新築の引き渡しも終わり、ようやく快適な住まいに慣れてきた頃に、市役所からやってくるのが「家屋調査」です。
「家屋調査」と聞くと、小難しい印象があり不安になってしまいますが、固定資産税を算出するための重要な調査であり、新築に住み始めて数か月後に行われます。
この記事では、固定資産税に関わる家屋調査について、事前に知っておきたいポイントを解説していきます。
固定資産税のもとになる家屋調査とは?知っておきたいポイント
冒頭でお伝えしたように、家屋調査とは固定資産税を算出するための調査です。
この調査は、新築や増築した家屋を対象とし、固定資産評価基準に順じて「評価額」を算定します。
固定資産税は、算定された「評価額」に税金が上乗せされることで算出されているのです。
もともと、税金の一つとして、家や土地を持っている方には固定資産税の納税が課せられています。
しかし、新たな家屋に対しては、固定資産税の算出がなされていないため、新築後は市役所によって家屋調査が行われるのです。
また、覚えておきたいポイントとしては、固定資産税の「基準日」です。
この「基準日」は、固定資産税が発生する「基準ライン」で、毎年1月1日に設定されています。
つまり、その時点で既に家が完成している場合は、当年から固定資産税の納税義務が発生します。
例えば、年末の12月15日にマイホームが完成した場合は、その年の固定資産税を支払わなければならないため、家の完成を急いでいなければ、基準日以降の完成にずらしてもらうのが良いでしょう。
家屋調査でチェックされるポイントは?その①資材
では、家屋調査では具体的にどういった部分が調査されるのでしょうか?
調査のポイントとなるのは、使用している「資材や設備」で、固定資産評価基準に順じて算定が行われます。
資材に関して具体的に挙げると、以下のような部分になります。
・躯体:木造、鉄骨など
・外壁:サイディング、タイル、レンガ、漆喰など
・屋根:瓦、スレート、コロニアルなど
・内壁:クロス、木材、塗り壁、タイルなど
・天井:クロス、板張り、塗り壁、漆喰など
・床:フローリング、畳、モルタル、タイルなど
上記のような部分に渡って、使われている資材がチェックされます。
また、使用されている資材の範囲面積も調査されるため、大きな家ほど固定資産税が高くなります。
さらに、上記以外にも以下のような場所でも調査が行われます。
・屋根の形式:切妻(きりづま)・寄棟(よせむね)・片流れなど
構造の難しさなどによって、原点の補正がかかります。
・屋根の軒、基礎の立ち上がり
基準である45cmをもとに、点数が増減されます。
・建具(窓・扉)の数・大きさ
家屋調査でチェックされるポイントは?その②設備
家屋調査のチェックポイントには、資材のほかに「設備」があります。
「設備」とは、一般的に備わっているキッチン、お風呂、トイレ、洗面所などを指し、床暖房、浴室乾燥機もその対象に含まれます。
これらの設備でも、全国で統一された固定資産評価基準をもとに評価額を算定していきます。
例えば、トイレや洗面台は、それぞれの家によって数が異なりますが、多ければ多いほど収める税金は高くなります。
また、床暖房に関しては、㎡あたりの計算が行われ、当然面積が大きいほど固定資産税が上がります。
ただし、以下のような新築数年であれば、減税措置の対象になります。
・一般住宅:新築後3年間
・長期優良住宅:新築後5年間
適応範囲は定められていますが、これについても覚えておくと良いでしょう。
家屋評価額はどのように決まる?計算方法について
家屋調査のチェックポイントが分かったところで、続いては家屋評価額の仕組みについて見ていきましょう。
少し小難しい話になりますが、家屋の評価額は、納税者の公平性を保障するために、以下のような計算方法が用いられています。
「家屋評価額」=「再調達価格」×「経年減点補正率」×「評点1点当たりの価額」
難しい言葉が出てきたので、以下でそれぞれご説明していきます。
・再調達価格
「再調達価格」とは、国定資産評価基準に順じて、建築資材や設備などに設けた点数から算出した価格です。
つまり、家屋においてその建物の再現における評価基準を意味しています。
もっと噛み砕いて言えば、例えば家屋が火災で焼失した場合、全く同じものを再現しようとした際にかかるコストが「再調達価格」になります。
・経年減点補正率
家屋の経年に考慮して、再調達価格に一定の率が乗じられます。
一般的な木造住宅の場合、家屋調査が行われた翌年(新築後1年)には0.8の経年減点補正率が定められており、2年経過すると0.75となります。
例えば、固定資産税の基準日前(前年)に新築されていれば、評価額は補正率の0.8が乗じられることになります。
必要な書類や調査時間は?固定資産税に関わる家屋調査
前項では、固定資産税に関わる家屋評価額の計算方法についてご説明しました。
では、実際に家屋調査が行われるとなった場合、用意しておく必要な書類はあるのでしょうか。
必要書類に加え、家屋調査にかかる時間についても見ていきましょう。
まず、家屋調査が行われる前には、事前に市役所より家屋調査依頼の通知が届きます。
必要な書類についてはその中で触れられているので、その指示に従ってください。
基本的には、以下の書類が必要になります。
・各階平面図のコピー
・仕上げ表
・建築確認申請書
・工事請負契約書
・検査済み証
なお、木造か非木造によっても必要書類が変わってくる場合があります。
また、家屋調査は内部だけではなく外部も行いますが、ほとんどの場合は1時間ほどで終わります。
その際に、不動産取得税などの説明がありますので、不明な点があれば必ず聞いておくことがポイントです。
固定資産税の家屋調査は拒否ができるのか?
家屋調査では、建築資材や設備を確認する必要があるため、家の隅々まで立ち入り調査が行われます。
そのため、「プライベートな部分までお見せできない」という方も少なくないはずです。
そこで気になるポイントは、家屋調査の拒否は可能なのかということです。
結論から言うと、市町村によっては調査の拒否ができる場合があります。
ただし、拒否した場合、以下を元にした固定資産税の算出が行われます。
・建築確認の図面
・類似建物の評価
・聞き取り調査など
これらを元にした算出は、実際に現場で行う家屋調査と少なからずズレが生じてしまいます。
ほとんどの場合、家屋調査を拒否した場合の方が、税金が高くなる傾向になるため、特別な理由がなければ家屋調査は応じるのが良いでしょう。
しかし、それでも家の中を見られたくない場合は、マイホーム完成後、新築へ引っ越す前に家屋調査の依頼をすることをおすすめします。
前述したように、家屋調査の依頼は市役所から通知されますが、その際に引っ越し前の調査について相談しておくのがベストです。
また、見られたくない場所が部分的にある場合は、家屋調査が行われる際に伝えておくのが良いでしょう。
協力的な家屋調査を
これまでに、知っておきたい家屋調査のポイントや、固定資産税との仕組みについてお話ししてきました。
家屋調査は、固定資産税の算出に関わる重要な調査です。
誰しも初めての家屋調査は不安になるものですが、家屋調査の仕組みを知っておけば、身構える必要はありません。
もし家屋調査で不明なことがあれば、各市町村で問い合わせてみてくださいね。