賃貸アパートを契約するとき、通常なら借主が不動産会社に出向いて契約を取り交わすのが一般的でしょう。
ただ、場合によっては不動産会社や借主の都合で「契約書を郵送でやり取りしたい」といったこともあるようです。
この記事では、「アパートの契約書」や「重要事項説明書」、「契約書は郵送でやりとりしてもよいのか」などについてご紹介します。
アパート契約の重要書類!賃貸借契約書と重要事項説明書!
契約書の郵送についてお伝えする前に、まずは、「賃貸借契約書」と「重要事項説明書」についてお話しします。
アパートの賃貸契約を結ぶ際、必要となるのが賃貸借契約書です。
賃貸借契約書とは、アパートなどの賃貸物件を借りるための契約書のことを指します。
また、契約をする時、賃貸借契約書の他に渡される書類が「重要事項説明書」です。
重要事項説明書とは、物件に関しての現在の状態をまとめた書類で、その内容を借主が納得した上で賃貸借契約へとの運びとなります。
大まかな流れをご説明しましょう。
1.借主は不動産会社に足を運び、そこで重要事項説明書の説明を受けます。
2.借主が納得したら、重要事項説明書に署名と捺印します。
しかし、この時点では契約は成立していません。
3.不動産会社が賃貸借契約書を借主に掲示します。
4.借主が賃貸借契約書に署名と捺印をして契約が成立します。
契約書に署名・捺印をした時点で契約が成立するので、実際に契約の効力があるのは賃貸借契約書であるといえます。
万が一契約書と重要事項説明書に内容の違いがあった場合、契約書の内容が優先されるので覚えておくとよいでしょう。
アパートの賃貸借契約書のチェックポイント!
続いて、賃貸借契約書の確認すべき事柄をお伝えしていきます。
まずは、契約書の冒頭に記載されているアパートの名称や所在地、建物の構造、間取りや部屋番号などの細かな物件情報を確認しましょう。
アパートの工事が完了した年なども記載されているため、築年数にも目を通すことをおすすめします。
借りたい物件と異なる物件でないことも、ここで確認しておきましょう。
続いて、備え付けの備品もチェックしておきます。
備品欄が「有」になっている備品は、付属品として備わっているので参考にしてください。
契約期間や賃料なども忘れずに確認しましょう。
賃貸アパートの契約期間は一般的に2年間ですが、契約が2年だからといって必ず2年住む必要があるというわけではありません。
ただ、賃貸借契約書や重要事項説明書に途中解約の違約金の支払いの特約がある場合、法外に高い違約金でない場合支払いの義務が生じるので注意が必要です。
また、特約に退去時の費用負担などが書かれているかどうかなども確認しましょう。
そして、何かトラブルが起こった時のために、貸主(大家さん)や管理会社の連絡先を控えておくことも大切です。
いざという時いつでも連絡が取れるように、携帯電話に登録しておくことをおすすめします。
そんな確認すべき事項が多い賃貸借契約書は、不動産会社から自宅に郵送されてくる場合もあるわけですが、郵送でやり取りをしてもいいのでしょうか。
アパートの賃貸借契約書は郵送でやり取りしても良いの?
不動産会社から郵送されてくる場合もあるアパートの賃貸借契約書ですが、郵送でのやり取りについてここでご説明しましょう。
契約書に関しては、郵送のやり取りは禁止されていません。
何らかの事情で、不動産会社から契約書が郵送されてくる場合もあるでしょう。
また、ご自身の事情で不動産会社から契約書を郵送してもらって返送したいといった状況もあるかもしれません。
事前に重要事項説明書の内容の説明を受けている場合は、前述したような賃貸借契約書のチェックポイントを確認した後、署名と捺印をして郵送することができます。
ただ、不動産会社の近所に住んでいる方は事務所に持参して手渡ししたほうがいいかもしれません。
契約書には大事な個人情報が記載されているため、万が一の紛失もないとは言い切れません。
持参することによって、契約書に署名・捺印した場所など再度確認してもらうことができます。
それでは次の項からは、重要事項説明書についてお話をしていきます。
重要事項説明書の説明は宅建有資格者が担当!郵送は宅建業法違反?
アパートの賃貸借契約書は、重要事項説明書よりも効力のあるものであると第1項でご紹介しました。
とはいえ、契約者が重要事項説明書の内容に同意しなければ契約成立にはいたらないため、こちらも重要であるといえるでしょう。
重要事項説明書の内容は、「宅地建物取引士」の資格がある担当者が、不動産会社で口頭で説明することになっています。
そのため重要事項説明書の郵送は、宅建業法第35条に違反することになってしまうことを念頭に入れておきましょう。
宅地建物取引士から重要事項説明書の説明を受けた際、不明な点があればこの段階で質問して解決しておくとよいでしょう。
例えば、専門用語などを理解できないまま契約してしまった場合、分からない内容も認めてしまうことになります。
説明書をコピーしてもらって、信頼できる人と読み合わせするなどして再度チェックするとより安心できますね。
ただ、2017年10月より、不動産会社へ出向かずともパソコンやスマートフォンを活用して重要事項説明が受けられる「IT重説」のシステムを取り入れている不動産会社が多くあるようです。
郵送できなくても大丈夫!重要事項説明書の新しい形「IT重説」
アパートの賃貸借契約書は郵送のやり取りができますが、重要事項説明書は郵送でのやり取りはできません。
契約書の郵送ができて、重要事項説明書の郵送ができないのでは「不便」と感じる方も多いでしょう。
そこで、2017年の10月より取り入れられ始めたのが「IT重説」と言われるものです。
IT重説に必要なデバイスは、パソコンまたはスマートフォン、タブレットのいずれかです。
これまで、前述したように宅地建物取引士による「対面」での重要事項説明が義務づけられていました。
このオンラインシステムを用いることで、「非対面」での説明を宅建業法で認めています。
重要事項説明を受けるためだけに不動産会社に出向くのには、遠方の場合などお金や時間がかかってしまうため負担に感じる方もいるでしょう。
また、仕事が忙しくてなかなか時間がとれないといった方も多いです。
そのような方には便利なシステムであるといえます。
契約前の内覧や申し込みの際には不動産会社に出向く形になりますが、入居審査後は出向くことなく契約に至ることが可能です。
ただ、重要事項説明書の内容を不動産会社に出向いて聞くことで、内容に納得すればその場で契約することもできます。
賃貸借契約書を郵送する手間はなく、前述したような郵送に付きまとう不安もありません。
ご自身の状況に合わせて、このシステムを利用しましょう。
アパートの契約までに用意しておくべきもの!
賃貸借契約書や重要事項説明書などについて、郵送でやり取りしてもよいのかを含めいろいろとご紹介してきました。
では、アパート契約をするまでに、借主が用意する必要がある一般的ものについても触れておきましょう。
・住民票
・印鑑証明
・収入を証明する源泉徴収票など
・保証人関連の書類
・銀行の通帳と銀行印
・お金
住民票は役所でその日に簡単に入手することができます。
印鑑証明も役所でその日に入手することができますが、学生などで実印の登録をしていない方は、事前に役所で印鑑登録を行っておきましょう。
収入を証明するものとして、会社員の場合は源泉徴収票を用意しましょう。
自営業の方などは、その年の確定申告書や納税証明書の準備をしてください。
また、アパート契約に必要な保証人が決まったら、不動産会社から渡された所定の承諾書に直筆で署名と捺印をもらってください。
そして、家賃を引き落とすための銀行通帳(口座番号)と口座の銀行印が必要となります。
最後に、契約に必要な費用を用意します。
アパート契約時には、一般的に敷金や礼金の他に、仲介手数料や前家賃、火災保険料などが必要になります。
合計金額をよく確認の上、用意してください。
現金払いではなく、貸主や不動産会社の銀行口座への振り込みをする場合も多く見受けられます。
郵送でのやり取りは可能!都合が付くのであれば不動産会社に出向こう!
アパートの賃貸借契約書は、郵送でやり取りすることが可能です。
しかし重要事項説明書は郵送することができないため、不動産会社に出向くか「IT重説」が導入されている場合はそちらを利用しましょう。
契約書の郵送でのやり取りは「万が一の紛失」といった事態も否めないため、ご自身の都合がつくのであれば直接手渡しすることをおすすめします。