マイホーム登記の持分は必ず計算!贈与税を課されないために

念願のマイホームを購入するとき、夫婦が分割して資金を出す「共有名義」にするケースが見られますが、その際に気を付けたいのが「持分登記」です。

持分登記とは、取得した土地や建物を、誰がどのくらいの割合で所有しているかを登記するもので、いい加減に決めてしまうと後で贈与税が発生する場合があります。

そこでこの記事では、持分登記で贈与税がかかるケースから、それを避けるための計算方法など詳しくご説明していきます。

いい加減な持分登記は思わぬ贈与税に!どうやって決める?

多額の資金が必要になるマイホームの購入では、住宅ローンを組んだり、両親の援助を受けたりと、場合によって様々ですが、このときのマイホームの「持分」はどのように決めれば良いのかご存知ですか。

そもそも「持分」とは、冒頭でも述べたように、その不動産の所有権を持っている割合を指します。

例えば、マイホームの資金負担が全て夫にある場合、その名義は夫になるため、持分は全て夫になるように登記を行います。

一方、マイホームの資金を夫婦二人が出し合った場合、夫婦二人の共有名義になるため、「共有持分」として二人の持分割合を決める必要があります。

この共有持分の割合は、共有者の同意があれば必ずしも出資割合で決める必要はありませんが、いい加減に決めてしまうと多額の贈与税がかかってしまいます。

実際に、持分を適当に決めてしまうケースは少なくなく、例えば不動産会社が不適切な持分を提案してしまうなど、決して他人事ではありません。

後で「知らなかった!」と後悔しないように、二人の出資割合からきちんと計算して、共有持分を決めなければなりません。

では、どのような持分割合にしてしまうと、贈与税がかかってしまうのでしょうか。

次項から詳しく見ていきましょう。

贈与税が発生してしまうケースとは?

それでは早速、持分登記で贈与税が発生してしまう具体的なケースについて見ていきましょう。

例えば、夫婦二人の不動産取得費用が3,000万円のとき、資金負担の割合は夫が1,500万円、妻1,500万円だったとします。

この場合、持分登記は両者とも50%(1:1)であることが分かります。

当然、この実際の出資割合通りに持分登記を行えば、贈与税が発生することはありません。

しかし、この実際の出資割合と異なる持分を登記してしまうと、贈与税の課税対象となってしまいます。

例えば、上記の出資割合を無視し、夫の持分を100%と登記した場合、妻から夫に1,500万円の贈与をしたとみなされます。

贈与税には年ごとに一定の非課税枠がありますが、その額は110万円(基礎控除額)以内です。

親兄弟間の住宅取得における贈与の場合、消費税8%であれば最大1,200万円、消費税10%なら最大3,000万円まで非課税になりますが、夫婦間の贈与では基礎控除額が110万円と変わりません。

そのため、上記のケースでは「課税対象額×税率-控除額」の計算式から贈与税額を求めることができます。

まず、「贈与額(1,500万円)-基礎控除額(110万円)」となり、課税対象額は1390万円となります。

そこから、実際の贈与税額は「1390万円×45%(税率)-175万円(控除額)」と計算することができ、約450万円もの贈与税が発生することになります。

450万円もの多額な出費は、知らなかっただけでは済まされない大きな負担ですし、その後の生活にも大きな影響を与えることでしょう。

したがって、住宅の持分割合は、必ず出資割合通りに登記する必要があります。

なお、税率と控除額は課税対象額によって変わってくるので確認してください。

持分登記は出資割合通りに決める!その計算方法は?

前項では、贈与税が発生してしまうケースについて詳しくご説明してきました。

では次に、具体例を挙げて持分割合を決める計算方法を詳しく見ていきましょう。

持分割合の計算方法は、「出資額(住宅ローン借入額を含む)/不動産取得費用=持分」となります。

まずは分かりやすい具体例から計算方法を見てみましょう。

例えば、不動産取得費用が5,000万円、出資額の内訳が以下の通りの場合です。

●夫の出資額:3,000万円

内訳:自己資金200万円、住宅ローン2,800万円

●妻の出資額:2,000万円

この場合の持分割合を約分します。

夫:3,000万円/5,000万円=6/10

妻:2,000万円/5,000万円=4/10

したがって、夫の持分は6/10、妻の持分は4/10として登記を行うことになります。

具体例から持分の計算方法を確認しよう

引き続き、具体例を見ながら持分の計算方法を見ていきます。

次は、不動産取得費用が5,400万円のとき、出資額の内訳が以下の通りだった場合です。

●夫の出資額:3,200万円

内訳:自己資金1,000万円、住宅ローン2,200万円

●妻の出資額:2,200万円

内訳:親からの贈与200万円、住宅ローン2,200万円

住宅を購入する際、親からの援助金がある場合、そのお金は借りた人の資金に含まれます。

では、この場合の持分割合を約分します。

夫:3,200万円/5,400万円=3/5

妻:2,200万円/5,400万円=2/5

持分登記をする際は整数で登録されるため、小数点が出る場合は上記のように整数に引き直してください。

したがって、夫の持分が3/5、妻の持分が2/5ということになります。

持分登記の計算には諸経費も含まれる

これまでに、具体例を挙げながら持分登記の際の計算方法をご説明してきましたが、不動産取得にかかる費用は、なにも土地代や建築費だけではありません。

不動産取得に付随した、様々な契約・登記・事務手数料も含めて持分割合を計算していきます。

【土地代・建築費等】

・土地、建物購入費
・土地造成費
・測量費
・建築費
・設計費
・建物に付随する設備費用

【税金、登記に関わる手数料等】

・印紙代、不動産取得税、登録免許税
・仲介手数料
・登記手数料
・固定資産税と都市計画税の精算金
・住宅ローンに関わる事務手数料

また、以下の項目は持分割合の計算には含まれないので注意してください。

・火災保険料、地震保険料
・引っ越し費用
・家具家電の購入費用
・つなぎローンの事務手数料

持分登記のまとめポイント!贈与税を回避するために

これまで具体例で見てきたように、出資割合から持分を決める計算方法は難しくありませんが、計算嫌いという方には億劫な作業かもしれません。

しかし、だからといっていい加減な持分登記をしてしまうと、前述したように多額の贈与税が発生することになります。

そのため、必ず贈与税を頭の片隅に置いた上で持分を決めることが重要です。

では、これまでの持分登記について重要ポイントをまとめてみましょう。

①基本的には、出資割合に沿って計算する

②出資割合と持分が異なる場合、贈与税の非課税枠110万円以内に収まるように持分を調整する

③不動産購入の出資者でない人を共有名義に入れる場合、贈与税の非課税枠110万円以内に収まるように持分を調整する

以上の3つは、贈与税を回避するための重要なポイントなので、必ず覚えておきましょう。

なお、不動産購入時に非課税枠内での贈与を受けた場合は、贈与税申告を忘れないように行ってください。

持分は出資割合から決める

マイホームなどに関わる持分は、いい加減に決めてしまうと贈与税として大きな負担を強いられることが分かりました。

また、不動産持分は将来的な相続にも関わり、きちんと決めておかないと厄介なトラブルの原因になります。

今回の記事を参考に、共有名義の出資割合から持分を計算してみてください。