昔ながらの日本家屋の特徴として、長押(なげし)が挙げられます。
長押あっての和室とも言え、日本の風情を感じるための部材でもあります。
しかし、一般的に長押裏の壁塗りはされていないことが多く、その隙間からムカデや隙間風が侵入してくることも少なくありません。
そこで、この記事では、長押の厄介な隙間を埋める方法について、詳しくご説明していきます。
虫や隙間風が入ってくる長押!そもそも長押とは?
暑い夏の季節になると、長押裏の隙間からムカデやゴキブリが入ってくることがあり、特に虫嫌いの方にとってはゾッとしますよね。
そんな虫たちの侵入を防ぐため、いっそのこと長押裏の隙間を埋めていしまいたいと思う方も多いのではないでしょうか。
長押裏の隙間を埋める方法についてご紹介していく前に、まずは長押そのものについて知っておきましょう。
そもそも長押とは、日本建築特有の部材で、もともとは柱同士を水平方向に繋げるものとして使われていました。
現代では後付けの化粧材として位置しています。
障子上部に取り付けられている鴨居としばしば混同されがちですが、長押は鴨居の上に被せるように取り付けられています。
また、長押をよく見てみると、長押と接する壁との間に小さな隙間があることが分かります。
この隙間があることで、現代ではハンガーを掛けて服などを吊るす形で使うことが多いのです。
長押の隙間を埋めるには?身近な新聞紙を使ってみる!
長押と接する壁との間には、少なからず小さな隙間があるものですが、壁塗りの具合や経年劣化によって隙間が大きくなってしまうことがあります。
隙間風やムカデなどの虫は、この長押裏の隙間を経路に侵入してくることが多いと言えます。
また、隙間が大きくなることで、埃や壁砂、虫の死骸など、長年の汚れが蓄積していきます。
そこで、この厄介な隙間を埋める方法としては、いくつか方法があります。
ではまず、新聞紙を使った方法についてご紹介していきましょう。
用意するものは、新聞紙のみになります。
方法は簡単で、まずは、新聞紙を丸めるか、三角に折りたたみます。
折りたたんだ新聞紙で、長押と壁の隙間を埋めていきます。
できるだけみっちりと詰めて、隙間を作らないようにしましょう。
これでも小さな隙間から虫が入ってくる場合は、発泡ウレタンフォームを使う方法もあります。
それについて、次項で詳しく見ていきましょう。
長押の隙間から虫が!発泡ウレタンフォームで埋める方法
長押裏の隙間を埋める方法として、発泡ウレタンフォームもおすすめできます。
発泡ウレタンフォームとは、発泡したスポンジ状の断熱材で、主成分としてポリウレタン樹脂が使われています。
ポリウレタン樹脂とは、基材との密着性に長けた樹脂で、小さい硬質な泡を作り出すことで、細かな隙間を高い気密性で埋めることができます。
また、「自己接着力」も備えることから、湿気や壁内のカビ発生を防ぐことも期待できます。
このような発泡硬化性と自己接着性の特徴は、長押裏の隙間を埋めることに適していると言えます。
発泡ウレタンフォームは、スプレータイプになっており、スプレーから吹き出た泡は、どんどん膨らみながら隙間を埋めていきます。
膨らんだ発泡ウレタンが大きすぎたと思ったら、完全に硬化していない状態でカッターなどでカットしてください。
また、発泡ウレタンフォームの性質上、一度服や壁に付いたら取ることは難しいので、注意しながら行いましょう。
なお、ウレタンフォームはホームセンターやネットで購入することができるので、是非チェックしてみてくださいね。
長押の隙間でもう悩まない!いっそのこと撤去する方法も
これまでに、新聞紙や発泡ウレタンフォームで長押裏の隙間を埋める方法について見てきました。
しかし、それではうまく隙間を埋めることができなかったり、見栄えが良くないというデメリットもあります。
そのような場合は、いっそのこと長押そのものを撤去してしまう方法もあります。
長押は部材の一つでもあるので、撤去に対して心配してしまうかもしれません。
しかし、前述したように、長押は現代においてはただの後付け化粧材なため、建築としての構造や耐震強度には関与していない部分です。
日本の風情を感じる部材でもありますが、不要だと感じる場合は、撤去してしまうのも一つの方法です。
では、肝心の撤去方法ですが、まずは長押と壁を繋いでいるビスを抜きます。
ビスを抜くことで、長押を壁から外すことができます。
基本的にはドライバーを使って抜いていきますが、固い場合はインパクトドライバーなどを使うのが良いでしょう。
また、長押をノコギリで切断し、ビスを抜くことも可能です。
長押自体、そこまで頑丈なものではないので、力ずくでへし折る方法でも良いでしょう。
長押裏の壁補修!まずはシーラーをひと手間塗ろう
長押の撤去が終わったら、後は長押がくっ付いていた壁の補修です。
昔ながらの和室の壁は、一般的にざらざらとした「聚楽壁(じゅらくかべ)」であることが多いです。
しかし実際に長押を外してみると、長押裏にはこの壁塗りがされていないことがほとんどで、虫や隙間風の侵入を許す小さな空洞を確認することができます。
一見業者による手抜き工事にも見えますが、長押裏の壁は壁塗りがされていないことがスタンダードになるようです。
そのため、壁塗りがされていない部分を補修していく必要があります。
ただ単に、空洞の穴を埋めるだけであれば、紙粘土で穴を補修するのも良いでしょう。
本格的に壁塗りの補修をする場合は、ヘラでパテを塗り込んでいきます。
また、パテを塗っていく前に、まずひと手間として「シーラー」を塗っておくことをおすすめします。
「シーラー」とは、下地処理に使う塗料で、これを塗っておくことでパテを塗った後に木材や土壁から浮き出るアクを防ぐことができます。
また、パテを塗った際に、劣化した壁ごと剥がれてしまうのを防ぐ効果もあります。
よりきれいに仕上げたい方は、シーラーを塗っておきましょう。
塗り方の手順は、以下の通りです。
①まずは刷毛で角を塗る
②ローラーで全体を塗る
③30分から1時間乾燥させる
以上の手順でシーラーを塗り込んだら、いよいよパテを塗っていきます。
壁の空洞も埋める!モルタルを使った壁補修の方法
長押を撤去した壁に塗っていくパテとしては、モルタルがおすすめできます。
モルタルとは、セメント+砂+水を練り混ぜたもので、主に仕上げ材や下地材、接着剤として使われています。
これを全体に塗ることで、隙間風や虫が侵入する空洞を埋めることができ、さらに壁塗りがされていない部分を補修することができます。
モルタルを塗ってく上で用意するものは、以下になります。
・モルタルの粉末
・バケツ:モルタルを練り混ぜる容器
・スコップ、シャベル:モルタルを混ぜる道具
・計量カップ
・コテ、コテ板
まず、モルタルの粉末はホームセンターで入手することができますが、あらかじめ砂とセメントが配合されているものを選びましょう。
パテの作り方は、購入したモルタルの粉末に、水を混ぜて練り上げるだけです。
モルタルと水の比率は、「モルタル6:水1」が一般的な割合ですが、付属している説明書を確認してください。
パテが完成したら、後はコテで壁を塗っていきます。
塗り始めたら一気に塗っていくことが大切で、途中で時間を置かないように仕上げましょう。
また、モルタルは基本的に24時間以上の乾燥が必要ですが、60分で乾く「超速乾60分モルタル」というものも販売されています。
自分に合ったものを選び、壁塗りを仕上げましょう。
長押の隙間に悩まない方法を
長押は日本家屋でよく見かける部材ですが、虫の侵入を許す隙間はなんとかしたいものです。
身近にある新聞紙や、発泡ウレタンフォームで隙間を埋めてしまう方法もありますが、いっそのこと長押を撤去してしまうのも一つの方法です。
今回の記事を参考に、昔ながらの和室の良さを損なわないように、その家に合った対策を行っていきましょう。