家を新築する際、建築基準法や都市計画法に則って住宅の大きさなどを決めなくてはなりません。
基本的には、契約を結んだハウスメーカーの担当者がそれらをしっかりと踏まえたうえで建築計画を練ってくれることかと思います。
しかし、自分の家のことですから、ある程度のことは知っておきたいものです。
今回は、その中でも少々複雑な容積率と建蔽率について解説していきます。
容積率の「前面道路の幅員規定」や建蔽率の「角地緩和」など、わかりにくい点に関しても解説いたしますので参考にしてください。
容積率とは?角地など敷地に対する前面道路が複数ある場合の容積率はどう計算?
まずは、容積率について解説しておきましょう。
容積率とは、敷地面積に対しての延べ床面積の割合になります。
求め方は、
容積率(%)=延べ床面積÷敷地面積×100
となります。
わかりやすく、例を挙げてみましょう。
敷地面積が100m²だとしましょう。
そして、建物が二階建てで、一階が50m²二階も50m²としましょう。
この場合の容積率は、
容積率=100m²÷100m²×100=100%
つまり、100%となります。
容積率はそれぞれの地域ごとで上限があります。
これを「指定容積率」といいます。
一般的に考えて、容積率の割合が大きければ大きいほど、面積の大きい住宅を建てられるということになります。
ただし、容積率は建築基準法や都市計画法が絡んでくるため、単純に容積率のみの値で住宅の大きさが決まるわけでもないのです。
容積率には「指定容積率」の他にも、前面道路の幅員規定に基づいた「基準容積率」があります。
敷地が角地であったり両面に道路があるなど、敷地に対して複数道路が面している場合は、一番広い道路の幅員を用いて容積率が計算されることになります。
容積率は敷地の前面道路が特定道路からわかれた道路であると緩和される
容積率と建蔽率には緩和規定なるものがあります。
建蔽率は敷地が角地であると緩和措置がある場合がありますが、その件につきましては後程ご説明いたします。
容積率の緩和規定は、延べ床面積には含まれるものの、ある一定の条件を満たしている場合、容積率の計算には含まれないというものです。
例えば、地下室やロフト、駐車場などが決められて条件を満たしていれば容積率を計算する際にその分の床面積は換算しなくていいとということになります。
それと同様に、敷地の前面道路が幅員15m以上ある大きな道路(特定道路)から分かれた道路である場合、容積率が緩和されるという特例もあります。
具体的には、敷地の前面道路の幅員が6m以上かつ12m未満、特定道路まで70m以内の場所に敷地があれば、距離に応じて容積率を上乗せすることができます。
ただし、距離に関しては敷地から特定道路までの最短距離を計測します。
これは、建築基準法第52条で定められています。
この場合の容積率の計算方法は以下の通りです。
容積率=(前面道路の幅員+前面道路の幅員に加算する値)×40%もしくは60%
40%もしくは60%と記載しているのは、それぞれの用途地域によって数値が異なるためです。
敷地の前面道路が特定道路からわかれた道路である場合の容積率の計算方法
敷地の前面道路が特定道路から分かれた道路であり、容積率が緩和される場合の計算方法についてもう少し詳しくご説明いたしましょう。
具体例を挙げてみます。
敷地の前面道路の幅員が6m、敷地から特定道路までの最短距離が35mとしましょう。
容積率が緩和される際の計算式で出てくる「前面道路の幅員に加算する値」をまず算出します。
「前面道路の幅員に加算する値」
=(12-前面道路の幅員)×(70-敷地から特定道路までの最短距離)÷70
=(12-6)×(70-35)÷70
=6×35÷70=3
つまり、前面道路の幅員に加算する値は3mということになります。
それでは、この3mを前項の計算式に当てはめてみましょう。
容積率=(前面道路の幅員+前面道路の幅員に加算する値)×40%
=(6m+3m)×40%
=360%
この場合の容積率は360%ということになります。
緩和がない場合は、「前面道路の幅員(6m)×0.4」で算出される240%が容積率となりますから、120%上乗せされるということになります。
ただし、これは基準容積率のため、指定容積率の限度と比較して小さい方が適用されることになりますのでご注意ください。
次項では建蔽率についてご説明していきます。
敷地が角地であると緩和措置がある場合についても後述しておりますのでご参考ください。
建蔽率とは?
容積率の次は、建蔽率についてご説明します。
容積率は敷地面積に対しての延べ床面積の割合ですが、建蔽率は敷地面積に対する建築面積の割合となります。
延べ床面積が建物各階の総面積に対し、建築面積は上空から建物を見た時の面積を指します。
建蔽率も容積率と同様、建築基準法の用途地域によって上限が定められています。
建蔽率の求め方は以下の通りです。
建蔽率(%)=建築面積÷敷地面積×100
建蔽率に上限がある理由は、火災等の災害が発生した際に被害が拡大することを防ぐためだったり、日当たりや風通しを確保するためです。
それぞれの地域では状況が異なりますので、用途地域ごとで建蔽率の上限が決められています。
自治体によっては地区計画等によって他の規定がある場合もありますのでご注意ください。
容積率では、敷地の前面道路が特定道路からわかれた道路である場合は上限が緩和されることをご説明しましたが、建蔽率の場合は敷地が角地であれば上限が緩和される措置があります。
この件につきましては、次項でご説明していきます。
建蔽率の角地緩和とは?
新築を計画する際、土地探しから始められる方はなるべく自分にとって条件のいい土地を購入したいとお考えになることでしょう。
それぞれ「条件のいい土地」は異なりますが、一般的に前面道路が南側の土地や角地などが思い浮かぶのではないでしょうか。
その中でも、角地の場合は建蔽率の緩和措置があります。
いわゆる「角地緩和」のことです。
角地緩和は以下の条件を満たす時に、建蔽率10%加算の対象となります。
①敷地が角地である
ただし、角地といっても必ず緩和されるとは限りません。
緩和措置の対象となるのは、特定行政庁ごとに角地に指定されている条件に合う場合に限りますのでご注意ください。
②敷地の両面に道路がある
角地ではなくとも、敷地の両側に道路がある場合は角地と同じ扱いとなります。
ただし、特定行政庁ごとに指定がされている場合に限ります。
③公園や河川、広場などに接している
角地ではなくても、敷地が公園や河川、広場などに接している場合は角地とみなされる場合があります。
ただし、この場合も特定行政庁ごとに指定がされている場合が該当しますのでご注意ください。
角地緩和に関しては、各自治体によって対応方法が異なります。
ここでご紹介しました内容に当てはまる場合でも、自治体によっては対象外となることもありますことをご了承ください。
また、敷地が角地である場合は建蔽率の制限が緩和される措置があるものの、容積率は対象外となりますのでご参考ください。
その他の建蔽率の角地緩和と角地緩和対象外となるケースについて
前項でご説明した以外にも、建蔽率の角地緩和が対象となるケースがあります。
それは、角地に「隅切り(すみきり)」をつくることです。
隅切りとは、敷地の角を切り取って道路にしてしまうことです。
ただし、こちらに関しても自治体ごとで対応は異なりますので、詳細を知りたい方は該当の自治体にお問い合わせください。
反対に、角地緩和対象外となってしまうケースもあります。
それは、敷地の地区が都市計画法で定められている「風致地区」内の場合です。
風致地区は都市部の中にある貴重な自然環境を守り、維持していく地区のことです。
そのため、他の地域より制限が厳しく指定されているのです。
容積率は敷地の前面道路が特定道路からわかれている道路の場合は緩和措置があり、建蔽率も角地であると緩和措置があることがおわかりいただけたことと思います。
しかし、どちらも必ず緩和されるということではありませんので、詳しいことは事前によくお調べになることをおすすめします。
容積率と建蔽率の詳細が知りたい方は各自治体に確認しよう
容積率と建蔽率について解説してきましたが、ここでお話しした以外にも新築するなら知っておきたい決まりごとはたくさんあります。
くどいですが、容積率と建蔽率につきましては各自治体で対応が異なることがありますので、詳しくお知りになりたい方は地域の自治体に確認するようにしましょう。
せっかくの新築ですから、ある程度の決まりごとは知っておきたいものですね。