近頃建築される住宅では、ベランダやバルコニーが当たり前のようについていることが多くなりました。
ベランダは屋根がついているものですが、バルコニーには屋根はついていません。
ですから、雨天時にはダイレクトに雨水がバルコニー内に入ってきてしまいますよね。
このことから、木造住宅であれば特にバルコニーの防水対策が重要となります。
ここでは、木造住宅のバルコニーの防水対策をはじめ、バルコニーに異常が出た際の対応方法についてもお話ししていきます。
バルコニーの構造
木造住宅のバルコニーには、防水対策が重要となります。
その前に、まずはバルコニーの構造についてお話ししておきましょう。
バルコニーの床は、下から「下地」→「防水層」→「トップコート」の順番でつくられています。
「防水層」にはいくつか種類があり、その中でも「FRP防水」「ウレタン防水」が多く使用されています。
「FRP防水」の「FRP」とは繊維強化プラスチック(Fiberglass Reinforced Plastics)の略で、ガラス繊維などの補強材で強化したプラスチックのことをいいます。
FRP防水であると軽量かつ耐水性や耐食性、耐候性にも優れており、バルコニーの床面に適しているといえます。
「ウレタン防水」は、下地部分に液状のウレタン樹脂を塗って硬化させ、一定の基準の防水層をつくる方法です。
ウレタンには弾力性があるので、温度差が生じることによって下地が伸縮しても問題なく対応できるというのが特長の一つです。
FRP防水、ウレタン防水のどちらの防水層も継ぎ目がなく綺麗な仕上がりとなり、「シームレス防水」とも呼ばれています。
「トップコート」は、紫外線の影響を受けにくくするためのものです。
バルコニーの床面でよく見かけるグレーの塗装が、トップコートです。
それでは、バルコニーにはどのような防水対策が必要なのかをみていきましょう。
木造住宅におけるバルコニーの防水対策
まず、バルコニーの防水対策の一つ目として挙げられるのが「床面の勾配」です。
床面の勾配は1/50以上であることが基準となります。
1/50以下の勾配であると、雨水がたまってしまい、防水層の劣化にもつながってしまいます。
そうすると、漏水の原因ともなってしまいます。
また、バルコニーの排水溝は1/100以上の勾配が必要とされています。
次に、バルコニー外側壁面の防水層が250㎜以上の高さであることが重要なポイントでもあります。
バルコニー室内側の壁面については、120㎜以上の高さが必要となります。
また、このバルコニー室内側の壁面については、しっかりと施工されていないと雨漏りの原因となることがあります。
これから新たにバルコニー付きの木造住宅に入居する予定のある方は、事前にこれらのことをチェックするようにしましょう。
また、すでにお住まいの住宅でバルコニーからの雨漏りなどにお困りの方は、勾配や壁面の高さについて調べてみましょう。
定期的に補修は必要!防水層もトップコートも劣化する!
バルコニーに使われている防水層もトップコートも、ある程度の年数を経過すると劣化してしまいます。
そのため、バルコニーの床面は定期的な補修が必要となるのです。
防水層は、だいたい10年から15年くらいで劣化するといわれています。
素材の違いで20年ほどもつものもありますが、紫外線などによって劣化してしまうことが考えられるので、できれば10年に一回くらいは補修するようにしましょう。
トップコートも同様で、紫外線などの影響で劣化します。
トップコートはその下の防水層を保護しているものでもありますから、できれば5年に一回を目安に塗装するといいでしょう。
木造住宅にかぎらず、どのような住宅でも、長く快適に暮らすためにはある程度の補修が必要となります。
面倒がらず、これを機にバルコニーをチェックしてみてくださいね。
木造住宅にかぎらずバルコニーの床面異常時は補修工事必須!①
木造住宅にかぎらず、家の新築から10年経過していなくてもバルコニーに異常が生じたらすぐに補修工事をする必要があります。
しっかりと防水されていないと、雨漏りの原因ともなります。
それでは、どのようなことが起きたら対処が必要となるのでしょうか。
まず一つ目としては、バルコニー床表面に「色あせ」が生じている場合です。
床表面が色あせている場合は、トップコートが劣化している可能性が考えられます。
できるだけ早急にトップコートの塗装依頼をするようにしましょう。
二つ目としては、バルコニー床面にひび割れ、もしくは膨れていたりはがれたりしている部分がある場合です。
このケースでは、トップコートや防水層が劣化しているかもしれません。
それだけではなく、下地まで劣化している可能性も考えられます。
この場合は、下地の補修工事が必要になる可能性が高くなるでしょう。
木造住宅にかぎらずバルコニーの床面異常時は補修工事必須!②
三つ目としては、バルコニー内に水が溜まってしまうことです。
バルコニー内に水が溜まる原因で考えられるのは、「排水口にゴミがつまっている」「防水効果が低下している」「バルコニー床面の勾配がない」などです。
排水口のつまりが原因であれば、綺麗に掃除しましょう。
防水効果が低下している場合や床面に勾配がないといったことが原因であれば、業者に依頼して補修工事をしてもらう必要があります。
四つ目は、バルコニーの床面から雑草や藻が出てしまっているケースです。
特に雑草は生命力が強く、コンクリートさえも壊してしまうことがあるのです。
ですから、床面に雑草が生えているのにそのままにしておくと、防水層のみならず家全体に影響を及ぼすことも考えられます。
この場合は、発見次第早急に対処するようにしてくださいね。
最後に、バルコニーから雨漏りがしている場合です。
雨漏りをしているとなると、雨水が家の中に入ってしまうことにもなり、家自体にダメージを及ぼしてしまう原因となります。
雨漏りしている場合は放置せずに、早急に業者へ補修工事の依頼をするようにしましょう。
木造住宅であればバルコニーの床面に異常がある場合は、早めの対応が必須です。
また、木造住宅ではなくとも、家自体に影響を及ぼす可能性もありますから、どちらにしてもなるべく早めに対応するようにしてくださいね。
いくらくらい?防水層やトップコートの補修工事費用
木造住宅であってもそうでなくても、バルコニーの床面に異常がある場合や定期的に補修しようとする場合、費用がいくらかかるか気になりますよね。
そこで、防水層やトップコートを補修する際の工事費用の目安金額をみてみましょう。
まずはトップコートからご説明します。
【ポリエステル系】:1,550円~3,000円/㎡
【ウレタン系】:1,700円~3,000円/㎡
目安は上記の金額ですが、防水層がFRPかウレタンなのかでも異なります。
工事は大体一日で完了することが多いです。
次に、防水層です。
【FRP防水】:4,000~8,000円/㎡
【ウレタン防水】:3,000~7,500円/㎡
防水層を補修工事する際は、費用の中にトップコートの補修代も含まれています。
しかし、この他に養生費や下地処理費、高圧洗浄費や人件費がさらに加わりますので、3㎡~10㎡くらいの広さであればトータル4万円~12万円ほどになることが多いでしょう。
トップコート、防水層どちらの補修工事に関しても各業者で費用は異なりますので、あくまでも上記の金額は目安として捉えるようにしてくださいね。
バルコニーをよく点検しよう
木造住宅においてバルコニーの防水対策は重要です。
木造住宅にかぎらずとも、バルコニーを定期的にチェックすることで異常を発見しやすくなります。
補修が必要なのに何もせずに放置してしまうと、家全体に影響を及ぼすことにもなりかねません。
そのため、異常を発見した際には早急に対応をするように心がけましょう。