新しく住宅を建築する際、「防火地域」「準防火地域」「22条区域」というワードを耳にされるかと思います。
それぞれの地域でには、建築基準法に基づいてさまざまな建築制限があります。
今回は、上記三つの区域の中でも注意点が多い「準防火地域」を中心に、どのような建築制限があるのかを確認していきます。
意匠的な観点から軒裏に木を貼りたいとご希望の方もいらっしゃるかもしれませんので、そのことについても一緒に確認していきましょう。
防火地域・準防火地域・22条区域の違い
まずは、防火地域・準防火地域・22条区域の違いから確認しましょう。
これらの三つの区域では、万が一火災が起こった際の延焼を防ぐため、建築物に一定の耐火性能や防火性能を備えることと建築基準法で定められています。
三つの区域に区分けするのは各自治体です。
各自治体は、都市計画法に基づいて区分けをしています。
防火地域は駅周辺や繁華街など建築物が密集している地域、防火地域のまわりの住宅地が準防火地域、さらにそのまわりの地域が22条区域となっていることが多いです。
建築物が密集しているほど災害時には被害が大きくなる可能性が高いので、より建築制限が厳しいようです。
そのため、防火地域では一般的な木造住宅の建築は制限されており、鉄筋コンクリート造で建築しなくてはならないことが多いです。
22条区域は、防火地域や準防火地域より外側のエリアです。
主な建築制限は、屋根や外壁には不燃材料を使用することです。
昨今の屋根材や外壁材は防火認定があるものがほとんどですので、特に何か制限されているということは感じにくいかと思います。
ただし、ある条件をクリアしなければ外壁を板張りにすることはできません。
外壁を板張りにしたり軒裏に木を貼りたいなど、新築の際は見た目にこだわりたい方も多いことでしょう。
しかし、住宅を建築する土地がどの地域かによって建築方法は異なり、決まりに従って建築しなくてはなりませんので建築士とじっくりと相談した上ですすめていきたいものです。
準防火地域ではどんな建築制限が?
防火地域や22条区域とは異なり、準防火地域で定められている建築制限は少々複雑です。
それでは、準防火地域ではどのような建築制限があるのかを確認していきましょう。
まず、四階建て以上、もしくは延べ床面積が1,500m²を超える建築物に関しては耐火建築物にする必要があります。
しかし、延べ床面積が500m²以下であれば一般的な木造二階建てや一定の防火基準を満たしていれば木造三階建ての建築も認められています。
また、準防火地域は外壁や軒裏に関しても制限があります。
万が一火災が起きた場合、外壁や軒裏は近隣の建築物に延焼しやすい部分です。
そのため、延焼に影響を及ぼす部材は防火性能のある建材を使用しなくてはならないと定められています。
具体的には、原則として一階部分は隣地境界線から3m、二階部分は隣地境界線から5mが延焼ラインとされており、それより外側の部材に関しては防火性能のあるものを使用しなくてはならないということです。
ただし、敷地が公園や河川などに面している場合、緩和措置がありますのでご参考ください。
ちなみに、防火性能がある建材とは、国土交通省の認定を受けたものを指します。
建築確認申請の際は、国土交通省の防火認定番号を書類に記載して提出します。
土地がどの区域に当てはまるかはどう調べる?
敷地が防火地域なのか準防火地域であるのか、はたまた22条区域であるのかで住宅建築にかかるコストは少なからず変わってきます。
もしも、これから土地を購入するということであれば、予算を立てるためにも希望する土地がどの地域に当てはまるのか確認したいものでしょう。
土地がどの地域に当てはまるか知るには、土地を紹介してくれた不動産会社や建築士、ハウスメーカーなどに聞いてみると調べてくれるかと思います。
もしも、自分で調べる場合は各市町村が公開している都市計画図を見れば、土地がどの地域に当てはまるのか確認することができるはずです。
ここで一つ注意点があります。
新築当時は準防火地域でも、建て替えなどを行う際には「前も準防火地域だったから」という理由で準防火地域の建築制限内で工事を行うことができない可能性もあります。
特に、東京都の防火規制区域に関しての条例は昨今改正されておりますので、注意が必要です。
それでは次項より、軒裏に木を貼りたい場合について考えていきましょう。
軒裏に木を貼りたい!準防火地域で可能?
新築の際、外壁や軒裏など、見た目にはこだわりたいという方も多いことかと思います。
準防火地域の建築物の外壁は防火性能がある建材を採用しなくてはなりませんが、昨今では多くの外壁材が防火性能を備えています。
そのため、建材選びに悩んでしまったり価格が高くなってしまったりするということもそれほどありません。
また、準防火地域でも国土交通省の認定を受けた建材を使用すれば、軒裏に木を貼ることは認められています。
さらに、防火認定がなくとも、木の厚みが30mm以上であれば問題ないとされています。
しかし、国土交通省の防火認定を取得した建材は一般的に高価であり、木の厚みを持たせることに関しても建築費用がかさむことにつながります。
決められた範囲内で軒裏に木を貼ることは可能ですが、建築費用は高くなってしまう可能性が高いことを念頭に置いておくといいかもしれません。
木材以外の軒裏建材はどんなものがある?
敷地が防火地域や準防火地域で建築制限が何かしらあるとしても、工夫しながら理想的なマイホームにしたいものです。
軒裏に木を貼る場合、先述したように国土交通省の防火認定を取得した建材でなければなりません。
一口に木といっても、ベニヤ板や合板にはじまり、杉やヒノキ、レッドシダーなどの無垢材もあります。
軒裏は案外人目につく部分でもありますから、木材にすることで目の引く外観の住宅になることでしょう。
しかし、木材以外の軒裏の建材ももちろんありますので、ここでご紹介いたししましょう。
昨今、一般的な住宅の軒裏に使用されている建材は「ケイ酸カルシウム板製」が多いです。
ケイ酸カルシウム板のような不燃材系の建材は耐久性や耐火性、耐水性が高いのが特徴です。
また、模様や柄などもたくさんあるので、外観に合わせて選ぶことができます。
そのため、必ずしも軒裏を木材にしなくとも、お好みの見た目の軒裏にすることも可能かもしれません。
軒裏に木を貼る場合は結露による劣化に注意が必要!
軒裏は建物の屋根裏と外気を遮断するため、屋根裏の換気がままならず湿気がこもりがちになってしまいます。
つまり、結露が生じてしまうのです。
それを放置すると、屋根材が腐ってしまう原因につながります。
特に、軒裏を木材にすると劣化の進みがはやくなってしまう可能性も考えられます。
そのため、屋根裏の換気をよくするために軒裏には換気口を取りつけることが望ましいです。
軒裏に限られることではないですが、見た目の美しさや性能を保つという意味合いでも、定期的なメンテナンスや点検は必要だといえるでしょう。
また、そのようなことが気になるということであれば、先ほど触れましたケイ酸カルシウム板製の建材を使用することを視野に入れる方がいいかもしれません。
準防火地域内で住宅を建てるには多々制限があり、制限を守って建築したとしても、劣化につながる可能性がある要因があるということも覚えておくといいでしょう。
準防火地域は他の地域より建築制限が複雑
今回は準防火地域を中心として、どのような建築制限があるのかをみてきました。
準防火地域は他の地域とは異なり、建築制限が少々複雑です。
新築する際は基本的に建築士やハウスメーカーが敷地の地域に応じて対応してくれることが多いですが、これを機会に知識として蓄えておきましょう。
また、ここでもお話ししてきましたように、建材によっては軒裏に木材を貼ることも可能です。
ただし、その際は軒裏に換気口を取り付けるなどの対応が必要ということも覚えておくと、建築計画時の参考になるかもしれません。