世間にはDIYが広く浸透し、日曜大工で小規模なリフォームを楽しむ方も多くなってきました。
しかし、自己流のDIYによって家が欠陥住宅へと変貌してしまう恐れもあります。
そうならないためにも作業を始める前に正しい知識を身につけることが大切です。
今回は必要な工具や作業中の注意点など、モルタル外壁に穴をあける上で知っておきたい知識をご紹介します。
モルタル外壁とは?
まずは穴をあける対象であるモルタル外壁についてご紹介します。
モルタルとは砂、水、セメントから作られた建築材料です。
1980年頃に建物の外壁材としてよく使用されていました。
しかし、現在は外壁材としてモルタルが使用されることは減りました。
モルタル外壁の施工にはまとまった日数が必要で、それに伴って多額の人件費もかかります。
また、経年劣化によりひび割れや剥がれなども起こりやすいため、定期的なメンテナンスが必要となります。
これらの理由により、現在はアスファルトなどの下地の上に壁紙を貼り付けるサイディングの外壁が主流となっています。
サイディングの外壁は貼り付けるだけなので施工日数が少なく済み、モルタル外壁ほどの人件費はかかりません。
また、モルタル外壁のように乾燥させる必要もないため、施工後すぐに触っても問題ありません。
しかし、モルタル外壁にもデザイン性が自由であるというメリットがあります。
モルタル外壁は職人が手作業で壁にモルタルを塗り、乾燥させることによって形作られます。
サイディングの壁は模様が描かれた壁紙を貼り付けることによって形作られるため、壁の模様は職人の技術に影響されることはありません。
しかし、モルタル外壁は職人がコテを使って仕上げるため、表面に波や幾何学などの模様を自由につけることができます。
家のモルタル外壁に穴をあけても良いの?
ほとんどの賃貸物件ではモルタル外壁への穴あけが禁止されています。
禁止されているにも関わらず穴をあけると退去時に莫大な修繕費を払うことになるおそれがあるため、不用意に穴をあけるべきではありません。
まずは賃貸物件の管理会社に問い合わせて穴をあけて良いかどうか確認をとりましょう。
エアコンや洗濯機の設置などの特別な事情があれば許可されることもあります。
一方、持ち家なら基本的に穴をあけても問題はありません。
ただし、壁の内部の配管や配線を傷つけないように注意しましょう。
壁の内部に水が溜まり雨漏りが発生したり、配線が断裂して停電を引き起こすおそれがあります。
また、壁の内部の鉄筋も切断してしまわないように気をつけましょう。
建築基準法が定める構造強度を満たすために、建物の外壁の内部にはたくさんの鉄筋が入っています。
鉄筋を誤って切断してしまうと建物の構造強度を下げることになります。
最悪の場合、建築基準法が定める構造強度下回り、欠陥住宅となってしまうことも考えられます。
これらのトラブルを避けるためには、穴をあける前に壁の内部構造を把握しておく必要があります。
穴をあけても問題がないという確証が得られるまでは、穴あけを開始しないようにしましょう。
モルタル外壁に穴をあけるのに必要な工具は?
モルタル外壁に穴をあける際、インパクトドライバーを使用するのはおすすめできません。
インパクトドライバーは、ある程度の負荷がかかると回転方向に打撃を加えるという特徴を持ちます。
これはビスを締めたり緩めたりするときに大変役に立つ仕様ですが、穴をあけながら打撃を加えると壁が割れてしまうリスクが高まります。
モルタル壁に穴をあけるには、振動ドリルかハンマードリルがおすすめです。
振動ドリルとはドリルの回転だけでなく、垂直方向へ振動を与える機能が備わった電気工具です。
振動を与えることによりドリルビットで対象物を削りながら進むため、穴のふちが割れることも少なく、綺麗に穴をあけることができます。
一方で、ハンマードリルとはドリルの回転と同時に、ハンマーで叩くような打撃を与える機能が備わった電気工具です。
削岩機のように対象物に強い打撃を与えることにより、砕きながら硬い材質に穴をあけることができます。
直径10mm程度の穴をあけるなら振動ドリル、直径20~100mmならハンマードリルと考えてください。
ハンマードリルは砕いた破片が飛び散るほど強力な工具です。
使用には危険が伴うため、業者に依頼するなどの選択肢も考慮に入れてよく検討しましょう。
モルタル外壁に穴をあけるときの注意点
モルタル外壁に穴をあけるときの注意点の1つめは粉塵です。
モルタル外壁に穴をあけるとなると、モルタルの粉塵が発生することは避けられません。
モルタルの粉塵を吸い込むと、肺機能に悪影響を及ぼします。
短時間ならば大事に至ることはないでしょう。
しかし、作業中は念のためマスクを装着するなどして、できるだけ粉塵を吸い込まないようにしましょう。
ハンマードリルで穴をあける場合、砕けたモルタル壁の破片が飛んでくることもあります。
破片が目に入ると失明するおそれがあるため、作業中は防護メガネの装着を推奨します。
近隣にも粉塵の被害が及ばないように対策が必要です。
地面にブルーシートを敷くなどして作業完了後に回収できるように工夫しましょう。
2つめの注意点は騒音です。
電動工具を使って外壁に穴をあけるとなると、どうしても騒音が発生してしまいます。
ご近所トラブルに発展しないためにも騒音対策が必要です。
まず気をつけたいのが作業する時間帯です。
早朝と夜の作業は避け、作業が予想以上に長引いたとしても日が暮れたら中断するようにしましょう。
また、静音タイプの電動工具を使うことによっても騒音を抑えられます。
静音タイプは高額なものが多いため購入ハードルが高いです。
しかし、格安で工具のレンタルを受け付けている業者も存在します。
あける穴の数が多い場合は検討してみてはいかがでしょうか。
モルタル外壁に間違えて穴をあけてしまってしまったら?
必要のない箇所にまで穴をあけてしまったら、穴をそのまま放置せずに必ず修繕するようにしましょう。
穴があいたまま放っておくと雨水が浸入し、雨漏りや壁の腐敗を早める原因となります。
壁の腐敗が進んで、壁全体を塗り直すことになると莫大な費用がかかります。
また、モルタルは外壁材の中でも特にひび割れやすく、穴をきっかけにひび割れが発生する可能性もあります。
大きなトラブルに発展する前に補修するようにしましょう。
補修するにはセメントを利用しましょう。
コーキングやパテで穴を埋めることによって雨漏りを防ぐこともできますが、セメントで補修するほどの強度は期待できないためおすすめはできません。
セメントはホームセンターやネットショップに行けば、簡単に見つけられます。
購入したら説明書きに従って水を加えて液状にして穴に流し込み、乾燥すれば補修完了です。
速乾性のセメントを使用すれば、乾かす時間が短く済みます。
またモルタル外壁のひび割れ、下地からの剥がれ・浮きを発見した場合は勝手に表面を塗りなおすのはやめましょう。
下地が腐敗しているなら下地を張り替える必要があります。
将来大きな問題となって降りかかってくるおそれがあるので、まずは業者に相談しましょう。
モルタル外壁に穴をあける場合は業者に依頼すれば安心
作業の安全性や確実性を重視するなら業者へ依頼するのがおすすめです。
小さな穴をあけるだけなら時間も手間もかからないため自分でしても問題はありません。
しかし、直径が15mmを超える穴をあけるとなると作業の難易度がぐんと上がります。
作業に必要となるハンマードリルなどの重作業用の電動工具には両手で扱わないと扱いきれないほどのパワーがあります。
操作を誤ってドリルの先が体に触れてしまうと大怪我を負うことは避けられないでしょう。
それほどのパワーで打撃を加えるわけですからモルタル外壁にも大きな負担をかけることとなります。
モルタルは強い打撃に弱いため、穴のふちが欠けたり、穴の周りがひび割れたりなど、壁の表面にトラブルが発生することが考えられます。
また、回転するドリルの先で壁内部の配線や配管を傷つけると、停電や漏水などのトラブルに発展するおそれがあります。
これらのリスクを避けるためには作業に取り掛かる前に工具の使い方や、壁の内部構造を理解しておかなければいけません。
重作業用の電動工具の使用、トラブルの発生リスク、壁の内部構造の把握など、モルタル外壁の穴あけは大変難易度が高い作業です。
経験豊富な業者に依頼してみてはいかがでしょうか。
また、電動工具の購入費用を考えると、業者に依頼する方がお得な場合もあります。
穴あける以外の手段も検討しましょう
穴をあければあけるほど外壁の強度は下がります。
最悪の場合、建築基準法が定める構造強度下回り、欠陥住宅となってしまうことも考えられます。
また、穴あけ作業には危険や近隣への迷惑が伴いますので、できることなら外壁に穴をあけるべきではないでしょう。
現在は穴をあけずに物を外壁に設置する実現する便利グッズも販売されています。
穴を開けずに理想を実現する方法がないか探りましょう。