擁壁は、山地などの斜面はもちろん、住宅などの建物にも設けられていることがあります。
ほとんどの方が、一度は目にしたことがあるといっても過言ではないこの擁壁には、どのような役割があるのでしょうか。
また、擁壁によっては水抜き穴を設けることも義務であり、どのような位置が適しているのかなども気になります。
その状態を保つことにより、建物自体を守ることにも繋がるため、水抜き穴についても詳しくご説明していきましょう。
擁壁は重要なものに位置付けられる
まず最初に、擁壁についてご説明していきましょう。
擁壁は、土留とも呼ばれ、地形を支える役割を担っており、その土地の状況などにより高さも様々です。
その役割上、強度が必要になるため、擁壁に使用する素材としては石やコンクリートなど強固なものが求められます。
擁壁がよく見られる土地としては、高低差の激しいひな壇などの造形地が挙げられます。
そのような造形地に擁壁を設けることで、安定して建物を建てることができます。
仮に擁壁がない場合、地面が崩れてしまう恐れがあり、建物ごと崩壊してしまうかもしれません。
そのため、擁壁は地味なようでいて、非常に重要なものとして位置付けられます。
また、山地などの比較的土砂が水分を含みやすいような地域でも、擁壁を目にすることが多いです。
山地は雨や雪などが降りやすく、それらの水分による土砂の崩壊を防ぐためにも、擁壁が必要と言えます。
さらに擁壁を設けた場合、場合により水抜き穴を設けることが義務付けられています。
擁壁の水抜き穴の設置義務は、高さ2m以上のものが該当しますが、実際にはそれ以下の擁壁にも設けられることもあります。
高さや範囲による擁壁の水抜き穴の規定
前項で触れた擁壁の水抜き穴ですが、設ける範囲にも規定があります。
宅地造成等規制法によると、擁壁の水抜き穴は3mの面積範囲につき最低1つを設けることが義務とされています。
新築などで新しく擁壁を設ける場合、優良な業者であれば、擁壁の数はもちろん、適した位置なども的確に判断してくれるでしょう。
また、スムーズな水分の排出が行えるようそのサイズにも規定があります。
擁壁に設ける水抜き穴は、内径が7.5cm以上あるものでなければなりません。
しかし、それはあくまでも2m以上の擁壁に対する基準であり、2mを下回る擁壁の場合、それに沿ったものでなくても問題ありません。
したがって、そのような擁壁の水抜き穴には、規定と異なるものが設けられている可能性もあります。
また、時々聞く話として、擁壁に水抜き穴が設けられていないことを理由に、土地所有者と購入者の間でトラブルに発展するケースもあります。
その場合、高さが2m以上の擁壁であれば問題になりますが、そうでない場合には水抜き穴はなくとも購入者が異論を唱えることはできません。
そのため、擁壁がある中古住宅を検討している方などは、水抜き穴の有無や擁壁自体のサイズについてもよく確認しておくことが大切です。
石の位置がずれることも?水抜き穴の有無よって想定される事態
水抜き穴が必要な擁壁にそれが設けられていない場合、どのような状況になることが予想されるのでしょうか。
地中の水分は、擁壁の水抜き穴を通って外へ排出されますが、設けられていない場合、水分が擁壁内にたまっていきます。
擁壁内の水分がたまればたまるほど、その水圧によって擁壁が押される形になります。
擁壁に使用される素材は強固なものですが、それでも擁壁内の水圧は相当なものになるため、場合によっては擁壁の損傷などに繋がります。
また、石を組んだ擁壁などの場合、石の位置が水圧によってずれてしまうことも考えられます。
つまり、建物を支えるはずの擁壁が劣化することにも繋がり、場合によっては建物の倒壊などにも繋がる可能性があります。
そのような状況を防ぐためにも、特に古い擁壁に関しては、擁壁の水抜き穴の状態に注意することが大切です。
専門業者に調査依頼を!擁壁の水抜き穴の破損や亀裂
規定に沿った水抜き穴が擁壁に設けられていたとしても、まだ安全とは言えません。
特に古い擁壁の場合、水抜き穴に不具合が見られることもあります。
ここからは、擁壁に設けられている水抜き穴のチェックポイントをご説明していきましょう。
まず挙げられるのが、水抜き穴の破損です。
一般的に、擁壁に設けられる水抜き穴の素材は塩化ビニルです。
塩化ビニルは、日光などによる長期的な影響を受けることにより、破損することがありますので注意が必要です。
また、水抜き穴に亀裂が見られる場合もあるでしょう。
水抜き穴の排出口付近の亀裂は、擁壁内の通路奥に位置する亀裂と繋がっている可能性もあります。
そのため、前項の水抜き穴の有無はもちろん、破損や亀裂の有無に関しても専門業者などに調査を依頼し、確認することが望ましいと言えます。
視線の高さに位置する擁壁の水抜き穴の注意点
地中の水分をスムーズに排出するためには、水抜き穴のつまりにも注意が必要です。
特に注意したいのが、道路など人通りが多い場所に面した擁壁です。
擁壁に設けられている水抜き穴は、ちょうど通行人の視線の高さに位置しているものもあります。
善良な通行人であれば、他家の擁壁に設けられている水抜き穴を見ても、何かをしようという発想はないでしょう。
しかし、水抜き穴の中に、いたずら目的などで空き缶などが入れられていることもゼロではありません。
それにより、水抜き穴がつまり、水分の排出機能を低下させる原因となります。
あってはならない問題ですが、特に通行人の目に触れやすい場所に擁壁の水抜き穴が設けられている場合には、何らかの対策を事前に講じることが望ましいでしょう。
擁壁の水抜き穴専用カバーは数あるトラブルを防ぐ!
擁壁に設けられた水抜き穴にいたずらされる防ぐためには、専用カバーを取り付けるという方法があります。
人の手が届かないような高い位置の水抜き穴であれば心配は少ないため、全てに専用カバーを取り付ける必要はありません。
しかし、専用カバーは水抜き穴自体の劣化を防ぐ役割もあるため、その対策のために全ての水抜き穴に取り付けるのも良いでしょう。
水抜き穴専用カバーは、素材が金属で作られているものもありますので、より強固なものを求める方は検討してみましょう。
インターネットなどでも取り扱っていますので、一度確認してみることをおすすめします。
自分で水抜き穴専用カバーを選ぶ際の注意点として、水抜き穴のサイズを測っておくようにしてください。
水抜き穴のサイズには様々なものがありますので、自分の擁壁に設けられている水抜き穴にぴったり取り付けられるものを選ぶ必要があります。
新築などで新しい擁壁を造る方は、依頼する業者に水抜き穴専用カバーの取り付けの話も相談しておくと良いですね。
また、水抜き穴専用カバーは、水垢などを防ぐためにも定期的に掃除をするよう心掛けてください。
場合によっては苔などが生え、排水を妨げる事態にもなるため注意しましょう。
擁壁は水抜き穴の状態確認も行おう
新築などで擁壁が必要になった場合、擁壁に使用する素材によって住宅の印象が変わるため、自分の好みに合ったものを選ぶと良いでしょう。
また、多くの用壁に必要不可欠とも言える水抜き穴ですが、水分の排出という役目を果たすためにその状態も良好である必要があります。
破損や亀裂、異物が挟まっていないかなど、よく確認することが望ましいでしょう。