Aさんは、面積の大きい土地を所有していて「一部だけを売却したい」という理由から、土地の測量や境界確定を行って分筆することにしました。
Bさんは、「半分だけ土地を買いたいから分筆したい」と考えています。
このように土地の売買には様々なケースがあります。
分筆費用を誰が払うのかということですが、売主・買主のどちらかだと決められているわけではありません。
費用相場や、土地の売買契約における諸経費、専門家の選び方などの情報と併せてお伝えしていきます。
分筆の費用は誰が払う?負担する理由
「土地の売買契約において分筆の費用を誰が払うか」ということですが、「売りたい」から始まった契約であれば売主、「一部だけ買いたい」と申し出たのであれば買主と考えるのが妥当です。
分筆しなければ売却が難しいのであれば、売主の都合ですから売主が払います。
もともと所有者が売るつもりがなかった土地で、「その一部を売ってください」という状況なら、分筆費用は買主負担になることが多いでしょう。
一方、「もともと売地として出されていた土地の、一部分だけを買いたい」ということになると、話し合うこともできるかもしれません。
売主としては、その土地をそっくり買ってくれると想定していたことになるので、たとえ売る意志があったとしても、分筆費用まで払ってくれる可能性は低いでしょう。
後ほどお伝えしますが、分筆には多額の費用がかかります。
とはいえ、交渉の余地が全く無いわけでもありません。
土地家屋調査士に相談したり、状況をよく確認したりすれば、交渉することもできるでしょう。
分筆の費用負担はケースバイケース!相場はどのくらい?
くり返しになりますが、分筆の費用は誰が払うかということに法的な制限はなく、多くの場合は「分筆したい」と考えている側が支払うことになります。
これは土地の売買だけでなく相続や敷地内同居(別居)などのケースでも当てはまると考えられます。
それぞれの状況により話し合いが必要になると思いますが、分筆を行うことで得をする、助かると感じる人が、費用を多く負担する流れになることがあるようです。
土地の売買のお話に戻りますと、確定測量の費用のみ売主負担とし、分筆や地積更正を買主の負担とすることも少なくありません。
分筆費用は境界確定測量が終わっているかいないかによって差があります。
もし境界確定測量が終わっているなら、一般的な200~300m²ほどの宅地の分筆などの場合には、15万~30万円が相場だと考えられます。
終わっていないなら、30万円以上は見ておいたほうがいいでしょう。
官民立ち会いがある確定測量になると80万円以上かかることもあります。
なぜこのように多額の費用がかかるのかというと、分筆は単なる書類上の手続きだけではないからです。
土地の調査、測量、確認、登記などを長期間かけて行うことになります。
登記申請の準備や登録免許税など、色々なお金がかかってきます。
土地の規模、地形などによっても違いますし、隣地所有者など関わる人間が多ければ確認業務も多くなります。
土地の売買でかかる経費!誰が払うのか
分筆に必要な費用は、上記以外に専門家(土地家屋調査士など)への報酬も含まれます。
すべての事務所で同じ料金を設定しているわけではありませんので、比較検討する必要があるかもしれません。
それでは、売買契約の際に分筆費用以外の経費について誰が払うことになるのか考えてみましょう。
●仲介手数料・売買契約書の印紙税
売主が不動産仲介業者に依頼したことで発生する手数料ですので、売主負担になります。
売買契約の際はまず半分のお金を払い、決済時に残金を払うことになるでしょう。
●登記抹消費用
売買の際に、抵当権や貸借権などを抹消する必要がある場合、それは売主の義務となっています。
抵当権の有無については登記簿謄本に記載されています。
もし住宅ローンを完済している場合でも、自然に抹消されるわけではありませんので注意が必要です。
●所有者移転登記
登録免許税と司法書士への報酬のことで、買主にメリットがあるため買主負担になるケースもありますが、売主が負担することもあります。
また、双方で折半することもあります。
●実測費用
登記簿記載の面積と実測が異なるケースがあります。
トラブルが起こらないように売主が面積を実測した場合、費用を払うのは売主です。
しかし、必要性が高く、実測することが決められている契約だとすると費用を売主と買主双方で負担することもあります。
それぞれの経費は誰が払うのか確認
引き続き、分筆以外の経費について見ていきましょう。
●不動産鑑定士に売買価格鑑定を依頼した費用
売買価格について調べようとして、売主・買主のどちらかが不動産鑑定士に鑑定依頼をすることもあります。
その費用を誰が払うのかというと、一般的には依頼した側の負担になります。
ただし、売主と買主で不動産価格の確定にいたらず、協議の結果、依頼する流れになった場合には買主負担分が発生することもあります。
●立ち退き費用
もし借地人がいた場合には立ち退き費用は売主が負担します。
●振込手数料
売主が売買代金の残金を買主から受け取る場合、銀行の振込手数料は買主負担になることが多いですが、売主が負担することもあります。
●解体費用
建物が建っていた土地でそれを解体する必要がある場合には、売却したいという意志のある売主が払うことになります。
分筆費用が安くなることはある?
ここまで、土地の売買で分筆費用や諸経費を誰が払うのかご説明してきましたが、分筆費用を節約することはできるのでしょうか。
基本的な登録免許税や諸経費については、減額することも水増しすることもできません。
しかし、稀なケースですが、その土地において隣家から境界立会を頼まれるようなことがあるなら、その測量業者に自分の土地分の測量も依頼することができるでしょう。
お隣の測量と一度にできますので、その分、値引き交渉できる可能性があります。
また、買主が土地を買った後に測量することになった場合、登記所の地積測量図の作成者欄に書かれている土地家屋調査士を確認することが役立ちます。
土地家屋調査士は以前に行った仕事のデータを残していることが多く、作業量が減る分費用がいくらか低くなることもあるようです。
こうした方法以外ですと、前項でも申し上げましたが何人かの土地家屋調査士で見積もりをとり、比較検討することをおすすめします。
信頼できる事務所・人を選んで依頼しよう
大切なことなので繰り返しますが、「分筆の費用やその他の費用を誰が払うのか」ということは、状況によって異なりますし、必要になるお金も一律ではありません。
信頼できる専門家に相談することをおすすめします。
業者や知り合いの方からの紹介で決めることも多いと思いますが、インターネットで検索して探せば見積もりを比較することができます。
すぐに見つかる事務所や、大手が必ずしも優れているとは限りません。
下記に、事務所を比較するポイントを挙げますので参考にしてください。
●豊富な知識と経験があるか
登記の経験はもちろんのこと、建築基準法、固定資産評価などの業務経験や知識も豊富で、安心してお任せできるか見極める必要があるでしょう。
依頼者の立場に立って、先のことを見据えて選択肢を提示でき、それを分かりやすく説明できる専門家に依頼することをおすすめします。
●便利な手続き方法に対応できているか
インターネットから登記のオンライン申請を行うことで、税金が減税となったことがありましたが、それに即座に対応できた事務所とそうでない事務所がありました。
最新の情報に敏感で、コンピューターに強い事務所は人件費などの費用を節約できることがあり、その分安い料金設定ができる可能性もあります。
●担当者が好感を持てる人かどうか
丁寧で親切な専門家もいれば、少し横柄だったり仕事が雑だと感じたりする専門家もいます。
人と人なので、相性もあるでしょう。
「対応が悪い」と感じたら、その後コミュニケーションをとっていくのはつらいものですから、最初に選ぶ段階で気が付くことができればベターです。
分筆費用負担は交渉できることも!専門家に相談しよう
最初にご紹介したAさんとBさんが、分筆費用を負担することになるのには理由があります。
もちろん、状況によって異なりますし、うまく交渉できれば境界確定測量の費用・分筆費用のどちらかだけ負担する流れに持っていけるかもしれません。
まずは専門家に相談し、損をしないようにしましょう。