マンションの修繕積立金の値上げは、多くの管理組合が抱える問題です。
理事会の審議のもと、計画的に設定された修繕積立金を集めているにも関わらず、費用が足りなくなってしまう原因は何なのでしょうか。
反対の声を上げる前に、まずはその原因を知り、対策を考えることが大切です。
この記事では、修繕積立金の値上げの原因から対策まで詳しくお話ししていきます。
反対も多い修繕積立金の値上げ!そもそも修繕積立金とは
マンションの修繕積立金の不足は、多くのマンションで見られる問題で、資金集めのために修繕積立金の値上げを検討する管理組合も少なくありません。
しかし、その中で反対の声を上げる住民も多く、不足した修繕積立金の徴収が難航するケースも増えています。
では、そもそも、マンションの修繕積立金とはどのようなものなのでしょうか。
修繕積立金とは、マンションの共用部分を管理維持するための管理費に対し、共用部分の修繕・保全する費用をカバーするお金です。
5年ごとに見直される長期修繕計画をもとに算出され、区分所有者から月々徴収されますが、一般的には、管理会社からの見直し案を管理組合が決議し、マンションの住民全体で計画の見直しを決めていきます。
例えば、長期修繕計画の見直しに際し、管理会社が「修繕積立金が不足している」と判断すれば、管理組合に対して修繕積立金の値上げが提案されます。
では、なぜ修繕積立金が不足する事態になってしまうのでしょうか。
次項で詳しく見ていきましょう。
修繕積立金の値上げの原因は分譲時の設定価格?
マンションの修繕積立金が値上げを余儀なくされる問題には、いくつか原因が挙げられます。
まず一つ目は、修繕積立金の分譲時当初の設定価格が低いことが考えられます。
通常、新築マンションの販売に際し、少しでも売れ行きを良くしようと修繕積立金が低く設定されることがほとんどで、例えば修繕積立金の適正価格は200円/m²とされていますが、分譲時は85円/m²などと設定することが多く見られます。
当然、このままでは修繕積立金が不足してしまうため、数年ごと徐々に値上げしてカバーすることが前提とされています。
これを「段階増額積立方式」と言い、この段階方式を前提に価格設定をしているマンションがほとんどです。
つまり、多くのマンションでは、この修繕積立金の値上げは決定されていることになり、マンション購入者も当然その説明を受けているはずです。
しかし、いざ修繕積立金の値上げとなると、入居者から反対の声が上がるため、修繕積立金の見直しは先延ばしになり、悪循環に陥るケースが後を絶ちません。
最終的には、大規模修繕の延期にまでつながってしまいます。
修繕積立金はなぜ値上げする?見通しの甘さが反対を後押し
修繕積立金値上げの原因には、長期修繕計画の見通しの甘さも挙げられます。
前述したように、修繕積立金の算定には長期修繕計画がもとになっていますが、コスト削減を図るために必要最低限の見通しでしか計画に組み込まれないケースが少なくありません。
例えば、経年で設備が古くなっていくマンションでは、それが考慮されたグレードアップ工事が必要になるため、修繕工事をする度にメンテナンスコストが膨らんでいきます。
しかし、そういった経年に対するグレードアップ工事が失念されていることも多く、結果的に修繕積立金が不足してしまうケースがあるのです。
特に、マンションが古くなるほど、長期修繕計画の甘さで修繕積立金が足りなくなるケースがよく見られます。
大規模修繕のための修繕積立金であるにも関わらず、いざその積立ができていなければ意味がなく、その計画の甘さが反対の声を後押しすることも避けられないかもしれません。
修繕積立金の値上げには滞納者の影響も
修繕積立金の値上げには、滞納者も大きく関係しています。
マンションを購入すると、区分所有者になった入居者は、月々のローン以外にも修繕積立金や管理費を支払う義務が生じます。
しかし、これらの費用を滞納する住民も存在し、実に3~4割の管理組合が滞納者を抱えていることが分かっています。
滞納者の未払いが長期化すればするほど、修繕積立金・管理費は不足していき、マンションの管理維持自体にも深刻な機能不全が生じるリスクが考えられます。
同じマンションの住民が支払い義務を怠ることで、修繕積立金が値上げされたのでは、支払い義務を果たしている区分所有者は当然納得できませんし、値上げに反対したくもなります。
このような修繕積立金の長期的な滞納を防ぐためには、管理組合が早期回収のアプローチを図るなど、管理会社に頼らずに積極的に介入していくことが望まれます。
値上げ反対で見通しが立たない!修繕積立金は住まいの安心
これまでに、マンションにおける修繕積立金の値上げの原因について詳しくご説明してきました。
前述の通り、修繕費積立金の不足にはいくつかの原因が絡んでいますが、それを防ぐためにこそ、長期修繕計画には5年ごとの見直しが推奨されています。
つまり、5年ごとの長期修繕計画で、修繕積立金の見直しがしっかりと実現できれば、資金の不足に苦しむ必要もないということです。
しかし、現実的な問題として、仮に管理会社が修繕積立金値上げの提案を出しても、管理組合から反対されてしまうため、計画的な見直しが難航するケースが多く見られています。
また、管理会社の中には、管理組合の過剰な反応を懸念し、なかなか値上げの提案に踏み出せないケースも少なくありません。
修繕積立金が不足したままであれば、大規模修繕は延期せざるを得ず、安心して暮らすための生活から遠のくばかりです。
最終的に困るのはマンションの入居者ですから、感情的な理由で反対し続けるのは賢明ではありません。
そのため、マンションの管理組合には、修繕積立金の値上げを建設的な視野で捉えていくことが求められます。
反対だけでは解決しない!管理委託費の見直しで値上げ率を下げる
修繕積立金の値上げに反対していても、いずれはマンションの大規模修繕が必要になりますし、それには資金が要ります。
そのため、現実的に不足している以上は、修繕積立金の値上げは避けられないでしょう。
ただし、できるだけ値上げ率を下げるために、他の費用を見直していく方法もあります。
例えば、管理委託費の見直しです。
マンション全体の支出を見てみると、その大部分が管理会社への管理委託費であることが分かります。
管理委託費では、事務、管理、清掃、設備など多岐に渡る業務費が集計されますが、管理会社の業務のやり方次第でその費用が大幅に上がるケースがあります。
特に、ポンプや貯水槽などの点検に際する設備管理費は、管理会社からさらに委託されて業務が行われる場合があり、その際に発生する「マージン」が管理委託費に上乗せされます。
こういった高い割合を占める部分を見直すことができれば、修繕積立金の値上げを抑えることができます。
実際、年間管理費をおよそ3割減にまで抑えることができた管理組合もありますので、ぜひ積極的な見直しをすることがおすすめです。
大規模修繕のための積立を
修繕積立金の値上げに躊躇する方も多いようですが、いざ大規模修繕となったときに困るのはマンションの住民です。
管理組合に求められることは、マンションの現状に合わせて長期修繕計画を見直し、修繕積立金を確実に備えていくことです。
まずは資金が不足している現状を受け止め、前向きな姿勢で資金計画と向き合っていきましょう。