不動産登記の申請人は個人の場合もありますが、法人の場合もあります。
ただし、法人が不動産登記の申請をする際、「資格証明書」の提出が必須とされているようです。
この記事では、法人が不動産売買によって所有権移転登記を申請する場合を例に、資格証明書を中心にお話をしていきます。
さらに書類によっては提出の省略ができるものもありますので、こちらについても触れていきましょう。
所有権移転登記って何?
はじめに、所有権移転登記についてのお話をしていきます。
所有権移転登記とは、売買や相続等で、土地や建物の不動産の所有権が移転したときに行う登記のことです。
不動産売買による所有権移転登記を申請する場合には、対象の不動産の売主と買主連名の登記申請書を提出することになるでしょう。
その際添付する書類などはいくつかあり、売主と買主で用意するものが異なります。
●売主
・対象の不動産の登記済証または登記識別情報
・印鑑証明書(発行から3か月以内のもの)と実印
・対象の不動産の固定資産税評価証明書
・身分証明書
●買主
・住民票の写しなど(住所を証する書類)
・認印
・身分証明書
以上を用意することになるでしょう。
上記は申請人が個人の場合に必要なものです。
申請人が法人の場合には、別の書類を用意することになります。
不動産の売主が法人の場合は、印鑑証明書は会社のものを用意します。
さらに、会社の登記事項証明書(全部事項証明書もしくは代表者事項証明書)が必要になるでしょう。
不動産の買主が法人の場合は住民票の写しなどではなく、会社・法人の登記事項証明書(全部事項証明書もしくは代表者事項証明書)を住所を証する書類として用意します。
そして法人が申請人の場合は、「資格証明書」という書類の添付も必須となっているようです。
この資格証明書とはどのような書類かを次の項でお話しし、後ほどこの書類の提出は省略できるのかについてもお話しします。
申請人が法人の場合は必須!資格証明書ってどんな書類?
所有権移転登記の申請人が法人である場合は、「資格証明書」の提出も必須とされています。
後ほど提出を省略できるかについてもお話ししますが、その前に、資格証明書がどのようなものかについてご説明しましょう。
資格証明書は「登記事項に変更及びある事項の登記がないことの証明書」が正式名称で、一般的には下記の内容が記載されています。
・会社の商号
・本店の住所
・代表取締役の住所、氏名
・上記3つに変更がないこと
・共同代表の登記がないこと
これらが商業登記簿に登記されていることを、登記所が証明する書類のことを「資格証明書」と呼びます。
登記の申請人が法人の場合、その法人の代表者(取締役や理事)が法人の行為を行うことになります。
そのため、代表者であるという資格を証明する情報を、法人の代表者は登記申請の際に提供しなくてはならないのです。
その際に提供するものが「資格証明書」となるので、登記申請の際は提出が必須とされているようです。
所有権移転登記時に提出する資格証明書に期限はある?
法人が所有権移転登記を行う際、その法人の代表者であるという資格を証明するために、資格証明書の提出が必須ということは先ほどお伝えしたとおりです。
では実際に所有権移転登記の申請をする場合、提出する資格証明書には期限が設けられているのでしょうか。
運転免許証の住所変更などでは、「発行日から6か月以内の本籍が記載された住民票の写し」と書類の期限が設けられていることもありますから、資格証明書にも期限がないかは気になるところでしょう。
実は提出する資格証明書には期限が設けられています。
登記申請の際は、作成されてから1か月以内の資格証明書を提出するように決められています。
そのため、書類の期限に注意して提出することが登記の申請時には重要といえるでしょう。
そんな資格証明書ですが、登記申請する際の提出を場合によっては省略することができるといわれています。
これについては次の項でお伝えしていきましょう。
資格証明書の提出は省略できる!?
お話ししてきた法人の登記申請時に提出が必須とされる資格証明書ですが、場合によっては提出を省略することもできるとされています。
というのも平成27年11月2日から、法人が不動産登記申請人の場合の資格証明書の提出が省略できるという規定が設けられたのです。
どのような場合であれば省略可能かというと、申請情報に「会社法人等番号を記載または記録」した場合です。
近年はさまざまな分野でオンライン化が進んでいますが、登記も同様にオンライン化されています。
そんな登記のオンライン化の流れから、会社法人等番号を申請情報に記載すれば、法務局でデータの照合ができるようにもなったのです。
そのため、この場合であれば登記申請時に資格証明書を提出しなくても問題はないようです。
資格証明書だけでなく別の書類も省略可能!番号を確認するには
ここまでは資格証明書についてのお話をしてきましたが、所有権移転登記では別の書類も提出を省略できるとされています。
その書類とは、住所を証する書類として用意する「会社・法人の登記事項証明書」です。
こちらの場合も先ほど同様、会社法人等番号を記載していれば提出しなくても良いとされ、用意しなくても問題ないといえます。
ではこの資格証明書や登記事項証明書の提出を省略できる会社法人等番号は、どこで確認することができるのでしょうか。
それは、会社・法人の登記事項証明書です。
この書類に記載されていますので、「結局、登記事項証明書を用意しなければならないのか」と思う方もいるかもしれません。
しかし登記のオンライン化により、法務局で交付しなくてもオンライン上で、登記事項証明書の情報を見ることができるようになったのです。
一般財団法人民事法務協会が運営するサービスにより、法人の登記情報も見ることが可能です。
会社法人等番号ももちろん確認することができ、手数料も法務局で交付するよりも少し安く済ませることができるので、手間もお金も少なくすることができますよ。
会社法人等番号を確認したい場合のみであれば、こちらを利用してみるのも良いかもしれません。
専門家に登記依頼する場合にも省略可能な書類がある!
個人の登記では、多くの方が司法書士や土地家屋調査士といった登記のプロともいえる専門家に代理申請を依頼していますよね。
専門家に依頼するのは自然人に限らず、申請人が法人の場合でも、所有権移転登記などの登記申請を専門家に依頼することもあるでしょう。
その場合、上記でご紹介した書類のほかに、登記申請の代理人は「代理権限証明情報」を提供しなくてはなりません。
代理権限証明情報のひとつとして委任状が挙げられ、ほかに法人の代理人であるという資格を証明する情報の提供が必須となるようです。
いわば「代理人の資格証明書」のようなものです。
しかし、代理人であるという資格証明情報にいたっても、提出の省略が可能とされています。
この場合も、会社法人等番号を記載または記録することで、資格証明情報の提出を省略ができるとされています。
会社法人等番号の記載で複数の書類の提出を省略できるので、手間やコストを削減することにもつながりますよね。
登記申請をする際はこういった情報を取得しておいても良いかもしれませんね。
会社法人等番号で資格証明書などの提出を省略できる!
不動産登記は自然人(個人)だけでなく、法人も申請することがあります。
法人の場合は、資格証明書という書類の提出も必須とされていますが、会社法人等番号を記載することで提出を省略することができるとされています。
ほかにも提出を省略できるものがあるので、会社法人等番号の記載は、手間やコストを少なくすることにつながるといえるでしょう。
所有権移転登記を申請する際の参考にしてみてくださいね。