減価償却費の算出には耐用年数に注意!エアコンの場合は?

減価償却資産には、資産によって耐用年数が規定されています。

耐用年数とは、言葉通りに「使用に耐えうる年数」を意味しており、この年数は国税庁によって委ねられています。

そのため、マンション経営者にとっては、減価償却資産であるエアコンの耐用年数に注意する必要があります。

この記事では、エアコンの耐用年数から減価償却費の計算方法まで詳しくご説明していきます。

減価償却資産とその耐用年数とは?エアコンに関わる経費計上

マンション経営をする場合、各部屋の設備としてエアコンを設置することがほとんどです。

その際、エアコンの購入には高額な費用がかかる一方で、集客の商売道具にもなり得ます。

エアコンは、物件と同様に経費を使って購入した資産として計上され、「減価償却資産」の対象になります。

そもそも「減価償却」とは、主にエアコンのような有形固定資産に対し、経年によって価値が下がることを考慮し、その耐用年数で費用を損失計上することです。

そして、「減価償却資産」とは、購入価格が1単位当たり10万円以上の事業用資産であり、数年に渡って耐えうるものを指します。

減価償却資産は、「有形固定資産」と「無形固定資産」に分けることができますが、エアコンは前者の「有形固定資産」になります。

また、エアコン以外にも、主に以下の備品・器具は有形固定資産に該当されます。

・家具
・電気機器
・ガス機器
・冷房用、暖房用機器など

なお、「無形固定資産」は形のない固定資産になり、主に以下のようなものが対象になります。

・特許権
・商標権
・ソフトウェア
・育成権
・営業権

これらの減価償却資産は、有形・無形問わずそれぞれの資産によって耐用年数が決まっており、その年数に応じて減価償却費として経費に計上します。

では、エアコンの耐用年数について、次項で詳しく見ていきましょう。

決まった耐用年数で減価償却費を算出!エアコンの耐用年数は?

減価償却資産の対象である場合、経営や事業会社に関わる設備・器具については、それぞれの資産に耐用年数があることが分かりました。

耐用年数が過ぎることで、その資産は減価償却費として経費に計上できるのですが、冒頭でも述べたように、耐用年数は国税庁によって決められています。

と言うのも、各会社に対して減価償却を委ねてしまうと、税金において不正な操作が行われる恐れがあるからです。

つまり、国税庁が定めた耐用年数で減価償却することで、適正な経理処理が行われるというわけです。

では、エアコンの耐用年数は何年になっているのでしょうか。

エアコンの場合、「建物附属設備」か「器具及び備品」かで、以下のように耐用年数が変わってきます。

・建物附属設備:15年
・器具及び備品:6年

この二つの違いは、ダクトで繋がっているか否かがポイントです。

国税庁のサイトによれば、冷房機器がダクトを通じて広い範囲に渡っている「パッケージドタイプ」の場合は、建物一体型としてみなれされ、「建物付属設備」の対象になるとしています。

つまり、マンション経営における各部屋のエアコンは、ダクトのない家庭用エアコンになるので、耐用年数は6年ということになります。

ただし、このような耐用年数は、減価償却資産に対する帳簿上の問題になるので、実際の継続した使用には影響しません。

エアコンの耐用年数は6年!20万円以上のエアコンの減価償却は?

実際に耐用年数で減価償却費を計上していくにあたっては、エアコンの「取得原価」によってもやり方が変わってきます。

「取得原価」とは、その資産の購入に要した価格のことを指し、設置や送料などの費用も含まれます。

例えば、取得原価が10万円に満たない場合は、減価償却資産の該当にはならないため、初年度に消耗品として計上することができます。

と言うのも、消耗品の場合、備品のような耐用年数が存在しないからです。

また、取得原価が減価償却資産に該当する場合は、「10万円以上」か「20万円以上」かによっても計上が以下のように変わります。

まず、取得原価が10万円以上の20万円未満だった場合、使用後の3年間に渡って、その減価償却資産をまとめることで、一括した取得価額(合計金額)の3分の1を必要経費に計上することができます。

これを「一括償却資産」と言います。

例えば、取得原価が15万円だとすれば、初年から3年目まで、均等で5万円ずつの金額を減価償却費として計上することができます。

つまり、エアコンの耐用年数は6年なので、取得原価が20万円以上のエアコンの場合は、6年に渡る減価償却が必要になるということになります。

このような処理の違いは、覚えておくと良いでしょう。

また、エアコンを経費計上するのであれば、取得原価の領収書はしっかりと保管しておきましょう。

エアコンの取得原価は税込みと税抜きどちらで考える?

前項では、エアコンの耐用年数を踏まえ、減価償却における取得原価についてご説明してきました。

10万円以上か20万円以上かによって、減価償却の処理が変わってくることが分かりましたが、ここで迷うことは、取得原価に消費税を含むか否かということです。

まず、経理の方法としては、税込みとして経理する「税込経理」と、税抜として経理する「税抜経理」の2つの方法があります。

消費税の処理における方法は、それぞれの会社によって委ねられ、税込・税抜経理のどちらの処理方法を採用しても良いことになっています。

では、「税込経理」と「税抜経理」の違いを以下の例でご説明していきます、

例えば、エアコンを消費税含めた10万円で購入した場合を見てみましょう。

まず、「税込経理」で考える場合、取得原価は10万円を超えるので、その費用は資産として計上する必要があります。

つまり、購入時に消耗品の経費として計上することができません。

しかしそれに対して、「税抜経理」で考える場合、エアコンの取得原価は92,593円で10万円未満になるので、その費用は消耗品の経費として計上することができます。

このように、購入したモノが消耗品であるのか資産であるのかは、その経理方法によっても判断されることになります。

そのため、取得原価をその年度に経費計上をしたい場合は、税抜経理で処理を行うのが良いでしょう。

また、税抜経理の方が実際の正しい損益が出されるので、基本的には税抜経理での処理が推奨されています。

エアコンの減価償却費を計算してみよう

では、実際に耐用年数6年でエアコンの減価償却費を計算してみましょう。

まず、減価償却費の計算方法には、以下の2つの方法があります。

・定額法:毎年一定額の減価償却費を計上する方法

・定率法:一定の割合で減価償却費を計算する方法

エアコンの償却の場合、定額法で行うことが原則になっているので、今回は定額法による計算方法を見ていきましょう。

定額法による減価償却費の計算方法は以下になります。

・「その年の減価償却費」=「取得価額」÷「耐用年数」×「使用月数」÷「12ヶ月」

例えば、2018年7月に購入したエアコンの取得原価が30万円である場合、初年度は所有した月数のみを償却していきます。

まず、1年目は以下のように計算します。

減価償却費=30万円÷6年×6ヶ月÷12ヶ月

1年目の減価償却費は25,000円となります。

2年目以降の6年目までは、30万円÷6年でその年度ごと5万円ずつ償却することができるので、償却費の合計は275,000円になります。

7年目にも継続してエアコンを使用する場合、残りの25,000円を償却するには1円を残しておく必要があります。

と言うのも、帳簿上、エアコンを資産として残しておかねばなりません。

つまり、7年目にはそのための残存価額1円を残しておき、25,000-1円の24,999円を減価償却費として計上する必要があります。

これは、経理用語で「備忘価額」と呼び、例のように有形固定資産の償却期間が満了した場合、継続して事業に使用する際には、税務上の未償却残高として1円の残存価額を残すことが一般的です。

マンション経営などの個人事業の場合は、定額法が原則なので覚えておきましょう。

エアコンなどの少額資産に対する特例制度

前項の計算方法でも分かるように、減価償却資産の計上については、法定の耐用年数をもとに分割して償却されることが分かりました。

また、青色申告者に関しては、エアコンなどの少額資産に対して特例制度が設けられています。

では次に、その少額資産に対する特例についてご説明していきましょう。

前述したように、通常、事業用に購入した減価償却資産は、固定資産として計上しますが、30万円未満の資産である場合、一定の条件を満たしていれば、その取得原価を経費として計上することができます。

例えば、年度末に減価償却資産を購入した場合、通常であれば1ヶ月分の減価償却費を計上します。

しかし、この制度を利用することで、年度末に購入した資産の全額を一括して経費処理することができるのです。

この制度を「少額減価償却資産の特例」と言い、この特例を受けるには以下の要件を満たす必要があります。

①減価償却資産の取得原価が10万円以上、30万円未満であること

②青色申告で確定申告をしていること

③年度中に購入した減価償却資産の取得原価合計が300万円以下であること

この特例には2018年3月31日までの期限がありましたが、2018年度税制改正によって2020年3月31日まで延長されました。

この少額減価償却資産の特例は、個人事業者にとっては大きな節税になり得ますので、条件を満たしていれば是非活用してみましょう。

経営の損益を正しく処理するために

減価償却資産には、その資産によって耐用年数が定められており、それをもとに減価償却費を算出することができます。

また、その取得原価によっても計上方法が変わってくるため、それぞれの処理の違いを覚えておく必要があります。

減価償却には複雑なことも多いですが、経営の損益を正しく処理できるように、所定の減価償却方法に則って行いましょう。