働き方改革や雇用の不安定さから、「自分で会社を設立し経営したい」と考える人が増えていると言われています。
そして、会社設立時に必要となるのが「法人登記」という手続きです。
しかし、自宅や会社の住所にマンション名が含まれる場合、どこまで書けば良いのでしょうか?
今回は、あまり知られていない法人登記についてお伝えします。
「自分で会社を作って経営したい!」と考えている人は、参考にしてください。
法人登記とはどんなもの?
今回は、「法人登記をする場合、登記をする会社の住所は、マンション名まで必要なのか?」という疑問にお答えします。
はじめに、法人登記についてご説明しておきましょう。
「法人登記」とは、「自分の会社を社会に示し、認めてもらうためにある制度」のことで、法律で義務付けられているものです。
「法務局」で登記を行い、登記事項の証明書が発行されることで、印鑑証明の発行ができるようになります。
また銀行から融資を受ける際の信用も増すので、会社経営をするにあたってはとても重要な手続きであると言えます。
もし、会社を設立したのに法人登記をしないままでいると、過料などのペナルティーが科されることになります。
その額は、状況によって異なりますが、法律で定められている以上、会社を設立したらきちんと法人登記を行なうことが大切です。
法人登記の場合の登記名義人の住所の書き方は?
法人登記をする際には、登記名義人の氏名を記載します。
その際、登記名義人の住所も記入するのですが、大抵の場合は「○○県○○市○○町〇番〇号」といった書き方がされています。
実際に登記する住所が番地までであれば、それ以上住所欄に書くことがないので、これで大丈夫です。
しかし、ここで疑問が出てきます。
それが、「マンションに住んでいる経営者が、マンション内にある会社の法人登記をする」といった場合です。
その場合の住所は、自宅・会社所在地ともに「○○県○○市○○町○番〇号」だけでは終わりません。
住民票を見ても、番地のあとに、きちんとマンション名と部屋番号が記載されています。
しかし、登記名義人がマンションに住んでいて登記する場合、その住所の書き方は様々です。
①○○県○○市○○町○番〇号 ××マンション××号室
②○○県○○市○○町○番〇号-××号室 ××マンション
③○○県○○市○○町○番〇号 (××マンション××号室)
しかし、なぜ、このようなことになっているのでしょうか。
その理由は、次の章でご説明します。
登記名義人の住所にマンション名は入れた方が良い?
ここでは、登記名義人の住所の書き方がなぜ統一されていないのかや、登記する際の住所にマンション名を入れた方が良いのかどうかについて触れていきます。
まず、先ほどお伝えした、基本的な登記の考え方をおさらいしましょう。
法人登記する場合には、もちろん登記名義人の氏名と住所が必要ですが、住所に関しては、マンション名は必ずしも必要ではありません。
なぜなら、番地まで書いてあれば、登記上はそれで十分だからです。
そのため、登記の際に書く登記名義人の住所にマンション名を入れるかどうかは、「任意」ということになります。
つまり、「経営者の自宅マンションの名前と部屋番号は、入れても入れなくても良い」ということです。
自分が「住所だからマンション名まで入れる」と考えるのであれば、登記の際にもそこまで入れれば良いですし、「番地までで良いのなら、マンション名は入れない」という考えならば入れなくて良いのです。
どちらが正しいということではありません。
このため、「登記する際の住所の書き方が何種類もある」という現象が起きるのですね。
会社の所在地にはマンション名が必要?
前述のとおり、法人登記する際の登記名義人の住所については、マンション名を入れても入れなくても良いです。
しかし、これは、登記名義人の住所に限った話ではありません。
法人登記する場合、会社の所在地も登記しますが、会社の所在地の記載についても同じルールが適用されます。
つまり、会社の所在地についても、マンション名と部屋番号は記載する必要はありません。
もちろん、「マンション名も登記簿に入れたい」という場合は、入れても構いません。
そのため、
・会社の所在地にも登記名義人(経営者)の自宅住所にもマンション名と部屋番号を入れる
・会社の所在地も登記名義人(経営者)の自宅住所も番地まで(マンション名は入れない)
ということも可能ですし、
・会社の所在地にはマンション名を入れるが、登記名義人(経営者)の自宅住所には入れない
といったことも可能です。
会社の所在地も登記名義人(経営者)の自宅住所と同じく、マンション名まで書くかどうかは「任意」なのです。
マンション名を含めた住所で法人登記するメリットは?
このように、登記の際の住所は番地までで十分で、マンション名は任意です。
しかし、それでも「マンション名を入れるか、入れないか」で悩む経営者もいるのではないでしょうか。
そこで、ここでは、法人登記の際に、会社所在地や経営者の自宅の住所にマンション名を記載することで得られるメリットをご紹介します。
登記の際、会社や自宅の住所欄にマンション名を入れておくメリットには、
・郵便物がきちんと届くので安心できる
ということがあります。
法人として事業を行なう場合、様々な企業や団体と取り引きをします。
その際、新規で取り引きを開始する企業は、登記簿の住所で郵便物を送ってくることがあります。
また、金融機関や公的機関の中にも、そういったところがあります。
しかし、そうなると「明らかにこの建物だ」と分かる場合を除いて、配達物をめぐるトラブルが起こる可能性が高まります。
また、配達する側も、「届け先が分からず困るので、マンション名と部屋番号まで書いて欲しい」というのが本音です。
そのため、「会社設立後に、必要な書類が届かないということがあっては嫌だ」と考える人であれば、マンション名まで書いておく方が無難です。
登記の際にマンション名と部屋番号まで記載しておけば、
・重要な郵便物が届かない
・間違って、違うところに届けられてしまう
といったトラブルを防ぐことができます。
マンション名を含めた住所で法人登記するデメリット
しかし、やはりマンション名と部屋番号を登記することに不安を感じる経営者もいることでしょう。
では、マンション名を含めた住所で登記することで起こるデメリットには、どんなものがあるのでしょうか。
まず、「登記名義人(経営者)のプライバシーが特定される」ということがあります。
これは、登記簿の住所欄にマンション名と部屋番号を入れていれば避けられないことです。
しかし、「届け先がわからないため、大事な郵便物が届かない」ということは防げるので、どちらを取るかは経営者の考え方次第です。
また、会社のあるマンション名と部屋番号を登記すると、「同じ建物内でのオフィス移転にコストがかかる」というデメリットがあります。
なぜなら、マンション名までは同じでも、登記簿の部屋番号と変わるので、住所変更があったとして法人登記をし直す必要があるからです。
それを節約するために、「会社の住所にはマンション名は入れない」と言う経営者もいます。
このように、どんなことにもメリット・デメリットがあります。
そのため、法人登記で、会社や自宅の住所を書く際には、どこまで記載するかをしっかり考えておきましょう。
会社を設立するなら法人登記についても知っておこう!
今回は、「法人登記」についてお伝えしました。
法人登記は、会社を設立した場合には必ず行うことになるものですが、住所の記載については、自宅・会社ともに番地まで書いてあれば問題ありません。
もちろん、マンション名や部屋番号を入れることもできるので、状況に合わせて判断すると良いでしょう。
ただし、マンション名を入れることで起こるデメリットもあるので、それはきちんと理解しておく必要があります。