マンションで暮らしていると、「管理費」と「修繕積立金」を支払うことになります。
快適に暮らしていくためには必要な費用だと分かってはいても、毎月となるとなかなかの出費です。
多くの人が「できれば安くしたい」と思うことでしょう。
そこで、今回は「管理費」と「修繕積立金」について、相場や使われ方など詳しくご紹介していきます。
マンションの「管理費」と「修繕積立金」の役割
集合住宅であるマンションは、そこに暮らしている方々の快適な生活と建物の維持のために、誰かが管理をしなくてはなりません。
その管理は、建物の区分所有についての「区分所有法」に基づいて、マンションの所有者が全員で構成する「管理組合」を作って行うことになります。
管理組合は、自分たちが暮らすマンションの建物や敷地、それに伴う附属施設の維持と管理を行います。
しかし、管理組合が行わなくてはならないマンションの管理業務はとても幅広く、専門性の高いものも多く含まれます。
そこで、ほとんどのマンションでは、自分たちで管理するのではなく、管理業務を専門にしている管理会社に委託することになります。
この場合、管理組合が自分たちの業務を管理会社に委託しても、マンション管理の主体は管理組合にあります。
また、マンション管理は、主にふたつに分けられ、共用スペースの清掃などを行う日常管理と、建物を長く維持するために修繕を行うメンテナンス管理です。
このとき、日常管理に使われるお金が「管理費」、メンテナンス管理に使われるお金が「修繕積立金」です。
マンションの管理費はこんなことに使われている
日常管理に掛かる「管理費」と、メンテナンス管理に掛かる「修繕積立金」は、マンションの所有者が出し合います。
これらの費用をまとめ、管理会社に渡してマンションの管理を一手に行ってもらうのです。
それでは、管理費がどんなことに使われているのか見てみましょう。
【管理費の内訳】
・水道光熱費
エントランスをはじめ、階段や廊下、外灯などの照明やエレベータを動かす電力、ゴミ置き場や共用スペースの清掃、植木などへの散水に使われる水道料などです。
・組合運営費
管理運営の主体は管理組合にあるので、組合の総会や理事会の運営費やそれにかかわる通信費などです。
また、掃除用具や電球などの備品に関する出費も含まれます。
・管理委託費
管理費や修繕積立金の出納管理、管理組合の運営支援、受付・巡回・立会業務などの管理人業務、清掃、設備点検に関する出費です。
この他にも、備品等の損害保険費、町内会費など、快適に暮らすために必要な支払いを「管理費」から払っています。
すべてが管理会社に行くわけではなく、管理会社に支払われるのは「管理委託費」のみです。
マンションの修繕積立金はこんなことに使われている
日々の管理に使われている「管理費」と違い、先々のメンテナンスのために積み立てられているのが「修繕積立金」です。
管理費を「月々の支払い」と考えると、修繕積立金は「月々の貯金」です。
マンションは、必ず経年劣化します。
これは避けることができません。
この劣化の進行を適切なメンテナンスを行うことで防ぎ、マンションの寿命を延ばすためには、修繕工事が必要となります。
例えば、外壁の補修や塗装、排水管の取り替え工事、また設備の更新などです。
日々の暮らしの中で起こる設備の修理修繕はもちろん、十数年おきに行われる大規模な修繕工事のために「修繕積立金」として、お金を積み立てておく必要があるのです。
なかでも十数年おきに行う大規模修繕工事は金額も大きく、百万円~数千万円掛かると言われています。
また、マンションの規模によっては、億単位で掛かるケースもあります。
マンションの修繕積立金で行う工事は高額!
修繕積立金が使われるマンションの工事には次のようなものがあります。
・屋根、廊下や階段などの防水
・外壁などの塗装やシーリング
・玄関扉、窓サッシ、郵便受など、建具や金物
・エントランスホールなどの共用部分の内装
・給水管、受水槽、給水ポンプなどの給水設備
・雑排水管、雨水管、汚水などの管排水設備
・ガス設備
・空調や換気設備など
他にも、エレベーター、消防設備、テレビや電話、インターネットなどの環境の整備に使われます。
このようにマンションのメンテナンスを定期的に修繕を行うことで、住みやすさだけでなく、マンション自体の資産価値を高めることにも繋がります。
例えば、玄関ホールのオートロック化、宅配ボックス設置、手すりやスロープを設置したバリアフリー化、太陽光発電や屋上緑化などのエコ対応など、資産価値を高める工事も「修繕積立金」を使って行います。
このように大掛かりで、費用が多く掛かるもののために「修繕積立金」が必要なのです。
では、このマンションの「管理費」と「修繕積立金」は、いくらくらいが適正なのでしょうか。
マンションの管理費と修繕積立金の適正金額は?
毎月支払う、「管理費」と「修繕積立金」は、足して2~3万円程度が平均的な金額と言われています。
したがって、マンションを購入した場合、ローンの他に、月々2~3万円のランニングコストが掛かるということになります。
しかし、これまでご説明してきたように、適切な管理や修繕のためにはお金が必要です。
「管理費」や「修繕積立金」が安すぎるマンションは、住み心地や資産価値に影響する場合がありますし、住んでいるうちに値上げされるケースもあるので注意しましょう。
地域や戸数によって多少変わってきますが、平均的なマンションの「管理費」の目安は、1か月あたり約148円/m²と言われています。
例えば、2LDKで60m²のマンションの「管理費」は、約8,880円となります。
このように数字をあてはめれば、自分が住んでいるマンションの「管理費」の目安がわかります。
次に「修繕積立金」の目安ですが、やはり、地域や戸数によって変わりますが、1か月あたり約200円/m²と言われています。
こちらを前述した2LDKで60m²のマンションにあてはめると、約12,000円となり、「管理費」と合わせると20,880円となります。
ここで重要なのは、「管理費」と「修繕積立金」の内訳です。
実は、一般的に「管理費」は高めに設定され、「修繕積立金」は低めに設定されていることが多いのです。
では、なぜそのようなことが起こるのでしょうか。
管理費が高く修繕積立金が低い設定はなぜ起こる?
「管理費」が高めに設定されているのは、サービスや価格による競争がないためです。
はじめに、マンションの管理は「マンションの所有者が全員で構成する管理組合を作って行う」とご説明しました。
また、「自分たちで管理するのは大変なので管理会社に任せる」ともお話ししました。
しかし、実際にはマンション購入時にはすでに管理会社が決まっていて、そこに任せるような仕組みになっているため、競争が起こらないのです。
したがって、管理費設定は管理会社に任されることになるので、「管理委託費」が必要以上に高く設定されることがあります。
そして、購入後に「管理費」の見直しを行わないために、適正価格以上の管理費を支払っている場合があるのです。
では、「修繕積立金」が低く設定されているのは、どういった理由からなのでしょうか。
それは、「管理費」を高く設定しているので、「修繕積立金」を低く設定し、ランニングコストのバランスを取るためです。
分譲時にランニングコストがあまりに高いと販売しにくいので、「管理費と修繕積立金のトータルでいくらか」という言い方をするのです。
しかし、これでは「修繕積立金」が不足してしまうので、段階的に値上げする「段階増額積立方式」が採用され、住んでから徐々に不足分を補っていくことになります。
そのため、先程もお話ししたように、ランニングコストの内訳を把握しておくことが大切です。
マンションの適正な管理費と修繕積立金を知ることが大切
「管理費」と「修繕積立金」は、マンションでの快適な暮らしには必要不可欠なお金です。
しかし、その金額が適正であるかどうかについて、気にする方はあまりいないかもしれません。
最初は安くても、徐々に上がっていってしまったり、大規模修繕の度に多額な出費になるのは、かえって苦しい状況を生む可能性があります。
購入時は先々のランニングコストも考えましょう。