不動産に何かしらの変更があった時、不動産登記の手続きを取る必要があります。
この登記の申請期間は、不動産に変更があった日から2週間以内と義務付けられており、この期間内に申請書や委任状などの書類を集めて法務局に提出する必要があります。
今回は、不動産登記に必要な書類の中でも、「委任状」に焦点を当てて、その役割や作成方法、また使用する印鑑についてもくわしくお話ししていきましょう。
不動産登記を行う重要性とは?
まずは、不動産登記を行うことの重要性についてお話ししていきます。
現在、所持している土地や家屋などの不動産は、私たちの大切な財産です。
その不動産の所在や面積、所有者の名前や住所などの、事細かな状況を「登記簿」という公的な帳簿に記帳することを登記と呼びます。
登記簿は各市町村の法務局で管理されており、一般公開されていることから、どの不動産を誰が所持しているのかなど、いつでも確認が取れるようになっています。
これは、どのような不動産の取引においても公平で円滑に取引ができる役割を果たすためです。
登記簿には、「土地登記簿」と「建物登記簿」があり、土地と建物で登記簿が異なっています。
また、登記簿は「表題部」「甲区」「乙区」というように分かれており、その中の表題部には「表示に関する登記」として登記内容を記載します。
甲区・乙区には氏名や住所などを記載し、「権利に関する登記」を行います。
このように、不動産登記をすることで、それを誰が所持しているものなのか明確にすることができるのです。
それにより、第三者による不動産の勝手な売買などを防ぐことができます。
そして不動産登記には、委任状や印鑑証明書などのさまざまな書類が必要となります。
次項からは、その中の委任状についてくわしく見ていきましょう。
不動産登記に委任状が必要な理由とは?
不動産登記の申請ですが、不動産に変更があった時、誰でも申請することが可能です。
しかし、不動産登記の手続きは非常に複雑で、時間や手間がかかるだけでなく、専門的な知識を必要とすることが多いです。
図面などを作成することもあり、素人が簡単に行える手続きではありません。
そのため、「司法書士」などの専門家に依頼し、不動産登記の代理申請の手続きをしてもらうことが多いです。
この時必要となるのが委任状です。
委任状には署名や印鑑を押す必要がありますが、この委任状があることで、依頼者の意思のもとの不動産登記である証明となります。
代理人申請での不動産登記は、登記にかかる費用以外に、司法書士に報酬を支払う必要があるため、注意が必要です。
印鑑が必要!不動産登記に必要な委任状の作成方法
不動産登記を依頼した司法書士が代理申請する場合、委任状が必要となります。
しかし、実は不動産登記において、委任状には決まった形式というものがありません。
そのため、依頼した司法書士が用意した委任状の書式に記入していくケースがほとんどです。
また、以下で一般的に記載されることが多い委任状の記載事項をご紹介します。
【一般的な委任状の記載内容】
①依頼者の名前・住所・署名・捺印
署名は直筆で記入する必要があります。
また、住民票と住所が一致している必要があります。
②代理人の名前・住所
こちらも住所などが住民票と一致している必要があります。
③添付書類の内容
戸籍謄本や住民票、遺産分割協議書などになります。
④登記申請の内容・目的・原因
不動産登記を申請する理由になります。
⑤委任した日
委任状を作成した日付です。
以上が不動産登記で使用する一般的な委任状の記載内容となります。
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ちなみに、法務局のホームページには委任状のひな型があり、無料でダウンロードができるようになっています。
必要な場合は誰でも利用することが可能ですので、一度確認してみるのも良いでしょう。
次項では、委任状に使用する印鑑についてくわしくご説明していきましょう。
委任状に捺印する印鑑は実印?認印?
述べた通り、不動産登記を司法書士に代理申請の依頼すると、委任状が必要となります。
また、委任状には捺印が必要になると先ほどお話ししましたが、この時使用する印鑑は「実印」と「認印」どちらになるのでしょうか。
まず実印とは、各自治体で正式に印鑑登録されている印鑑になり、印鑑証明書が発行されるものです。
基本的に登録できる印鑑は1つとされており、自分を証明するための大事な印鑑と言えるでしょう。
一方の認印は、印鑑登録をしていない印鑑のことを言います。
不動産登記では、「実印を必要とするケース」と「認印で対応できるケース」があります。
実印を必要とする不動産登記は、不動産の所有権を失ったり、担保をつられる場合などの、こちら側が不利な立場に置かれる状況が多いです。
そこで実印を押すことで、不当な手続きではなく、自分の意思で登記の申請をしている証明として使用するのです。
委任状の印鑑!実印・認印が必要なケース
前項で、委任状の印鑑は実印が必要なケースと、認印で対応できるケースがあるとお話ししました。
ここではさまざまな不動産登記を、そのケース別に見ていきましょう。
●不動産の売買・贈与
不動産の売買や贈与の場合、登記義務者(売主・贈与者)から登記権利者(買主・受贈者)に登記名義を変更することとなります。
登記義務者については、何か手違いがあると大きな不利益を被るため、厳格な確認のためにも「実印」を必要とします。
逆に、登記権利者は利益を得るのみとなるため、「認印」で問題ないとされています。
●不動産の相続
不動産を所持する人が亡くなり、相続人が複数いる場合もあるでしょう。
この場合、遺言書がなければ相続配分することが一般的ですが、捺印の際には全員実印が必要となります。
●不動産に抵当権などの担保をつける
住宅ローンなどで、担保をつける際も所有者の実印が必要となります。
また、実印を必要とする際は印鑑証明書の提出も同時に求められることが多いため、事前に用意しておきましょう。
さまざまな不動産登記の必要書類を知ろう
不動産登記にはさまざまな種類がありますが、それぞれ必要書類が異なります。
ここではケース別に必要となる書類をご紹介していきます。
【所有権保存登記】
・住民票
・住宅用家屋証明書
・委任状(認印)
【売買・贈与による所有者移転登記】
●売主
・権利証(登記済証など)
・印鑑証明書
・登記原因証明情報(売買契約書など)
・委任状(実印)
●買主
・住民票
・住宅家屋証明書(減税処置のため)
・委任状(認印)
【相続による所有権移転登記】
・死亡した人の戸籍謄本
・死亡した人の戸籍の附票または除籍
・遺産分割協議書
・相続人の戸籍謄本(全員)
・相続人の印鑑証明書(全員)
・相続人の住民票
・ある場合は遺言書
・委任状(認印)
上記は、一般的に必要となる書類になります。
場合によっては変わることもあるため、参考程度に頭に入れておきましょう。
不動産登記では委任状を必要とするケースが多い
不動産登記は専門的な知識を必要とするため、一般の方が書類を集めて申請するのは骨が折れます。
費用はかかりますが、司法書士などの専門家に依頼し、代理申請してもらうことをおすすめします。
その際は実印を用意し、委任状を作成しましょう。
また、印鑑登録がまだ済んでいない方は各自治体で登録を済ませてください。
実印は不動産登記や大事な書類に捺印する機会が多いため、三文判のような印鑑は避けて登録するようにしましょう。