アパートに長く住んで退去する場合、部屋のクロスなどに傷が目立ったり汚れがひどい時「退去費用はどのくらいかかるのか?」と心配になる方も多いでしょう。
長く住めば住むほど、退去費用は高くなってしまうのでしょうか。
この記事では、アパートに6年間住んだ場合を例に「退去費用」にまつわることをご紹介します。
アパートの退去費用に重要な役割を果たす敷金とは?
6年間住んだアパートの退去費用についてのご説明をする前に、退去する際に大きな役割を果たす「敷金」についてお話をします。
アパートを借りる際、必要になるのが「初期費用」で、たいていの場合この中に敷金も含まれるでしょう。
敷金は、アパートを退去する際、生活していてできてしまった傷などを元通りに戻すという「原状回復」の費用として、入居する時に予め支払う「準備金」のようなお金のことです。
基本的に退去時には、この部屋の原状回復にかかった費用を入居時に支払った敷金から引いた金額が借主に返還されます。
敷金は一般的に家賃1か月分が目安であることを覚えておいてください。
例えば、敷金がアパートの家賃ひと月分で60,000円だったとします。
退去時、原状回復費用として30,000円が請求された場合であっても、敷金の60,000円から差し引かれて30,000円が借主のものに返ってくるのが一般的でしょう。
このように、入居時に敷金を「支払う」という形で貸主に預けておくことで退去費用を払わずに済み、逆に返金されるケースも多いのです。
アパートの経過年数という考え方とは?クロスは6年
アパートを退去する際に発生する退去費用は、基本的に敷金から差し引かれるとお話ししました。
では、借主が部屋の備品などに傷などを付けてしまった場合、復旧費用として100パーセント借主が負担する必要があるのでしょうか。
建物・設備などの「物」の価値は、年数が経過することでその価値や品質は減っていきます。
このことを「経年劣化」といい、これに基づき賃貸住宅には「経過年数」という考え方があります。
どのようなものかというと、物には経過年数(耐用年数)があり、使用している期間によって「残存価値」が変化するという考え方です。
この経過年数は、建物・設備など部材ごとに考慮される年数が異なり、経過年数を考慮しないといった部材も存在します。
例えば、クロスの経過年数は「6年」であるのに対して、障子紙や襖紙の経過年数は「なし」と判断されます。
クロスと同様、経過年数6年のものは?経過年数が考慮されないものもある?
アパートの部屋にある各部材には、経過年数が定められています。
その中から、先程のクロスと同様「6年」と決められているものと「なし」とされるものをご紹介しましょう。
まずは、経過年数が考慮されないものをいくつか例に挙げます。
これらは消耗品としてみなされ、経過年数が考慮されません。
・フローリング
・畳表
・障子紙や襖紙
フローリングは、床全体の張り替えを行なった場合はこの限りではありません。
アパートの経過年数によって、床の張り替え費用の負担割合が算定されます。
また、例えば経過年数が6年のものの場合、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」によると、「6年で残存価値1円となるような直線(または曲線)を想定し、経過年数によって借主の負担する割合を決定する」といった旨が記されています。
ここで表されている直線(曲線)は、経過年数に応じての部材の残存価値と借主の負担割合が右肩下がりになっています。
つまり、経過年数が長いほど借主の負担割合が減少することを設定しているため、結果として退去費用が安くなることにつながるのです。
・畳床、カーペット、クッションフロア
・クロス
・設備機械(エアコン・インターホン・冷蔵庫・ガスレンジなど)
このようなものは、6年間同じアパートに住むことで残存価値が1円になります。
退去費用トラブルの原因となるクロスのヤニ汚れ!経過年数3年と6年の違い!
経過年数が長いほど、借主の負担が軽くなり、結果として退去費用が安くなることにつながるとお伝えしました。
汚れや傷が目立ちやすいクロスに関しては、経過年数が6年で残存価値が1円になります。
そこで、退去時費用のトラブルの原因となる「タバコが原因のヤニ汚れ」のクロス張り替えにかかる費用についてご紹介しましょう。
例えば、タバコを吸う習慣がある借主が3年間でアパートを退去したとしましょう。
中には、「クロスの経過年数は6年だから、タバコを吸わなければプラス3年使うことができた」と思う貸主もいるかもしれません。
しかし、タバコのヤニ汚れも経過年数が考慮されるのです。
そのため、借主が負担する割合は「クロスの残存価値の50パーセント」といえるでしょう。
例えば、元々のクロス交換にかかる費用が60,000円だとしたら、3年経過してクロスの残存価値は30,000円になります。
借主の負担割合は、クロスの残存価値の50パーセントなので、実際請求される金額は15,000円ということになりますね。
6年間の場合であれば、借主の負担は1円であるため、貸主の負担は59,999円となります。
アパートのクロス!タバコのヤニ汚れ以外の場合も経過年数6年は考慮される!
アパートの退去費用をめぐり、トラブルの原因になることが多いタバコが原因のクロス汚れについてお伝えしました。
では、タバコのヤニ汚れ以外の場合はどうなのでしょうか。
タバコのヤニ汚れ以外の「借主の故意・過失・善管注意義務違反」が原因である場合でも、経過年数(耐用年数)はもちろん考慮されます。
例えば、クロスの結露を放置したことが原因でできてしまった「カビ」や、物などをぶつけて生じた「クロスのはがれ」などが挙げられます。
また、小さい子供がいる場合などにありがちなクロスへの「落書き」なども経過年数は考慮されます。
6年間住んでいる場合であれば借主の負担は1円になり、3年であれば残存価値の50パーセントで済みます。
ただし、アパートの賃貸契約を結ぶ際に、貸主・借主双方が納得の上定めた「特約」を追加した場合、その限りではありませんのでご注意ください。
8年・15年で減価償却されるアパートの設備!アパートの退去費用に影響!
アパートの退去費用は、入居時貸主に支払った敷金から差し引かれる形になるとお伝えしました。
同じアパートに長く住めば住むほど、経過年数が考慮されるものが増えていきます。
6年で残存価値が1円になるものをご紹介しましたが、その他の年数で減価償却するものもあります。
では、経過年数ごとに考慮される部材をいくつかご紹介しましょう。
●経過年数8年
・金属製以外の家具(書棚・タンス・戸棚など)
●経過年数15年
・便器
・洗面台
・衛生設備
・金属製の器具や備品
鍵の交換費用やハウスクリーニングは経過年数は考慮しないことになっています。
鍵を紛失してしまった場合の鍵交換費用は借主が負担します。
退去時の基本的なハウスクリーニング代は敷金から差し引かれるのが一般的なので、参考にしてください。
部材の経過年数が大きいほど退去時の負担額は下がる!
アパートは、建物や設備などの部材によって経過年数(耐用年数)が決められています。
部材の残存価値は、住んでいる期間長ければ長いほど下がるため、退去する際の借主の負担額も下がると言えるでしょう。
そのため同じアパートに6年間など長く住んだ場合、短い場合と比べて退去費用は安く済む場合が多いようです。
ご自身がアパートを退去する際の参考にしてください。