不動産投資でアパートやマンションの大家さんをやっている人や、自宅や持ち家を賃貸に出している人には毎月借主側から家賃が支払われます。
金銭を受領する際に発行する領収書ですが、家賃の領収書に収入印紙を貼る必要があるのか悩む貸主も多いようです。
家賃の領収書に貼る収入印紙については世間で様々な意見を聞きますが、実際は必要となるのでしょうか?
家賃の領収書に関する事項についてご紹介していきます。
家賃を受領したら領収書は発行しなければならない?
賃貸物件では、貸主は入居者から毎月どんな形であれ家賃を受け取ることになります。
そして、その家賃を受け取った証となるのが、領収書です。
振込や引き落としの場合には後からでも「いつ、いくらを支払ったのか」確認することができますが、手渡しの場合にはそうはいきません。
人間誰しも勘違いはありますから、後に家賃を支払ったのかどうか分からなくなっては収拾がつかなくなってしまいます。
また、振込や引き落としの場合でも、在宅ワークの求人が増えたことなどから領収書の発行を望む人も増えています。
家賃の一部を経費として認めてもらうためには、領収書が必要不可欠だからです。
このように家賃の領収書の発行を望む人が多くなってきているのですが、貸主側は入居者側から領収書の発行を求められたら拒むことはできません。
それは領収書の発行が借主が主張する当然の権利であるからです。
しかし、貸主側が領収書の発行を躊躇してしまうのは、収入印紙の問題があるからでしょう。
家賃の領収書に収入印紙は必要?
家賃の領収書を発行するだけなら、誰も悩むことはないかもしれません。
しかし、日本では課税文書にあたる書類には税法上、税金が課されることとなっています。
印紙税という税金です。
領収書は金銭の受領があったことを証明する書類である第17号文書に該当し、印紙税の対象となります。
そのため領収書を発行する場合には、収入印紙を貼らなければならない場合があります。
これは家賃の領収書であっても同様です。
では全ての家賃の領収書に収入印紙を貼らなければならないかと言うと、そうでもありません。
領収書に係る印紙税には非課税範囲と言って、税金のかからない範囲が存在します。
平成26年4月1日以前は3万円未満は非課税でしたが、印紙税法の一部が改定されたことにより5万円未満が非課税範囲となりました。
したがって、5万円以上の領収書には収入印紙を貼らなければなりません。
収入印紙の額については記載金額によるのですが、5万円以上100万円未満の領収書であれば200円の収入印紙を貼ることになります。
1枚あたりの金額になるので部屋数が多ければ多いほど、領収書の収入印紙代が負担となるのは明白でしょう。
家賃の領収書に収入印紙を貼らないとどうなる?
では家賃の領収書に収入印紙が必要な場合で、収入印紙が貼られていなかったらどうなるのでしょうか?
収入印紙が貼られていない事実が税務調査などで発覚した場合には、過怠税が発生します。
この過怠税は2倍の額なので、5万円以上の領収書に収入印紙が貼られていなかった場合には結果的に合計3倍の額を払わなくてはなりません。
200円の収入印紙であれば過怠税と合わせて、600円納税する必要がでてきます。
印紙税の時効は5年なので、最高で60ヶ月分さかのぼって納税しなければなりません。
その額は36,000円にものぼります。
通常なら12,000円の収入印紙代で済むのでかなりの痛手となりますね。
しかもこれは1室あたりになるので、部屋数が多ければ多いほど負担は重くなるのです。
税務署に自己申告をすれば、本来の額の1.1倍を納付すれば良いことになっています。
さらに収入印紙を故意に貼らなかった場合には1年以下の懲役、もしくは20万円以下の罰金もありえます。
領収書に収入印紙を貼っても消印をしないと納付したことにはならない?
印紙税を納付したと認められるのは「収入印紙を課税文書に貼り付けて消印したとき」と定められています。
つまり、家賃の領収書に収入印紙を貼っただけでは、印紙税を納付したことにはなりません。
消印の仕方にも注意が必要です。
国税庁のホームページには「作成者や代理人、使用人、従業者の印章又は自筆による消印のみ」認められる旨が記載されています。
斜線や二重線を引くだけでは有効な消印とはなりません。
印章又は自筆で、氏名や通称、商号など何でも構いません。
もし印紙税を納付する必要のない領収書に収入印紙を貼ってしまったり、定められた金額を超えた収入印紙を貼ってしまった場合は所轄税務署へ持っていきましょう。
所定の手続きを取ることで印紙税の還付を受けることができます。
領収書に貼る収入印紙を節約するためには?
毎月のこととなると、領収書の収入印紙代は少なからず出費となります。
特に部屋数が多いとどうにか節約できないものかと考えてしまうでしょう。
5万円以上の家賃の領収書には収入印紙を貼らなければならないので、「貼らない」という方法は節約にはなりません。
しかも最悪の場合には2倍の過怠税が加算されるので、余計な出費を招いてしまう可能性すらあります。
しかし領収書を発行しないという方法は、収入印紙代を節約する良い方法です。
入居者に「領収書を発行して欲しい」と申し出られたら発行する義務がありますが、振込の際に発行される明細書でだめか聞いてみると良いしょう。
どうしても領収書の発行をお願いされる場合には、複数月分をまとめて発行することで収入印紙代を節約することもできます。
5万円以上100万円以下の領収書は一律200円の収入印紙でOKです。
また家賃の他に共益費や町費などを受領していて、家賃自体は5万円を超えない場合には領収書を分けて発行するという方法も有効です。
5万円未満であれば、家賃の領収書に収入印紙は必要ないからです。
ただし月8万円の家賃を4万円の領収書を2枚きるようなあからさまな方法は、税務調査で発覚すると過怠税の対象になるため注意しましょう。
電子発行の領収書に収入印紙は不要!?
家賃の領収書の収入印紙を節約する方法として、領収書を電子発行するという方法もあります。
これは電子領収書は印紙税法でいう課税文書には該当しないと考えられるためです。
領収書をPDFファイルとしてメールで送れば、実際には文書が交付されていないことから課税文書を作成したとはみなされないという理屈です。
入居者がPDFファイルの領収書を自ら印刷さえしてくれれば、家賃の領収書の収入印紙を節約することができるのです。
また、まだまだ少数派ではありますが、家賃がクレジットカード決済の場合には5万円以上の領収書でも収入印紙を貼る必要はありません。
これはクレジット会社が一旦支払いを負担するため、入所者と貸主、当事者間に金銭の受け渡しがないからです。
ただし領収書にはクレジットカード利用の旨を記載しなければなりません。
もし記載を忘れてしまうと印紙税の対象となる課税文書として扱われ、5万円以上の領収書には収入印紙を貼る必要がでてきます。
家賃の領収書には収入印紙が必要となる場合あり!
領収書を発行する場合には、金額によって収入印紙が必要となります。
毎月の出費となりますから節約したい気持ちはわかりますが、収入印紙が必要なのに貼っていない場合にはペナルティがあるので注意してください。
領収書を発行しないことが一番の節約だとは思いますが、入居者側から頼まれたら発行しないわけにはいきません。
その際は領収書の発行方法について、入居者に相談してみると良いでしょう。