農地転用は、届出だけで済むこともありますが、許可されないと行えないことも多いものです。
宅地として許可された後も、その土地を自由に使っていいということにはならず、面積の制限や、土地利用の目的に注意しなければなりません。
「どのくらいの建築面積で建てるべきなのか」「許可されない目的とは何なのか」などの疑問点にお答えします。
農地転用で宅地にしたい!すべて許可が必要?
農地を転用して宅地にする際に、その土地すべてを自由に使って建築できるわけではないということをご存知の方もいらっしゃるでしょう。
「どれだけの面積を建築面積として使うか」という基準をご説明する前に、農地転用について知っておきたい基本知識をお伝えします。
基本的に、農地法4条許可によって農地を宅地にすることができ、5条許可で名義変更と転用を行うことができます。
原則として都道府県知事、もしくは指定市町村長の許可がないと、農地転用をしたり権利を移転することはできないのです。
農地には「食料供給」という重要な意味がありますので、国や各自治体で計画的に管理していくことが必要だということです。
とはいえ市街化区域内の農地であれば、許可ではなく「届出」だけで宅地にすることも可能です。
農地は相続税も高いため相続税対策になりますし、活用法次第では、固定資産税の節税や収益につながることもあります。
一方で農地転用後は、農地に戻すのが難しくなることに注意が必要です。
農地転用に必要な期間は、区域によっても違ってきますが、農用地区域であるならば一ヶ月以上かかることも多いです。
計画的に進めていくためにも、定められている基準やさまざまな条件などを事前に調べておくことが重要です。
農地転用で宅地に!建築面積に関する制限とは?
農地転用の意味や、「市街化区域は届出だけでOK」など、基本的な情報をお伝えしました。
許可、あるいは届出によって晴れて宅地として使えることになっても、その面積の中で、好きなように建物を建てられるわけではありません。
宅地面積には、一定の基準があるのです。
その基準は全国どこでも同じではなく、市区町村によって違ってきます。
とはいえ、多いのは、申請した土地面積の22%以上という基準です。
上限については目安ですが、500m²、あるいは1000m²などと定められています。
これは一階部分のみの合計の建築面積ということで、2階や3階の床面積は関係ありません。
また、都市計画法の関係で、物置、車庫などは自由に建てられない可能性もあるので注意が必要です。
建築面積についてくわしく知らない方も多いと思います。
正確な情報を知るためには、管轄の農政局や宅建士の資格を持つ方などに確認することが必要となるでしょう。
農地転用の立地基準
農地転用で宅地とする場合、面積の制限があることをお伝えしました。
次に、農地転用の許可・不許可の判断にかかわる「立地基準」について、簡単にご説明していきます。
許可される可能性が高い農地と、原則不許可になる農地があります。
●第1種農地
10ヘクタール以上の面積の集団農地で、生産性が高く、農業公共投資の対象となる農地のことです。
こちらは原則不許可です。
●第2種農地
農業公共投資の対象となっていない小集団の農地です。
市街化の可能性が高い土地で、生産性が低いなどの理由から、条件付きで許可されます。
「所有している農地以外の土地や第3種農地には建てられない事情がある」などの条件です。
●第3種農地
駅近、市街化区域、または市街化が進んでいる区域にある農地で、原則許可されます。
●農用地区域内農地
農業振興地域整備計画で農用地とされた農地で、原則不許可です。
●甲種農地
市街化調整区域内でも、良好な農業条件があり、8年以内に土地改良事業の対象となった農地です。
こちらも原則不許可です。
建築面積以前に知っておきたい!農地転用は目的もチェックされる
農地転用後の建築面積の制限、立地基準の次に、農地転用目的に関する取り決めについてもご説明します。
区域の問題をクリアしても、農地転用の目的によっては、許可を受けられないケースもあるので確認しておきましょう。
まず、「宅地分譲」が目的だった場合です。
地方公共団体や、独立行政法人都市再生機構が行う宅地分譲であれば認められていますが、一般の方が営利目的で宅地分譲のために農地転用を行うことは許可されません。
これは悪質な売却行為を防ぐためです。
例えば、土地価格が安いときに買って、価格が上がってから売り、転売して買い戻すことを繰り返して地価を意図的につり上げる行為(土地ころがし)が起きる可能性があります。
先ほども述べたように、そもそも農地は食料を供給するための大切な土地です。
したがって、基本的には「やむを得ず」という状況で農地転用が許可されます。
宅地造成だけが目的なら農地転用はできない
「宅地分譲」の他にも許可されない目的はあります。
それは、「宅地造成のみ」という目的です。
農地を宅地として住宅などを建てる際には、地盤を調べて強くして、建物を建てられる土地にする必要があるかもしれません。
しかし、建物を建てる見通しが立っていないような状況で、宅地造成のみを目的として農地転用することは原則として許可されません。
もし宅地造成が行われた後に土地の売却ができないと、建物が建たないまま土地が放置されてしまう可能性があります。
とはいえ、用途地域が決められている土地の区域内で、工場や施設などのために造成を計画している場合に、それが確実であると判断されれば、許可されるケースもあります。
また、都市計画法12条の5第1項で定められた地区計画で同法29条1項の許可を受けた場合なども、造成を目的としていても農地転用できることがあるでしょう。
宅地建築面積の制限と共に、農地転用の目的にも注意してみましょう。
農地転用で建築面積を守らず家を建てるのは違反行為!見つかるとどうなる?
農地転用には、宅地の面積の他にも、さまざまな制限や条件がありました。
もし、それに違反して転用を行ってしまうと「違反転用行為」とされて、転用状態の解消や行政代執行、罰則の対象となってしまいます。
違反転用行為は農地法第51条第1項に定められています。
無許可で農地転用を行うことや、農地転用のための権利設定・移転を行うことは当然認められませんが、「条件に違反したこと」「違反転用者から工事を請け負ったこと」なども対象です。
また、不正な手段での認可も取り消されます。
農地パトロールや通報で見つかると、調査が行われて都道府県知事などに伝わり、農地転用の取消や指導が行われるのが主な流れです。
工事が進んでいても停止勧告が行われ、それに従わない場合には裁判に発展することもあります。
農地転用許可制度についての詳細や相談窓口は農林水産省の「農地転用許可制度」のページから確認できます。
農地転用を計画されている方は一度目を通すことをおすすめします。
農地転用には色々な基準・条件がある!
農地転用によって建築面積にできるのは、「申請した土地面積の22%以上」であることが多いでしょう。
しかし、市区町村によって異なるので注意が必要です。
また、宅地分譲や「宅地造成だけ」を目的とする場合は、認められないことになっています。
農地転用の許可制度については、今後に法改正などが行われる可能性もあるので、農林水産省のホームページから随時確認してみてください。