土地や建物などの不動産を購入すると、登記を行います。
登記を行う際には手間や時間、費用がかかりますので、どうしてもしなくてはならないのか疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
そもそも、登記を行うのは所有権を「公示」するためです。
また、登記には、必ずしなくてはならないものとそうではないものとで分かれます。
今回は、登記を行う理由や、法律上登記が必要なものとそうでないものとの違い、さらには土地の借地権など、不動産登記について考えていきます。
登記は必ず必要?
一般的に、不動産を購入すると登記を行います。
登記を行う際には手間や時間がかかるのもそうですが、「登録免許税」を納めなくてはならないとの思いから、省略したいとお考えの方もいらっしゃることでしょう。
そもそも、どうして登記が必要なのでしょうか。
登記を行うと、当該不動産の所有権を公示できます。
つまり、簡単に申し上げると、自分のものだと主張できるということです。
不動産売買を行う場合、登記がなされていないと円滑に取引を進めることができません。
また、トラブルになった際に、物理的に自分の不動産と主張することができないのです。
そのため、不動産を取得した際には登記を行います。
ただし、不動産登記簿の内容は二つに分かれており、一方は法律上登記を行う義務が発生し、もう一方は法律上登記を行う義務はありません。
この二つ登記の違いはどういったことなのでしょうか。
次項でみてまいりましょう。
不動産登記簿の表題部と権利部の違いとは?
不動産登記簿は、不動産ごとに「表題部」と「権利部」に分かれています。
この二つの違いは何なのでしょうか。
表題部とは、当該不動産の現況を示すものになります。
例えば、土地であればその所在地や地目など、建物であれば所在地に加え家屋番号や建物の構造、床面積などがそうです。
権利部は、当該不動産の権利関係を示すものとなります。
権利部の「甲区」には不動産の所有権について、「乙区」には抵当権などの所有権以外に関することについて記載されています。
この二つのうち、表題部の登記は法律上義務付けられているのです。
土地や建物には固定資産税や都市計画税が課税されます。
それらの税額を計算するうえで、国は不動産の現況について把握しておく必要があるため、表題部については登記が義務付けられているのです。
ちなみに、不動産を取得してから1か月以内に登記を行わないと、10万円以下の過料が課せられる場合がありますのでご注意ください。
また、表題部の登記は義務付けられていることから、登録免許税は課税対象外となります。
権利部につきましては、登記の義務はありません。
権利部はあくまでも、自分の所有権を示すものとして登記するためのものだからです。
表題部の登記とは異なり、登録免許税は課税されます。
しかし、登録免許税もかかるし義務付けられていないからと言って、登記しないままでいるのはおすすめできません。
先述しましたように、何らかのトラブルが起きたときなどに、物理的に自分の不動産だと主張するためのものですから、登記は行っておくことをおすすめします。
所有権保存登記と所有権移転登記の違いは?
不動産登記簿の表題部と権利部の違いが分かったところで、次は、「所有権保存登記」と「所有権移転登記」の違いについて考えていきます。
所有権保存登記も所有権移転登記も、さきほど申し上げた権利部に関する登記になります。
まず、所有権保存登記とは、当該不動産に対して初めて所有権の登記を行うことを言います。
所有権移転登記は、すでに登記済みである当該不動産の所有権を移転するための登記のことをいいます。
例えば、新築一戸建てを建築した場合は所有権保存登記、中古一戸建てを購入した場合は所有権移転登記となります。
ちなみに、建売住宅ですでに不動産会社が所有権保存登記を行っている場合は、所有権移転登記を行うことになります。
ここで、「自分が所有している不動産が他者に登記されてしまうとどうなるのだろうか」という疑問が生じる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
不動産の所有権を持っていない第三者が登記を行うことについて、次項でご説明いたします。
所有権を持たない第三者が勝手に登記を行うとどうなる?
自分が所有している不動産を、第三者が勝手に登記を行うとどうなるのでしょうか。
例を挙げて考えてみましょう。
Aという人物が所有権を有しているある不動産を、Aから実際に購入していない人物Bが仮に所有権移転登記を行なったとします。
この場合、両者には権利移転の事実はないわけですから、Bが勝手に所有権移転登記を行ったとしても、Bが当該不動産の所有者になることはありません。
さらに、Bが不動産の所有者と信用して当該不動産を購入してしまったCがいたとしたらどうなるのでしょう。
こちらも、Cが所有権を得ることはできません。
つまり、登記を行うと不動産の所有権を主張することができるものの、そこに実際の権利関係がもたらされていないと何の意味も持たないということになるのです。
しかし、そもそも登記をきちんと行っていないことでこのようなトラブルに巻き込まれる可能性があるので、義務ではない登記も行うことをおすすめいたします。
次項では、土地を所有する権利「所有権」と「借地権」の違いについて見てまいります。
所有権と借地権の違いは?
土地を使用する権利のうち、「所有権」と「借地権」があります。
この二つの違いはご存知でしょうか。
所有権とは、当該土地のすべてを所有できる権利のことを言います。
その土地に建物を建築したり売却するのも自由ですが、固定資産税や都市計画税の支払い義務が発生します。
借地権とは、土地の所有権を持っている土地所有者から当該土地を借りて、そこに建物を建築できる権利のことを言います。
あくまでも借りているので、建物の建て直し等の際はその都度土地所有者の許可を得なければなりません。
また、その際には「承諾料」を土地所有者に支払うことになっています。
(地震等の自然災害が原因での建て直しは、その限りではありません。)
しかし、固定資産税や都市計画税の支払い義務は生じません。
土地の所有権に関する登記は前述のとおりですが、借地権に関する登記はどのように行われるのでしょうか。
借地権に関する登記はどう行う?
土地を借りて建物を建築する場合も登記は行います。
この場合、二つの方法が考えられます。
その二つの方法の違いは、登記の義務があるかないかであるとも言えます。
まず一つ目は、当該土地の登記簿の権利部(所有権以外に関することの記載がある乙区)に登記を行うという方法です。
しかし、この登記は土地所有者と土地を借りている双方で行わなくてはならず、そもそも登記の義務もないので、所有者が同意して行ってくれるという保証がありません。
二つ目の方法は、土地を借りて建築した建物の登記を行うというものです。
建物表題登記は義務ですから、これを行うことで、借地権に関する登記に代わるものとして認められています。
つまり、土地所有者が借地権を保有する方に何も言わず第三者に土地の売却を行ったとしても、土地を借りている方は堂々と借地権を主張することができるということになります。
登記は必ず行おう
表題部の登記は義務ですから、必ず行わなくてはなりません。
権利部の登記は義務ではないと言っても、それを怠ることで、トラブルになってしまうこともあり得ます。
登記を行うことで所有権の公示ができます。
そのため、時間や手間、費用などがかかってしまうものの、不動産を取得した際には登記を行うことをおすすめします。