土地の登記は専門家に任せるものと思いがちですが、法務局に赴くなどいくつかの手順を踏めば、自分で登記することも可能です。
土地の相続があった場合には、相続人が複数いて、土地の所有者が一人でなくなるということもあるでしょう。
土地の所有者が複数になる場合、手続きは少々複雑になります。
そのような場合には、どのようにして登記を行っていくのか見ていきましょう。
土地の所有者が亡くなった!相続人が複数いる場合の土地の分け方
土地の所有者が亡くなり、何人かでその土地を相続しなければならないという場面もあります。
もし相続するべきものが現金のみであれば、比較的簡単にかつ平等に分けることができます。
しかし、土地をはじめとする不動産がある場合は現金と違い、分けて相続することは簡単ではありません。
土地の相続が完了したら法務局で登記を行いますが、その前にまずは土地を複数人で相続する方法を見ていきましょう。
①現物分割
現物分割は、土地を分けずに一人だけがその土地をそのまま相続する方法と、相続人全員で均等に相続できる分筆という方法の2種類があります。
まず、一人が土地をそのまま相続し、その他の人は土地以外のものを相続するという方法があります。
これは、相続できるものが土地以外にもある場合に適用できます。
例えば、それぞれ法定相続分が2分の1ずつである兄弟がいるとします。
遺産が1,000万円相当の土地と現金1,000万円だった場合、兄が1,000万円相当の土地を相続、弟は現金1,000万円を相続するというような形になります。
また、現物分割のもう一つの分け方として、分筆をするという方法があります。
分筆とは、登記上で土地を分けることです。
法定相続分が2分の1ずつである兄弟が2,000万円の土地を分筆する場合には、兄・弟それぞれが1,000万円相当の土地を相続します。
複数人で土地を相続する方法はまだある
土地を複数人で相続する方法は、現物分割の他にも方法があります。
②代償分割
代償分割は、相続人のうち一人が土地をそのまま相続しますが、土地の他に相続できるものがない場合に適用される一つの方法です。
法定相続分が2分の1ずつである兄弟が、2,000万円相当の土地を代償分割するとします。
兄が2,000万円相当の土地を相続した場合、兄は弟に1,000万円の現金を支払います。
③換価分割
土地を管理できる人がいない場合や遺産を平等に分けたい場合には、換価分割をすると良いでしょう。
換価分割は相続した土地を売却し、売却額を相続人に分配する方法です。
④土地を共有する
土地を分割せずに複数人で土地を相続すると、土地の共有となります。
共有は分筆と違い、新たにその土地の所有者になった人全員が、元の大きさのままの土地全体を使う権利を有しています。
その土地を利用して得た利益は、所有者それぞれの土地の持ち分に応じて分配されます。
以上の4つのようなものが、複数人で土地を相続する方法として考えられます。
土地などの不動産を相続した場合、法務局で登記を行った方が良いですが、その前に誰が・どのように不動産を相続するのか決めなければなりませんね。
遺言がない場合には、遺産分割協議をしたり、法定相続分で相続するのかを決めたりしなければなりません。
法務局で分筆すれば土地の所有者を別にすることができる
ここまで、1つの土地を複数の相続人で分ける方法を見てきました。
①現物分割の部分で「分筆」という方法がありましたね。
これは、「分割」とは明確な違いがあります。
その違いは、分けた土地を登記しているかしていないかという点です。
分割は、登記上の変更はなく、新たに家を建てるなどのために土地を分けて考えることです。
分筆は、分けた土地を登記上も別の土地として登記することを指します。
分割では、登記上は1つの土地であるので所有者を分けることはできませんが、分筆することで土地の所有者を分けることができるのです。
分筆することでその土地の所有者がはっきりしますので、その後の相続においても手続きがしやすいでしょう。
また、分筆することで節税になるというメリットもあります。
土地を2つに分けることで、その土地の評価が下がり相続税の負担がへることもあるのです。
分筆をしたい場合には、法務局で手続きをすることができます。
土地の新たな所有者自身が法務局で登記を行う
どんな形であっても、土地を相続したとなれば相続登記を行わなければなりません。
その相続登記は、法務局で行うことができます。
多くの方は、「登記」と聞くと司法書士などの専門家に依頼することと思います。
しかし、土地の新たな所有者自身が法務局で申請することもできます。
そうすることで、専門家に依頼したときと比べて、登記にかかる費用をかなり抑えることができるのです。
登記をするためには、必要な書類等を揃え法務局に持っていきます。
登記に必要な申請書類は、法務局のホームページからダウンロードすることができます。
一般的に必要となる書類は、
・相続する不動産の登記事項証明書
・被相続人の住民票の除票
・被相続人の死亡時から出生時までの戸籍謄本一式
・固定資産評価証明書
・不動産を取得する相続人の住民票
などとなります。
相続人が複数いる場合には、以上のものに加えて、
・遺産分割協議書もしくは遺言
・相続人全員の現在の戸籍謄本
・相続人全員の印鑑証明書
などが必要になってきます。
これらを、法務局の不動産登記係の窓口へ持っていき申請します。
窓口での申請は、法務局が開いている時間に行かなければならないので少々大変かもしれませんが、書類に不備があった場合にその場で対応してもらえる点がメリットです。
自身で法務局へ行けば登記費用を抑えられる
相続登記というと、なんだか難しそうで専門家に依頼するべきものと考えている人もいらっしゃるでしょう。
しかし、司法書士などの専門家に依頼する場合は、自分たちで登記する場合に比べて高額な費用が必要になります。
登記にかかる費用を抑えたいという方は、新たな土地の所有者自らが登記をするのがおすすめです。
具体的にかかる費用を見ていきましょう。
相続登記をする際には、登録免許税を支払います。
登録免許税の金額は、所有する土地の固定資産税評価額の0.4パーセントとなります。
その金額分の収入印紙を購入し、登記の際に申請書に貼り付けて納付します。
もし、専門家に依頼せずに登記を行う場合は、登記にかかる費用は以上です。
司法書士などの専門家に登記を依頼した場合には、これに加えて司法書士報酬を支払わなければなりません。
司法書士報酬は、その司法書士によって金額は異なります。
土地と建物合わせて1ヶ所の相続登記を依頼する場合、10万円程度がおおよその司法書士報酬と言われています。
ただし、相続人の数が増えると、司法書士報酬が加算されることもあります。
費用を少しでも抑えたいという方は、自分たちで相続登記をやってみてはいかがでしょうか。
法務局のホームページに詳しい方法が書かれている他、法務局の窓口でも相談することができます。
登記には郵便やオンラインを使うと便利
相続登記をその土地の所有者自身が行う場合、法務局の窓口に行って申請することができるとご紹介しました。
法務局の窓口に赴くことで、書類の不備をその場で教えてもらうことができますので初めての方でも安心ですね。
ただし、法務局の窓口は平日の昼間しか開いていないため、土日休みの一般的なサラリーマンの方が申請しに行くことは少しハードルが高いかもしれません。
それでも、自分たちで登記をしたいという場合には、「郵送」または「オンライン」を使って申請する方法もあります。
郵送の場合は、通常の郵便ではなく書留郵便で書類一式を送ります。
また、完了書類も郵便で受け取ることも可能です。
オンラインの場合は、パソコンの設定や電子証明書を取得する必要があり、少し手間がかかります。
しかし、パソコンに慣れている方であれば、法務局の窓口へ赴くよりも手間にならないかもしれません。
ぜひ、この2つの方法も検討してみてくださいね。
相続後は必ず登記を!
土地を複数人で相続する場合の、相続登記について見てきました。
1人で相続する場合よりも、複数人で相続する場合の方が手続きが複雑になるのは明らかですね。
相続があまりにも複雑になるようでしたら、専門家に依頼することで今度は時間の節約になるでしょう。
時間に余裕のある方は、ぜひ自分たちで登記を行ってみてはいかがでしょうか。
22