような所有者の心理を利用した、原野商法という詐欺もあるため、気をつけなければなりません。
原野商法の悪質な詐欺の売買にひっかからないようにしよう
地目が原野である土地を所有している方は、原野商法という言葉を聞いたことがあるかもしれません。
これにはいくつかのパターンがあるのでご紹介します。
●土地を売る
将来は開発される土地であると偽り、価値の土地を高値で売りつけるというものです。
説得力をだすために、虚偽のパンフレットを作って、太陽光発電の土地活用や、民泊利用などの利用価値があるということを説明し、原野を売りつけます。
●別の原野を購入させられる
原野を所有しているオーナーに、その土地を買いますといった話を持ち掛けてくるものです。
その際には、買付証明書となるような書類を作ってあたかも本当の契約であるかのように見せてきます。
そして、節税対策のためにいったんお金を預けることを要求され、言う通りにすると、別の原野を購入したことになっています。
●土地を調査するパターン
土地を売るために調査が必要などと言い、買い手を紹介するから測量させてほしいと費用を請求した後に連絡がとれなくなるというものです。
このような売買をもちかけてくる悪質な詐欺に引っかからないようにするためにも、原野を所有している方は日頃から注意が必要です。
売買するための準備とは?
自分の意志とは無関係に、相続などで原野を引き継いでしまった場合は、なるべく早急に原野を手放したいと考える方が多いかもしれません。
しかしながら、地目が原野の土地はなかなか処分できないのが現状です。
それでも、なんとかしたいのであれば、信用のおける不動産会社に一度相談してみるのも良いでしょう。
市街化区域に近い調整区域の原野であれば、家庭菜園や資材置き場としての利用価値が見込まれて、買い取ってもらえることもあるかもしれません。
もしくは、他の土地と一緒に買ってもらう、周りに家がある、公道に面しているといったこともポイントになります。
また、役所に出向き、近い将来都市計画の予定がないか確認して、近隣で開発をしている業者に売買をもちかけてみるというのも、試す価値があるかもしれません。
どうしても売買ができない場合の原野活用法
これまで、原野の売買について考えてきましたが、どうしても売却することが難しいようであれば、自身で有効活用する他ありません。
そこでおすすめしたいのが、太陽光発電パネルの設置です。
原野は2012年以前は、企業の保養所やリゾート施設の活用に限定されていたため、開発が進まない限り、何もすることのできない土地でした。
しかし、固定価格買取制度が制定されたのを機に、利用価値が見直されたということもあって、このように個人で事業をするために利用できるようになりました。
太陽光発電所の建設が認められている地目に原野も含まれているため、原野に太陽光パネルを設置すれば有効活用することができるでしょう。
土地の状況にもよりますが、他の地目よりも整地費用が安く、規制が少ないため、太陽光発電事業に適している土地であるといえます。
とはいえ、一点注意しておきたいことがあります。
それは、固定資産税が負担になりやすいということです。
太陽光発電を設置すると、今まで安かった固定資産税が大幅に上がってしまうおそれがあります。
これについては、各市町村により評価方法が異なりますので、事前に確認しておくことをおすすめします。
原野の売却を求められた時は慎重に!
原野を所有している方にとって、活用方法や売却への進め方は、思ったよりも深刻な問題でしょう。
だからこそ、売却の話を持ち掛けられたら、すぐさま売買を進めたいと思ってしまうのも無理はありません。
しかし、一部では原野所有者を狙った詐欺が横行していることを常に念頭に置きながら、慎重に話を進めていくことをおすすめします。
まずは、市町村の窓口や信頼できる不動産業者に相談することから始めてみてください。