冬に壊れて困る設備のひとつが「給湯器」です。
お湯が使えない状態では、「お風呂にも入れない」「お湯も沸かせない」という状況になりますので、故障個所を早く修理して、元通りの状態にしたいですよね。
ここでは、賃貸物件で給湯器が故障した場合の対処方法や責任の所在などを検証します。
賃貸物件で設備が故障!費用は誰が負担する?
そもそも、賃貸物件で給湯器などの設備が故障したとき、大家さん、借主のどちらが負担するものなのでしょうか?
基本的な考え方は、設備が経年劣化で壊れた場合は大家さんが負担します。
借主が、故意過失で汚損、破損させた場合は借主が負担するようになっています。
ただし、まれに契約書に特約として、「修理義務は借主が負担する」などのような文言が書かれていることもあります。
しかし、民法606条には「賃貸人は、賃貸物の使用及び収益に必要な修繕をする義務を負う」とあります。
賃貸物件で家賃をもらって収入を得ているのであれば、大家さんが使用に必要な修繕の義務を負うことになっておりますので、修理義務のすべてを借主に負わせる特約文章は無理があると言えます。
ですが、すべての設備について修理負担義務を負うのかと言うと、そうではありません。
例えば、備え付けの電球が切れたり襖(ふすま)がめくれてきたりした場合などの修理に関しては、一部修理義務を免除しています。
わざわざ交換するための経済的な費用や手間を省いて、借主が修繕をしていいように定めることができます。
ただし、あくまでも生活に差し障りがない範囲の「小規模修繕義務の免除」ですので、借主の生活に支障をきたすような修繕の必要性がある場合は、大家さんが修理義務を負います。
賃貸物件で給湯器が作動しない!どこに連絡する?
では、自分の住んでいる賃貸物件でお湯が出なかったら、どう対処したらいいでしょうか?
いきなりガス会社に連絡して修理の手配を行うのは、お勧めできません。
まずは、大家さんか管理会社へ連絡して下さい。
給湯器は設備にあたり、所有権は大家さんにあります。
例えば、物をぶつけて給湯器を故障させたのであれば、借主が賠償責任を負うことになります。
しかし、普通に使用をしていてお湯が出なくなった場合など、給湯器に不具合が発生した場合には大家さんの負担で修理をしてもらうことになります。
人の物が壊れたからと言って、勝手に修理をしたり新品に替えたりすることはしないでしょう。
自分の判断で修理交換などを行ったときには、後々大家さんとの間でトラブルに発展するケースも考えられます。
そのため、まず、給湯器の不具合を感じたら管理会社か大家さんへ連絡をしてください。
その際に、
・症状(お湯が出ない、お風呂の追い炊きができないなど)
・給湯器のメーカー
・不具合を感じた日にち
・給湯器のタイプ(追い炊き式や一般的な給湯器、バランス釜)
を把握した上で連絡すると、その後の対処がスムーズになります。
お湯が出なくなることは、冬場になれば大きく生活に支障をきたしますので素早い対応が必要です。
賃貸物件での給湯器の故障の原因は?
給湯器の故障の原因として、大きく4つの原因が考えられます。
1.老朽化
給湯器の耐用年数は、およそ8年~10年を目安としています。
10年超経過していたらほぼ交換されます。
これは、修理しても別の個所が壊れる可能性が高く、結局交換した方が安くなるからです。
2.使いすぎ
普通に賃貸物件で家庭用に使用していたら、まず、使いすぎという現象は現れません。
しかし、業務用で使用していたり、賃貸物件に想定以上の人数で使用していたりすれば過度の利用で壊れる可能性は高くなります。
3.凍結
特に雪が降りやすい地域で起こる症状ですが、配管が凍結し配管が破損して故障する場合があります。
給湯器を使わない時でも、少し水を出して配管内の水を循環させ続けたりすることで、この現象を回避できる場合もあります。
4.雨が入り込む
給湯器は普通、雨が当たらないような場所に設置されますが、横なぐりの雨や台風などの場合は給湯器に雨が入り込み、点火しにくくなることがあります。
このようなケースが、故障の原因として考えられます。
給湯器の故障と間違えられがちなケース
例えば、お風呂で追い炊きが使えなくなったとします。
ここで給湯器の故障と結論付ける前に、「キッチンでお湯が出るのか」「洗面所でお湯が出るのか」を確かめましょう。
もしも、他の場所でお湯が出るのであれば、給湯器の故障ではなく追い炊き機能の故障の可能性があります。
仮に、全部の個所から全くお湯が出なくなったとしましょう。
それでも「給湯器の故障」と判断するのは早いです。
次は、ガスコンロの火がつくかどうかを確認しましょう。
併せてガスコンロの火もつかなくなっていたら、給湯器ではなくガスの供給が遮断されている可能性があるからです。
煮込み料理などを作る際は長時間煮込むことになりますが、賃貸物件では、ある一定の時間を経過すると勝手にガスが遮断されます。
この場合は給湯器の故障ではないので、ガスメーターの復帰ボタンで正常に戻ります。
このように、給湯器が故障したと混同するようなケースがいくつかありますので、お湯が出なくなった場合は
1.すべての個所からお湯が出ないのか
2.ガスコンロの火はつくか
を先に確認した方が良いでしょう。
給湯器の故障で大家さんが訴えられる?
以前、管理会社に勤務していた時に起こった、給湯器の故障が原因で大家さんが訴えられそうになった事例をご紹介します。
金曜日の夜中、「賃貸物件でお湯が出なくなった」との連絡がありました。
すぐに修理できる業者を手配しましたが、「交換しないとだめだ」という結論になりました。
しかし、交換は4日後の月曜日しかメーカーが動かないとの話になり、仕方なくお湯が使えない間、銭湯に行ってもらうこと、その費用は大家さんが負担することで理解してもらおうと交渉しました。
しかし、借主が激怒し、すぐに交換できないなら、
・銭湯に行くまでの交通費
・月曜日に交換する際立ち会うので仕事ができないから休業補償
・お湯が使えないために料理ができないとの理由で、4日分の食費
・生活に支障をきたしたということで、1ヶ月分の家賃の免除
を請求されました。
「これが飲まれなかったら訴える」とのお話でした。
このような場合、どこまで大家さんは借主の要望を認めないといけないのでしょうか?
結論としては、基本的に応じる必要はありません。
休日に交換が手配できないことはやむを得ない事情ですので、大家さん側に大きな過失はありません。
もし訴えられたとしても、一定の諸事情は当然考慮されます。
しかも、「銭湯代は負担する」との話もしているのですから、これ以上の過失を求められる可能性は低いです。
過度な要求に応じる必要は、全くないと言えます。
ただし、入居者は生活に困っていますので、最大限誠意を持って早く交換することが望ましいのは確かです。
給湯器の故障が原因で家賃の値下げ交渉はできるのか
前項でご紹介した事例の他にも、「給湯器がしばらく使えなかったから今後の家賃を減額してほしい」との話を借主から受けたこともあります。
もちろん、明らかに老朽化しているにもかかわらず、交換や修理の義務を怠り、賃貸物件の給湯器が通常使用できるようになるまで相当の期間を要したとすれば、賃料減額請求が認められることもあるかもしれません。
しかし、故障の連絡を受けてから早急に手配を行ったのであれば、話は別です。
たまたま休日が重なったために、交換や修理に日数がかかったのであれば、大家さんを責めても仕方がないからです。
そのため、「給湯器が使えない期間があった」というだけでは、賃料の減額請求は通らないでしょう。
ですがもしも、給湯器の故障が発生し修理の必要があった場合には、基本的に設備修理で大家さん側に賠償責任がかかってきます。
速やかに、修理や交換を行い、入居者に過度の負担を与えないことが重要です。
給湯器の修理は大家さんが早急に行うことで後々のトラブルを防ぐ
賃貸物件で給湯器が故障した場合は、大家さんが賠償責任を負うのが一般的です。
速やかに手配を行い、後々大きなクレームにならないように大家側は努力する必要があります。
快適な住環境を提供することは大家さんの大きな役割の一つと言えます。