防食性の高いガルバリウム鋼板は、建物の外壁で使われることが多い建築材料です。
その意匠性の高さと手頃な値段から、人気が高くなってきています。
しかし、表面の強度が低いため、そのままでは準防火地域では使用できない可能性があります。
そこで、どのようにしたら、ガルバリウム鋼板を建物の外壁に使えるようになるのか見ていきましょう。
準防火地域とは?
まずは、「準防火地域」についてご紹介しましょう。
建物が密集している都市部では、万が一の火災に備えるため、「防火地域」と「準防火地域」が作られています。
これは、もし火災が起きてしまった時に、できるだけ延焼しないようにする目的で「都市計画法」によって定められているものです。
多くの場合は、都市の中心部が「防火地域」、その周辺を「準防火地域」が囲み、さらにその周りが「22条指定区域」になります。
これらの地域では、建築基準法によって、建物それぞれの構造や材料に制限がかけられています。
「準防火地域」では、「防火地域」よりも制限は緩やかになり、建物の規模に応じて防火性能を高め、延焼しないよう配慮することになります。
そういった防火の面で重要なのは、扉やドア、窓などの開口部です。
次に、外壁、屋根、柱など、主要構造部の防火が重要になってきます。
特に外壁は、外からのもらい火を避けるためにも、防火対策をされている建築材料を選ぶ必要があります。
しかし、人気の高い、安価で意匠性に優れたガルバリウム鋼板を使うには、単体ではそれほど耐火性を期待できません。
そこで、ガルバリウム鋼板を使用する場合には、防火性のある下地を選ぶことが必要です。
準防火地域の外壁にガルバリウム鋼板を使うには?
ガルバリウム鋼板は、単独では耐火性の面で準防火地域の外壁としては使えませんが、下地を選べば使うことできます。
主に使われるのは、「モイス」「ダイライト」「防水石膏ボード」の3種類の下地です。
【モイス】
古くからある天然の素材「土壁」や「木」などの自然の力を元に開発された新しい建築材料です。
主な成分は、ケイ素、石灰質材料、補強繊維、バーミキュライトで、接着剤を使わずに加工されています。
モイスは、軽量で断熱性に優れ、強度もあり、湿度の調整や消臭効果にも力を発揮する土壁の機能を持っています。
【ダイライト】
モイスと同じように、ケイ素やバーミキュライトを主成分とし、耐震、耐火性に優れています。
軽量で傷みにくく、強度もあるので、壁材としてよく使われています。
【防水石膏ボード】
石膏を芯にして、その両面と側面をボード用紙で包み込んだボードで、耐火、防火、遮音、断熱性能に優れています。
一般的には室内に使われることが多いですが、防水加工されたものであれば、ガルバリウム鋼板の下地として使うことができます。
準防火地域の外壁の「ガルバ」の下地に最適なのは?
前述したように、準防火地域の外壁にガルバリウム鋼板を使う場合には下地が大切です。
準防火地域では、30分間火にさらされても燃えない耐火性が求められます。
先程の3種類の下地をさらに詳しく見てみましょう。
【耐火性】
モイス、ダイライト、防水石膏ボードの中で、不燃材として防火認定を受けているのは、モイスと防水石膏ボードです。
不燃材は、20分間火にさらされても燃えないことが条件ですが、モイスはこれをクリアしています。
防水石膏ボードも認定を受けていますが、モイスの厚さ9mmに対して、12.5mmと厚みがあります。
ダイライトは、10分間火にさらされても燃えないことが条件の準不燃物なので、ガルバリウム鋼板と一緒に使うことで防火性を上げられます。
この中では、軽くて比較的厚みのないモイスは、最も防火性に優れていると言えるでしょう。
【価格】
価格で比べると、モイス>ダイライト>防水石膏ボードです。
ダイライトは、モイスに比べると流通量が多いので手に入りやすく、価格も少し安いようです。
防水石膏ボードは、かなりお手頃な価格で、場合によってはモイスやダイライトの4分の1ほどと言われています。
外壁全体となると相当な面積になるので、お手頃な価格というのはうれしいですね。
ただし、モイスやダイライトに比べると、防水石膏ボードは耐震性がやや劣ってしまうので注意が必要です。
ガルバリウム鋼板の外壁のメリット
外壁材や屋根材として多く使われているガルバリウム鋼板は、アメリカで開発されました。
しかし、アメリカではアルミが多く使われていて、ガルバリウム鋼板はあまり使われてはいません。
実は、先進国の中では、日本が最も多くガルバリウム鋼板を使っているのです。
その理由は、アルミよりもガルバリウムの方が耐火性に優れていることと、価格が安いことが挙げられます。
ガルバリウムの主な成分は、アルミ、亜鉛、シリコンで、他の鋼鈑に比べて耐久性や耐熱性が高いです。
このことから、準防火地域でも下地と組み合わせることで耐火性が増し、外壁に多く使われ、普及していきました。
また、ガルバリウムは薄くて着色性が良いことから、高いデザイン性で外観を演出できます。
薄くて軽いので、耐震性にも優れ、サビに強いのも、ガルバリウムのメリットです。
サビに強いことから、「メンテナンスの必要がない」「耐用年数が半永久的に長い」など評価が高いですが、さすがに一切のメンテナンスが不要というのは言い過ぎです。
次は、ガルバリウムのデメリットについて見ていきましょう。
ガルバリウム鋼板外壁のデメリット
これまで見てきたように、ガルバリウム鋼板を使った外壁は耐火性に優れているので、準防火地域でも使えますし、デザイン性にも優れています。
では、「メンテナンスの必要がない」「耐用年数が半永久的に長い」という評判は、どうなのでしょうか。
先程もお話ししたようにガルバリウムは、サビに強いという特長があります。
しかし、強いのは確かですが、全くサビないというわけではありません。
また、耐用年数も半永久的ではなく、10~20年と言われており、当然メンテナンスは必要です。
この「サビに強い」「耐用年数が長い」という評判は、ガルバリウムが生まれた背景が大きく関わってきます。
ガルバリウムのような金属鋼板は古くからあり、ブリキなどは加工しやすいのでよく使われていました。
しかし、加工しやすい反面耐久性が低く、サビに弱かったので、建築材料としてはあまり適していなかったのです。
その後、技術が向上し、これまでのものより耐久性があり、サビに強い、トタンに代表されるような建築材料として使われる金属鋼板が出てきました。
しかし、中性の雨には耐えられたトタンでしたが、酸性雨には耐えられず、その後の研究により開発されたのがガルバリウムです。
ガルバリウムはトタンに比べると、サビに強く、3~6倍の耐久性があります。
つまり、ガルバリウムは基準となっている従来の鋼板よりも、サビに強く、耐久性が強いということなのです。
ガルバリウム外壁の敵はサビ!
ガルバリウム鋼板は、耐火性や耐久性に優れていますが、金属なので一度傷がつくとそこから腐食が始まります。
いわゆる「赤サビ」です。
ガルバリウム鋼板は金属の表面を塗装コーティングして守っていますが、金属部分に金属の粉がついてしまうと、その粉自体がサビて、それがガルバリウムに移る形で腐食が進んでしまいます。
また、酸性雨や潮風などの塩分が、ガルバリウム鋼板に含まれる亜鉛につくと、そこから白サビが発生し、腐食が始まります。
白サビは赤サビのように、素材に穴を開けるほどの腐食は起こしませんが、サビが発生したガルバリウム鋼板外壁の補修は難しいのが現状です。
他にも「電食」と言って、ガルバリウム鋼板以外の金属と触れると、腐食が生じる場合があります。
ガルバリウム鋼板の外壁を留めるためにステンレス製の釘を使ったり、作業中に他の金属がついたりすると「電食」が起こる可能性もあります。
準防火地域にも使えるガルバリウム鋼板ですが、取り扱いが難しいので、施工する場合は信用のおけるハウスメーカーや工務店にお願いしましょう。
ガルバリウム鋼板の通常のメンテナンスは、雨があたらない部分を中心に、年に1~2回水で汚れを洗い流すようにすると良いでしょう。
特に潮風があたる場合は、よく潮を落としてください。
なお、こする必要はありません。
また、高圧洗浄機は勢いがあるので、金属の隙間から内部に水が入る恐れがあり、使わない方が良いでしょう。
ガルバリウム鋼板を外壁に使う時には注意が必要
普及率も高く、評判も良いガルバリウム鋼板ですが、取り扱いには注意が必要です。
特に準防火地域で使う場合には、単独では基準をクリアできないこともあります。
また、「メンテナンスフリー」「耐用年数が半永久的」は言い過ぎですが、耐火、耐震性に優れていることは確かです。
ガルバリウムの特長を知り、適した使い方、メンテナンスを行ってください。