建物を建てるときには、建築基準法に従って建てなければいけません。
この記事では、建築基準法の建蔽率についてご紹介していきますが、そのなかでも、特に「角地緩和」について詳しくお伝えしていきます。
角地緩和については特定行政庁、つまり建築地ごとに要件が違います。
今回は、東京都の場合について見ていきます。
建蔽率について
まず最初に「建蔽率」について確認しておきましょう。
建蔽率とは、土地の広さに対してどのくらいの建物を建てて良いのか、という敷地面積に対する建物の割合のことです。
これは、敷地内に一定の空間を確保することを目的として定められています。
一定の空間を確保することで、日当たりや風通しが良くなりますし、火災が起きた場合には空間があることで延焼を防ぐことができます。
基本的には、都市計画でその地域ごとに30%~80%の建蔽率が定められています。
例えば、80坪の土地で建蔽率が70%のとき、80坪×70%=56坪の建物を建てることができる、ということになります。
建築基準法上では、原則として地域ごとに指定された建蔽率を上回る建物を建ててはいけないことになっているのですが、「角地緩和」など、特別な場合はその限りではありません。
このように、その地域ごとの都市計画に基づき、建蔽率を守って建物を建てることになります。
東京都は人口も多く、建物が密集しているため、新たに建物を建てるときには、規制が厳しくかけられることになります。
「建蔽率の角地緩和」とは何か?
次に建蔽率の角地緩和を見てみましょう。
先程もお話ししたように、原則として建蔽率を上回る建物を建てることはできませんが、特定の条件を満たせば、建蔽率の緩和を受けることができます。
「角地緩和」は、文字通り角地に対する緩和です。
それでは、角地緩和(第53条第3項第2号)の条件について見てみましょう。
・街区の角にある敷地であること
※街区=道路に囲まれた区画
・または、それに準ずる敷地であること
・特定行政庁が指定しているもの
以上の条件を満たした場合は、建蔽率が10%プラスされます。
例えば、建蔽率の上限が70%とされている地域では、プラス10%され、80%が上限となります。
東京都のように住宅が密集している地域では、建蔽率が低いのでプラス10%は大きい数字です。
このように聞くと、街区にある角地であれば、どこでも建蔽率の10%緩和が受けられるように感じますが、そうではありません。
ここでのポイントは、「特定行政庁が指定しているもの」ということです。
「特定行政庁」とは?東京都の場合
それでは、建蔽率の角地緩和のポイント「特定行政庁が指定しているもの」についてご説明しましょう。
「特定行政庁が指定しているもの」とは、つまり「特定行政庁が指定する要件に合致した角地である」ということです。
そして、この角地緩和の要件は自治体によって違いがあり、同じ県内であっても、地域によっては厳しい規制がかけられることがあります。
冒頭で「特定行政庁=建築地ごと」と、とても簡単にお話ししましたが、重要なことなのでもう少し詳しい説明をしましょう。
特定行政庁とは「建築主事(確認に関する事務を管理する人)を置く市町村の長」のことで、市町村に建築主事がいないときは、都道府県知事が建築主事を担います。
この建設主事ですが、都道府県や政令指定都市をはじめ、人口が25万人以上の市には置くことが義務付けられています。
東京都では人口25万人以上の八王子市と町田市、その他の規定より、23区と市合わせて34の地域に建築主事が置かれています。
つまり、東京都内では34の角地緩和に関する考え方、規制があるということです。
東京都の「建蔽率の角地緩和」を見てみよう
それでは、東京都の「建蔽率の角地緩和」について見ていきましょう。
条例の基本は、各区とも「区長が指定する敷地は、法第53条第3項第2号によって、敷地の3分の1以上が道路、あるいは公園や広場、川やそれらに類するものに接していて、尚且つ、次に掲げる項目に該当するもの」としています。
ふたつの区を比べてみましょう。
【千代田区】
・2つの道路が隅角120度未満で交わる角地であること
・どちらの幅員も8メートル以上ある道路の間にある敷地であること
・道路の境界線において、相互の間隔が35メートルを超えないものであること
・それら準ずるもので、公園などに接する敷地や、敷地の反対側に公園等がある敷地であること
【北区】
・それぞれの幅員が、4メートル以上6メートル以下の2つの道路が、内角120度未満で交わる角地であること
・ただし、東京都建築安全条例の規定により、隅切りを必要とし、また、隅切りを道路として築造しないものは除く
・それぞれの幅員が4メートル以上で、そのいずれかの幅員が6メートルを超えないの2つの道路の内角120度未満で交わる角地であること
・幅員がそれぞれ8メートル以上の道路の間にある敷地で、道路の境界線において相互の間隔が35メートルを超えないものであること
・それら準ずるもので、公園などに接する敷地や、敷地の反対側に公園等がある敷地であること
内容はほぼ同じですが、違っている部分もあるので、しっかり確認をしておくことが大切です。
その他の「建蔽率の角地緩和」について
先程、東京都北区の条例で「隅切り」について載っていましたが、この「隅切り」とは、角地の角を切り取って道路にすることを言います。
特定行政区庁によっては、ただの角地では角地緩和を受けられなくても、この隅切りを作ることで角地緩和を受けられる場合があります。
また、都市計画法で定められた「風致地区内」では、条例で建蔽率の上限が決められていて、多くの場合、角地緩和の適用がされていないようです。
それは、自然の風景や歴史的に貴重な自然環境「風致」を守り、維持するために指定された風致地区なので、通常よりもかなり規制が厳しくなっているからです。
このように、角地緩和は条件がやや複雑になっています。
角地であることで、すべてが緩和の対象となるわけではありません。
道路に接する敷地面や道路の幅、隅切り、風致地区内などの細かい条件が決められています。
そのため、その土地のある自治体で必要に応じて、「建築基準法施行規則」や「建築基準法施行条例」を調べて確認してください。
東京都の「建蔽率の角地緩和」の調べ方
前項でご紹介したように、地域によって「建蔽率の角地緩和」は変わります。
また、条文に出てくる公園や広場、川なども地域によって捉え方が違います。
例えば、公園と言っても都市公園のみとしている場合もありますし、河川法で定められている川のみを対象としている場合もあり、自治体によってさまざまです。
条文や地域の角地緩和について必要な、「建築基準法施行規則」や「建築基準法施行条例」については、インターネットで調べることができます。
他にも、民間のデータベースや東京都の都市整備局のホームページ、各地域のホームページで必要な資料は大抵見られます。
しかし、専門的な知識がある方ならば理解しやすいことかもしれませんが、慣れていない方にはいずれも文字だけで細かい内容まで読み取るのは難しいようです。
建蔽率や角地緩和に関しては、正確な情報が必要です。
また、細かい規制が多く盛り込まれているものでもあるので、条文を読んだだけで判断せず、市の建築指導課や、東京都の都市整備局へ問い合わせることをおすすめします。
「建蔽率の角地緩和」は結構複雑
「建蔽率の角地緩和」は各自治体ごとに、条件が違うのでとても複雑です。
特に東京都の場合は、法律で定められた人口25万人以上の市に置かれる建築主事が、特別に23区を含み、34もあるので、より複雑になっています。
専門家でない方は、条文を読んだだけでは読み取れない、細かい規制があるので、建物を建てるときには、直接建築指導課や都市整備局へ問い合わせることをおすすめします。