ご近所トラブルのなかでも、多いのが駐車違反に関するものです。
私道(=しどう)に駐車されることで、「自分の家の駐車場なのに出入りができない」「通行の妨げになる」など、迷惑行為に悩まされている方も多いと思います。
特に袋小路で、反対側から入れない場所に家がある場合は困ってしまいます。
それでは、私道の駐車違反について見ていきましょう。
袋小路だからこそ困る私道の違反駐車
袋小路のイメージは、「行き止まりにまっているので逃げ場がない」「防犯面が心配」「道路へのアクセスの悪さ」などから嫌厭されることが多いようです。
しかし、実際に袋小路に住んでいる方の意見を見てみると、人や車が入ってこないので思ったよりも治安が良く、静かなのでとても住みやすいとも言います。
通行人がいないので、外からの視線を感じることなく、静かで快適な暮らしができるそうですが、デメリットもあります。
それは、近隣の「道路の私物化」により、何軒かで共有している自宅前の私道に車を停めるといったような、駐車違反がたびたび見受けられることです。
「共有なのだから、自分にも権利がある」と思い込み、自宅に駐車スペースがあるにも関わらず駐車をするので、袋小路の住人の車が通れなくなる、ということもあるようです。
「ぎりぎりのスペースを空けてある」と言われても、運転スキルによっては通れない場合もあります。
また、もし車や塀にこすってしまったら大変です。
袋小路ですと、「反対側に回って自宅に入る」ということもできません。
そもそも、私道に駐車し、通行の妨げになるのは、迷惑行為です。
車だけでなく、園芸用のプランターや自転車、子どもの遊び道具など、私道の意味をはき違えている方も多くいるようです。
では、私道とはどういうものなのでしょうか。
次項で詳しく見ていきましょう。
私道とは?
「私道」とは、誰でも利用できる「公道」に対するもので、土地の所有者が便宜上、通行できるようにしているものです。
「公道」は、国や地方公共団体が管理するもので、「私道」は、別名「わたくしどう」と呼ばれるように、個人や企業などが管理する道路です。
たとえば、家を建てる場合には建築基準法の「接道要件」により、幅4m以上の道路に2m以上接していなければなりません。
この条件を満たしていない場合は、これに見合う「私道」を作り、その「私道」が道路として認定してもらえれば、家を建てることができます。
そのため、特に大きな土地を分割して家を建てる場合などは、「私道」を作り、奥が袋小路になることがよくあります。
このような土地は、「私道負担あり」という条件付きになります。
これは、「土地または、土地つき建物を買った場合、敷地の一部が、あなたの負担分として道路に提供される」ということです。
こうした場合は、当たり前ですが、自分が負担している「私道」であっても、「建物を建てる」ことも「物を置く」こともできませんし、車を停めることは駐車違反の対象になります。
もちろん、物置などを造ることもできませんし、建ぺい率や容積率の対象からも除外されます。
したがって、同じ面積の土地でありながら「私道負担あり」の土地は、その分だけ狭くなった土地に建っているということになり、建て替えるときも、その制約はかわりません。
「私道負担」の誤解が袋小路の駐車違反トラブルを招く!?
私道の駐車違反トラブルが起きやすい原因のひとつが、前項に挙げた「私道負担」です。
大きな土地を分割して開発し、何軒か家を建て売り出している物件で、袋小路の奥にも住宅があり、手前の両側にも家が建っている場合などは、「私道負担」が発生しているはずです。
先程お話ししたように、この「私道負担」の場合は、自分の土地であっても、自分の自由になるわけではありません。
しかし、多くの場合、「自分の土地の分は好きに使って良い」と勘違いしてしまい、また「隣もやっているのだから、自分もやっていいだろう」と思ってしまうのです。
このような土地では、袋小路の奥へ行けば行くほど、手前の住人の身勝手な考えに振り回されてしまうことになります。
「私道負担」は、家を建てるために作った「道路」です。
「道路」ですから、人や車が無理なく行き来できなくてはなりません。
このことを勘違いしてしまうので、駐車違反をし、近隣トラブルを招くのです。
駐車違反で袋小路の奥にある我が家に入れない!そのとき警察は?
私道での駐車違反トラブルは大変多く、枚挙に暇がありません。
特に袋小路の奥に住んでいる住民にとって、私道での駐車違反は、自宅に自由に出入りすることができなくなるので、大変迷惑です。
これは、先程からお話ししているように、私道に駐車している人は「私有地だから当然の権利」と言い、迷惑を被った者は「通行妨害」と考えるのでどこまで行っても平行線です。
警察に通報すれば、注意はしてもらえるでしょうが、根本の解決にはなりません。
こういったケースは、当事者同士の話し合いになることが多く、ときには裁判になることもあります。
私道であっても扱いは公道と同じですが、トラブルが起きれば私道なので民事不介入と言われ、道が壊れるなどすれば、それは「私道負担」なので住人が直さなければなりません。
多くの警察官が「私道だから」という理由で、取り締まることを避けているようです。
私道も駐車違反になる!
私道は「道路交通法では取り締まれない」とよく言われます。
しかし、私道であっても「駐車違反を取られた」と言っている方々もいます。
自宅の前の私道に車を停めていたら「私道であっても公共性が高い」という理由から、違反切符を切られたというのです。
そのときの理由は、「通り抜けできるので公道と同じ扱い」というものでした。
では、通り抜けができない袋小路の場合はどうなるのでしょうか。
道路交通法では、道路とは「不特定の人や車が自由に通行できる状態の場所」とされています。
したがって、通り抜けできるかできないかではなく、不特定の人や車が通行できるのであれば、道路交通法の道路として交通規制の対象となるのです。
道路交通法のなかには、「私道に駐車をしてはならない」という規定はありません。
そのため、「私道に駐車していて迷惑」というだけでは警察が取り締まることはできない、ということがいつからか「私道は道路交通法では取り締まれない」という誤解を生んだようです。
そもそも駐車違反とは?
では、「道路交通法」における駐車違反について見ていきましょう。
1.駐車する場合には、右側の道路上に3.5メートル以上の余地がなければ、余地不足駐車違反
2.車庫の出入口から3メートル以内は駐車禁止
3.交差点や道路の曲がり角から5メートル以内は駐車禁止
他にも、「自動車の保管場所の確保等に関する法律」によると、次のような違反があります。
1.道路上の場所を自動車の保管場所としてはいけない
2.道路上の同じ場所に引き続き12時間以上駐車してはいけない
3.夜間に道路上の同じ場所に引き続き8時間以上駐車してはいけない
このような行為が駐車違反にあたります。
袋小路があるような私道では、道路幅も狭く、車を停めて、さらに3.5メートル以上の余地を確保するのは難しいでしょう。
また、車庫の出入り口から3メートル、道路の曲がり角から5メートルの距離を確保することもできない場合が多いのではないでしょうか。
近隣の駐車違反に悩まされたら、このことを理由に、道路交通法違反や保管場所違反として取り締まってもらいましょう。
私道の駐車違反も取り締まりの対象になる
私道の駐車違反については、ご近所トラブルのもとになりやすく、私情が入りやすいので注意が必要です。
また、「私道負担」の意味を勘違いしている方とのトラブルは、より厄介なものになるでしょう。
しかし、道路交通法に基づいた駐車違反であれば、警察に取り締まってもらえます。
私道の駐車違反に悩まされたら、私情を挟まず、警察に通報するなど、冷静に対処しましょう。