準防火地域に家を建築する場合、その土地の性質上、一定の耐火性能が求められます。
窓についても防火性能があるものを採用することが基本ですが、そのような窓は一般的に高価です。
少しでも経費削減するために窓を防火性能のものではなく通常のものにし、その代わりにシャッターをつけるというのは果たして大丈夫なのでしょうか。
ここでは、準防火地域で家を建築する際の疑問についてお答えしていきます。
準防火地域の定義とは?
これから家を建てる土地が「防火地域」や「準防火地域」である場合、その土地柄、使う資材などに制限があります。
そもそも、防火地域や準防火地域の定義をご存知でしょうか。
日本の建物には、火災が起こった際に近隣に延焼することを防ぐ目的である一定の耐火性が求められます。
近隣との距離が近い住宅密集地で火災が起こると、建物だけではなく人の命も脅かされるためです。
建物の密集具合などによって、それぞれ「防火地域」「準防火地域」「法22条区域」「無指定区域」と4つの地域に分けられます。
この4つの中でも防火地域が一番規制が厳しく、ターミナル駅のまわりなどの繁華街が当てはまります。
防火地域の次に規制が厳しいのが、この記事でお話しする準防火地域です。
準防火地域は、防火地域のまわりの土地となります。
しかし、家を建築する土地が防火地域・準防火地域のどちらにもまたがっている場合は、防火地域の規制が適用されることになりますので注意が必要です。
準防火地域に家を建築する場合は、その大きさによって耐火建築物か準耐火建築物にする必要があります。
次の項では、この「耐火建築物」についてもう少し掘り下げてみましょう。
防火性能のある窓の代わりにシャッターをつけても大丈夫なのかについては、のちほど解説していきます。
準防火地域では必須!耐火建築物とは?
準防火地域に家を建築する場合、その規模によって耐火建築物か準耐火建築物にする必要があります。
耐火建築物とは、鉄筋コンクリート造であったり耐火被覆をした鉄骨造の建築物のことです。
耐火建築物では、玄関ドアや窓、換気扇なども防火性能があるものにする必要があります。
例えば、玄関ドアであれば防火認定を受けたものや鉄扉、窓であれば耐熱ガラスや網入りガラス、換気扇はダンパー入り換気扇にするなどです。
外壁の開口部である玄関ドア・窓・換気扇はかなり重要で、万が一の火災のときには防火設備が整っているものであれば一定の時間、延焼を防ぐことができるのです。
つまり、耐火建築物とは万が一の火災のときにも近隣に延焼しにくい建築物のことを言います。
耐火建築物では、窓を耐熱ガラスや網入りガラスなどの防火性能があるものにする必要がありますが、そのような窓は一般的に高価です。
網入りガラス窓を普通の窓にして、シャッターをつけるというのはどうなのでしょうか。
次の項でみて参りましょう。
準防火地域では防火性能のない窓にシャッターを付ければOK?
準防火地域に家を建築する場合、耐火建築物や準耐火建築物にする必要があるとお分かりいただけたと思います。
しかし、経費削減のためや網入りガラスの網の部分が嫌だという方は、網入りガラスや耐熱ガラスではなく、普通の窓ガラスがいいというケースもあることでしょう。
ちなみに、網入りガラスはガラスの中にワイヤーが入っているため温度差が生じ、熱割れしやすいと言われています。
網入りガラスは中心あたりが日射しによって温められて膨張し、ガラスの端の部分は日射しが当たらないことから膨張しません。
そのため、網入りガラス全体に歪みが生じ、ヒビが入ってしまうのです。
これが熱割れです。
熱割れの可能性があることから、網入りガラス窓を採用したくないという方も多いかもしれませんね。
網入りガラスや耐熱ガラスではなく、普通の窓ガラスにしたい場合はシャッターを付ければ大丈夫です。
ただし、その場合は防火用シャッターにする必要があります。
しかし、シャッターをつけることでメリットだけではなくデメリットがあるのも事実です。
それはどのようなことなのでしょうか。
防火窓ではなくシャッターを付けることのメリット・デメリットとは?
準防火地域に建築する家の窓は、防火窓にするかシャッターを付ける必要があります。
しかし、シャッターを付けるにはメリットがある反面、デメリットもあります。
メリットとしては、火災の延焼を防ぐだけではなく、台風などの強風によりものが飛んできて窓ガラスが破損することを防ぐことができるということです。
さらに、暑い日差しを遮ったり、防音性を高めることができます。
デメリットは、日中もシャッターを締め切っていることで「この家は不在」と思われ、空き巣の被害に遭ってしまう可能性があるということです。
シャッターを締め切っていれば窓からの不審者の侵入はなかなか難しいので、ある意味防犯性は高まります。
しかし、不在だと強調してしまうことにもなるので、その際には玄関ドアなどの防犯性を高める必要が出てきます。
このように、防火ガラスにしない代わりにシャッターを付けることでそれぞれメリット・デメリットがありますので、よく検討するようにしましょう。
窓にシャッターも網入りガラスも避けたい!その場合は耐熱ガラス
準防火地域に家を建築する際「シャッターは防犯上心配だし、網入りガラスの窓は見た目がちょっと…」という方は、耐熱ガラスを採用するということになるかと思います。
そこで、一般的に高価と言われる防火性能がある耐熱ガラスにはどのような種類があるのか、ここでご紹介しましょう。
●低熱膨張結晶化ガラス
熱が加わっても膨張しにくい性質のガラスです。
●耐熱強化ガラス
ガラス表面が熱処理されていることで特殊な膜ができ、その膜が熱からガラスを守ります。
●積層ガラス
熱に強くするために普通のガラスと特殊樹脂を重ねて作られているガラスです。
これらのような耐熱ガラスは高価ではあるものの、防火性能だけではなく、断熱性にも優れているものが多いです。
また、普通のガラスより割れにくい性質ですので、その点からしても安心できる窓ガラスと言えるでしょう。
窓ガラスにコストはかかってしまいますが、家自体の満足度を上げるためには検討すべき箇所かもしれませんね。
準防火地域に建築予定の方必見!建築基準法の改正で何が変わる?
2018年6月に「建築基準法の一部を改正する法律(平成30年法律第67号)」が公布され、これにより建築基準法が改正されることになりました。
準防火地域に関係する内容として、「防火・準防火地域における延焼防止性能の高い建築物の性能を総合的に評価する」という改正があります。
これは例えば、建物の外壁や窓の防火性能をさらに高め、安全性が確保できるということであれば、建物の中の柱などに木材を使っていいということです。
これまで、準防火地域に家を建築する際、家の中の木材の柱には石膏ボードなどで覆う必要がありました。
しかし、木材そのままで使用していいということになりそうなのです。
つまり、家自体の意匠性が高まるということになります。
前提として、窓などには防火性能を高める必要があるので防火ガラスやシャッターを採用しなくてはなりませんが、内装の自由度が高まるのは嬉しいニュースですよね。
ただし、また法改正がされることも考えられるので、これから建築予定のある方は事前によく確認しておくことをおすすめします。
準防火地域の家の窓には防火ガラスかシャッター!
準防火地域に家を建築するのであれば、窓を防火性能のある防火ガラスにするか、もしくはシャッターを付ける必要があります。
防火ガラスのうち、網入りガラスが見た目や熱割れの観点から避けたいということであれば、高価ではあるものの耐熱ガラスをおすすめします。
また、防火ガラスの代わりにシャッターを付けても問題ありませんが、防犯上心配な面もあります。
いずれにせよ、建築基準法に則って納得のいく結果となるように検討してみてくださいね。